要介護5とは?在宅介護はできる?要介護5の給付金、ケアプラン例について

高齢者・介護 2024.12.12更新(2024.11.26公開)
食事を介助する人

要介護5は介護保険制度で定められたもっとも重度の区分です。寝たきりに近い状態で、食事・排せつ・着替えなど、ほぼすべての日常動作に介助が必要となりますが、訪問介護や施設サービスなど、さまざまな介護保険サービスを組み合わせることで介護の負担を軽減できます。本記事では要介護5の特徴や利用できるサービス、具体的な支援制度をわかりやすく解説します。

目次

要介護5とは?

介護保険制度では、要支援者・要介護者が適切なサービスを利用できるよう「要支援/要介護認定」を受ける必要があります。要支援1~2、要介護1~5の7段階があり、要介護5は介護負担がもっとも重い状態です。

要支援/要介護度

厚生労働省では要介護5について「要介護認定等基準時間(1日のうち介護が必要な時間)が110分以上又はこれに相当すると認められる状態」と定義しています。
具体的には次のような状態にあることが多いといえます。

  • 日常生活に必要な動作(入浴、排せつ、食事等)ほとんどに介助が必要
  • 理解力、判断力、記憶力が低下し、意思疎通が困難なことがある
  • 酸素療法、胃ろうなど医療的ケアが必要なことが多い

認知症の進行程度も要介護認定の判断基準になり、寝たきりの状態でなくても認知症の症状が重度の場合は要介護5に認定されます。また、脳卒中が原因で要介護5となる方も多くなっています。
厚生労働省の「令和4年度 介護保険事業状況報告」によると、要介護5の方は全国で約59万人にのぼります。

出典:厚生労働省「要介護認定はどのように行われるか」
厚生労働省「令和4年度 介護保険事業状況報告(年報)」

要介護5と要介護4の違い

要介護4は身体機能の低下に加え、思考力や理解力の低下が見られるものの、介助があれば座ったり、会話ができたりする状態です。
要介護5では身体機能の低下に加え、重度の認知機能の低下が見られます。1日の大半は寝たきりの状態で、意思の疎通も困難であるという点が異なります。

詳細は以下の記事で解説していますので、気になる方はチェックしてみてください。

要介護5の場合に在宅介護はできる?

要介護5の方は寝たきりの状態や意思疎通が困難な場合が多いです。また、昼夜を問わず専門的なケアが必要な場合も多いため、在宅介護は難しくなります。

また、介護者への負担も大きく、要介護者と共倒れになってしまう可能性もあるため、施設入所を検討することをおすすめします。在宅介護を続ける場合はケアマネジャーと相談し、負担が軽減できる介護サービスを利用しましょう。

要介護5で受けられるサービス

自宅で受けられるサービス

要介護5で受けられる介護
サービス
サービス内容
訪問介護 自宅でホームヘルパーから食事・入浴・排せつなどの介護、掃除・洗濯・買い物・調理などの生活支援を受ける
訪問入浴介護 自宅での入浴が困難な方が、看護師・介護職員の持参した専用の浴槽で入浴介護を受ける
訪問看護 自宅で看護師から健康状態の観察や医療ケアなどの看護サービスを受ける
訪問リハビリテーション 自宅で理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの訪問を受け、身体機能の維持・向上に向けたリハビリを行う
夜間対応型訪問介護 夜間帯(18時~8時)にホームヘルパーの自宅訪問を受け介護サービスを受ける
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 定期的な巡回訪問または随時通報により自宅訪問を受け、食事や入浴などの介護、調理・洗濯といった日常生活の家事支援や看護サービスを受ける

在宅介護は介護者にとって大きな負担となるため、訪問サービスを積極的に活用しましょう。夜間対応型訪問介護は、定期巡回に加え急な体調不良や転落などで介助が必要な際に対応を依頼できる「随時対応」があります。
夜間対応の訪問介護や定期巡回・一体型の訪問介護・訪問看護を活用することで介護負担を軽減でき、医療ニーズのある方の夜間対応も可能になります。

日帰りで施設に通うサービス

要介護5で受けられる介護
サービス
サービス内容
通所介護(デイサービス) 利用者が施設に日帰りで通い、健康状態のチェックや食事・入浴・機能訓練、レクリエーションなどの提供を受ける
通所リハビリテーション(デイケア) 利用者が施設や病院に通い、心身機能の維持回復のためのリハビリを受ける
地域密着型通所介護 利用定員19人未満のデイサービス施設にて、日常生活上の支援や、生活機能向上のための機能訓練などを受ける
療養通所介護 疾患を持つ利用者が食事や入浴などの日常生活上の支援や、生活機能向上のための機能訓練を受ける
認知症対応型通所介護 認知症の利用者が通所介護の施設にて、食事などの日常生活上の支援や機能訓練などを受ける

自宅での介護は休む暇がなく、介護者の心身が疲弊しがちです。その際は、日帰りで施設に通う「通所介護(デイサービス)」などを利用することで、介護者の方が休息・リフレッシュできる時間を確保できるでしょう。
また、重度の寝たきりの方は「療養通所介護」で医療的ケアを、認知症の方は「認知症対応型通所介護」で専門的な支援を受けられます。利用者の心身機能維持に加え外部とのコミュニケーションも図れる点が日帰り介護サービスのメリットです。

訪問・通い・宿泊サービス

要介護5で受けられる介護
サービス
サービス内容
小規模多機能型居宅介護 通所を中心に訪問・宿泊を組み合わせて介護や機能訓練を受ける
看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス) 「訪問看護」と「小規模多機能型居宅介護」を組み合わせたサービスを受ける
短期入所生活介護(ショートステイ) 施設へ短期間宿泊をして介護や機能訓練を受ける
短期入所療養介護 医療機関や介護施設等へ短期間宿泊をして身体介護、医療ケア、機能訓練などを受ける

介護者の急な用事や冠婚葬祭などで、自宅での介護が難しくなる場面もあるでしょう。その際は「短期入所生活介護(ショートステイ)」の利用を検討してみてください。24時間態勢のサポートを受けながら宿泊できますし「短期入所療養介護」を利用すれば介護サービスに加えて医療ケアも受けられます。

施設等で生活するサービス

要介護5で受けられる介護
サービス
サービス内容
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) 要介護3以上の高齢者向け施設。入浴や食事などの日常生活の支援、機能訓練、療養上の介護サービスを受ける
介護老人保健施設(老健) 在宅復帰を目指している方のための施設。リハビリや必要な医療、介護などを受ける
特定施設入居者生活介護 指定を受けた有料老人ホーム、軽費老人ホーム等で生活支援や機能訓練を受ける
介護医療院 長期療養が必要な方のための施設。療養上の管理、看護や介護、機能訓練、その他必要な医療と日常生活に必要なサービスを受ける

介護者の方が病気になったなどの理由で自宅介護が困難になった場合は、施設入所を検討してみましょう。

医療ケアが必要な方は「介護医療院」や「老健施設」で、常時介護が必要な方は「特別養護老人ホーム」などを利用すれば、24時間体制の介護サービスを利用できます。ただ、特別養護老人ホームは入所待ちをしている利用者が多い点に注意が必要です。

施設入所を検討する際は、時間がかかることを想定しなるべく早く担当ケアマネジャーに相談しましょう。

参考:特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和4年度)
https://www.mhlw.go.jp/content/12304250/001029178.pdf

地域密着型サービス

要介護5で受けられる介護
サービス
サービス内容
認知症対応型共同生活介護(グループホーム) 認知症の利用者がグループホームに入所し、家庭的な環境のなか、食事や入浴などの日常生活上の支援や機能訓練などを受ける
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 入所定員30人未満の介護老人福祉施設。入浴や食事などの日常生活の支援、機能訓練、療養上の介護サービスを受ける
地域密着型特定施設入居者生活介護 指定を受けた入居定員30人未満の有料老人ホームや軽費老人ホームなどで、食事や入浴などの日常生活上の支援や、機能訓練などを受ける

地域密着型サービスは、要介護度が重度になっても住み慣れた地域で自分らしい生活ができるように、地域に住民票のある方に提供されています。
例えば認知症の方は「認知症対応型共同生活介護(グループホーム)」で顔なじみの職員や少人数の入居者と共に、家庭的な雰囲気の中で地域住民と交流しながら生活することが可能です。実家での生活に近い形での介護を希望される方は、利用を検討してみると良いでしょう。

福祉用具の利用サービス

要介護5で受けられる介護
サービス
サービス内容
福祉用具のレンタル 利用者の状態や希望、生活環境等に合った福祉用具(手すり、スロープなど)を借りられる
特定福祉用具の購入 レンタルになじまない福祉用具(入浴・排せつに使用するものなど)を1割~3割負担で購入できる

介護負担の軽減には福祉用具の活用も効果的です。車いすのほか移動時の転倒防止に手すりやスロープのレンタルも可能で、衛生上の観点から購入しかできない福祉用具も、介護保険を利用すれば購入費用を抑えられます。ケアマネジャーに相談しながら、必要な用具を選んでいきましょう。

各サービスの詳細は次のコラム記事で解説していますのでご参考ください。

要介護5の支給限度額

要介護5の居宅サービスにおける1カ月あたりの支給限度額は「36万2,170円」と定められており、全ての介護認定の中で最高額となっています。サービスを利用する場合、原則として利用者は費用の1割を負担しますが、限度額を超えた分は全額自己負担となるため注意しましょう(一定以上の所得がある場合は2割または3割)。

また、特別養護老人ホームなどにおける施設サービス(施設からの送迎や食費など)は支給限度額の対象外となりますが、利用者負担を軽減する制度も用意されています。詳細は後述していますので、合わせてチェックしてみてください。

要介護5の場合に利用できる給付金制度

要介護5と認定された場合、次の給付金制度を活用することで、介護サービスに関する費用負担を軽減できます。

特定入所者介護サービス費

「特定入所者介護サービス費」は、介護施設に入所する際の食費と居住費の一部を介護保険から給付する制度です。利用者の所得や資産に応じて負担額が決まり、その超過分が給付されます。
給付段階は3段階に分けられ、例えば特別養護老人ホームの従来型個室は、一番負担が少ない第1段階(生活保護受給者で世帯全員が老齢福祉年金受給者)であれば日額380円が限度額です。

「特定入所者介護サービス費」による給付を受けるには、市区町村で「負担限度額認定」を受ける必要があるため、該当する方は早めに申請しましょう。

出典:令和6年6月 介護保険最新情報

高額介護サービス費

「高額介護サービス費」は介護サービス利用における1カ月の自己負担額が所得に応じた上限を超えた場合、超過分が払い戻される制度です。利用するには各自治体への申請が必要です。

出典:厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索 <高額介護サービス費>

高額医療・高額介護合算療養費制度

「高額医療・高額介護合算療養費制度」は、医療保険および介護保険両方の自己負担額の合計金額が、所得区分ごとの限度額を超えた場合に超過分が支給される制度です。

支給を受けるには、加入している医療保険者と介護保険者へ申請後に発行される、自己負担額証明書が必要です。

出典:厚生労働省 高額医療・高額介護合算療養費制度について

医療費控除

要介護5と認定された利用者の医療費や介護保険サービスの自己負担額は、医療費控除の対象となります。所得控除を受ける場合は、忘れず確定申告を行いましょう。

出典:国税庁No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)

障害者控除

市区町村から「障害者控除対象者認定書」を受け取り、確定申告することで、所得税から27万円を控除できます。利用者が寝たきりの状態であれば、重度障害者として40万円の控除が受けられる可能性もあります。

参考:国税庁 No.1160 障害者控除
大田区 要介護認定者等の障害者控除(所得税・住民税)
草加市 要介護認定者(1から5)の人は、確定申告の時に税控除が受けられます

介護手当(家族介護慰労金)

自治体によって金額は異なりますが「介護手当(家族介護慰労金)」を受け取れる場合もあります。利用にあたっては「1年間介護保険のサービスを利用していない」などの条件があります。

参考:世田谷区 家族介護慰労金の支給

福祉用具、住宅改修費用

福祉用具のレンタルや購入、住宅改修の費用も介護保険の給付対象となっています。一部の福祉用具(固定用スロープ、歩行器、杖など)は、令和6年4月からレンタルか購入かを選べるようになったため、従来よりも費用負担を抑えられるようになりました。
住宅改修は手すりの取り付けや段差解消などが対象で、かかった費用の9割(所得に応じて8割、7割)が給付されます。

出典:厚生労働省 介護保険における住宅改修
住宅改修概要資料

おむつ代助成など、自治体独自の給付金制度

各自治体が独自に実施している給付金制度がある場合は、積極的に活用しましょう。一般的におむつ代の助成や、介護用品購入費の補助などがありますが、詳細は自治体により異なるため、市区町村の介護保険窓口で確認をしてみてください。

参考:さいたま市 重度要介護高齢者紙おむつ等支給事業

要介護5の介護保険サービス利用方法とケアプラン例

要介護5のケアプラン例

介護保険サービスを利用するには、次の流れで手続きを進めます。

  • 市区町村窓口での要介護認定を申請する
  • 調査員による訪問調査と主治医意見書を作成してもらう
  • 一次判定(コンピュータ)と二次判定(審査会)
  • 認定結果の通知
  • ケアプランの作成
  • サービス利用開始

また介護度には、認定期限が設定されている点に注意しましょう。

  • 市区町村窓口での要介護認定を申請する
  • 調査員による訪問調査と主治医意見書を作成してもらう
  • 一次判定(コンピュータ)と二次判定(審査会)
  • 認定結果の通知
  • ケアプランの作成
  • サービス利用開始

また介護度には、認定期限が設定されている点に注意しましょう。

介護サービスは認定期限を過ぎると利用できなくなるため、更新の申請は1カ月以上の余裕を見て行うことが大切です。身体の状態に変化が生じたときは、認定期間の途中でも区分の変更申請は行えるため、必要に応じて随時手続きを行いましょう。

参考:サービス利用までの流れ | 介護保険の解説 | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」(厚生労働省)

要介護5の方のケアプラン例

次に、要介護5の方のケアプラン例を見ていきましょう。

【要介護5の判定を受けたAさんのプロフィール】
性別:女性
年齢:85歳
既往症:
・脳梗塞の後遺症により、右片麻痺
・認知症の症状あり
身体状況:
・食事・排せつ・入浴・移動・着替えは全介助
・経管栄養(胃ろう)を使用
・寝たきりのため褥瘡(じょくそう)のリスクあり

在宅介護の場合

在宅介護をしていて、家族が同居している場合のケアプラン例です。

訪問看護 8回 訪問看護ステーションからの支援を想定
1回に付き1時間以上1時間30分未満
9,024円
訪問介護 22回 身体介護:1時間以上1時間30分未満
生活援助:介護者が行うため不要
1万2,474円
訪問入浴 4回 全身入浴 5,064円
通所介護 4回 通常規模の事業所の場合
(7時間以上8時間未満)
4,592円
短期入所生活介護
(ショートステイ)
8日間 併設型・多床室 7,072円
福祉用具貸与 - 介護用ベッド
褥瘡(じょくそう)防止マット
車いすなど
2,428円
自己負担額の合計 4万654円

施設介護の場合

特別養護老人ホームの施設に入居している場合のケアプラン例です。食費や居住費、日常生活費用などは別途負担になります。

介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) 1カ月(30回) 従来型個室または多床室 2万6,130円
自己負担額の合計 2万6,130円

出典:厚生労働省「公表されている介護サービスについて」

要介護5の方が受けられるALSOKの介護サービス

HOME ALSOKみまもりサポート

要介護5の方の在宅介護をしている場合、24時間の介護が必要となります。介護サービスを受けていない時間帯や家族が留守となる時間帯に体調の悪化が心配という方は多いでしょう。そこで、要介護の方の見守りにおすすめなのが「HOME ALSOKみまもりサポート」です。
体調が悪くなったときは緊急ボタンを押すことで、ガードマンがすぐに駆けつけます。ペンダント型緊急ボタンもご用意(オプションサービス)していますので、枕元に置いておき、寝ている時などに体調が悪くなったらその場でボタンを押すことができます。その他にも、火災感知を行うオプションサービスがあり、火災や煙を感知した場合もガードマンが駆けつけます。
熱中症や災害時の危険があるときは音声で警告。また、ヘルスセンターにつながる相談ボタンもあり、看護師資格を持つスタッフに健康や体調に関するお悩みを気軽に相談できるため、要介護の方だけでなく介護者自身も見守ります。

要介護5は、24時間周囲の見守りやサポートを必要とする状態です。専門的なケアが必要になることも多いため、適切に介護保険サービスを利用しましょう。

ALSOKグループでは、利用者の状態に合った各種介護サービスを展開しています。デイサービスや訪問介護に加え、設備の整った有料老人ホームやグループホームのご紹介も可能です。施設の感染対策はもちろん、ALSOKならではの防犯対策や防災訓練にも積極的に取り組んでいるため、安心してご利用いただけます。
介護に関して不安なことやご要望等あれば、お気軽にお問い合わせください。

まとめ

要介護5は24時間の介護が求められる、もっとも介護度の重い状態です。在宅介護の場合は訪問介護や訪問看護などを組み合わせて負担を軽減し、在宅介護の限界を迎える前に施設入所も検討することをおすすめします。

各種給付金制度を活用すれば介護者の負担を軽減し、利用者にとっても最適な介護サービスを選択できます。悩んだり迷ったりした際は、ひとりで抱え込まずに、ケアマネジャーや専用窓口の方に相談するようにしましょう。

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