介護疲れが限界を迎える前に…負担を軽減するためにできること
在宅介護をしている人の中には、「介護に向き合うのが辛い」「終わりの見えない今の状況から逃げたい」と思っている方は少なくありません。昨今、介護者の負担やストレスによる介護疲れが、介護うつや介護放棄につながってしまうケースが問題となっています。介護者が健康な状態を保つためには、介護の負担を軽減することが大切です。
本記事では、介護疲れを感じる要因や、介護の負担を減らすためにできること、介護疲れを軽減するためのポイントについてご紹介します。
目次
多くの人が介護疲れなどの悩みを抱えている
介護が必要な家族のサポートは負担が大きいため、介護疲れに悩んでいる方は少なくありません。
同居の主な介護者の7割が悩みやストレスを抱えている
厚生労働省の「平成28年 国民生活基礎調査」によると、要介護者と同居している主な介護者のうち日常生活で悩みやストレスが「ある」と回答した人の割合は、68.9%という結果でした。全体の7割近くの方がなんらかの悩みやストレスを抱えていることが分かります。
また、「ある」と回答した男性は62.0%、女性は72.4%と、女性の方が高い傾向となっています。
主な介護者の悩みやストレスの原因の割合
上記の調査で「ある」という介護者の悩みやストレスの原因としては、「家族の病気や介護」と回答した方が男性で73.6%、女性で76.8%ともっとも多い結果でした。次いで「自分の病気や介護」と回答した方が男性で33.0%、女性で27.1%となっています。ほかの原因と比較すると、家族の病気や介護による悩みやストレスを抱えている方が圧倒的に多いことが分かります。
介護者の介護時間の構成割合
介護者の介護時間を要介護度別で見ると、要支援1・要支援2・要介護1・要介護2では「必要なときに手をかす程度」という方の割合がもっとも多いようです。一方で、要介護3・要介護4・要介護5では「ほとんど終日」と回答している方が多くなっており、もっとも介護度の高い要介護5では54.6%と高い割合になっています。要介護度が高くなるにつれて、同居の主な介護者による介護に要する時間が長くなっていくことが分かります。
介護の疲れを感じてしまう要因
介護疲れを軽減・防止するためには、介護の疲れを感じる具体的な要因をまずは理解しましょう。
介護疲れとは?
介護疲れとは、「介護による疲れやストレスで介護者の心身に不調をきたしている状態」のことをいいます。在宅介護は長期間にわたるケースが多く、休む暇もなく介護が必要になるため、睡眠不足になったり体調を崩したりしやすいものです。日々の介護や生活に追われていると、介護者自身も気付かないうちに介護疲れの状態が続いてしまい、介護うつや介護放棄につながるおそれがあります。そのため、介護疲れにならないよう未然に防止することが大切です。
介護疲れの要因には、「身体的な負担」・「精神的な負担」・「経済的な負担」の3つが挙げられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
身体的な負担
介護では、日常的な動作の中で体力や労力を必要とされる場面が多くあります。例えば、着替えの介助、移動の介助、ベッド・車椅子への移乗補助、入浴の介助、食事の介助などが挙げられます。特に被介護者の介護度が高い場合や体重が重い場合は、介護者の身体的な負担が大きくなり、慢性的な肩凝りや腰痛を引き起こすこともあるでしょう。
また、夜間の排せつ介助や体位変換などによる睡眠不足が続いてしまうことも、身体的な負担となる原因になります。
精神的な負担
介護中は自分の時間や外出する機会が減ってしまい、被介護者への気配りや緊張感が負担となることがあります。また、介護の悩みや苦労は周囲に共感してもらいにくく、一人で抱え込んでしまう方は少なくありません。仕事と介護の両立に悩み、精神的負担につながるケースもあるでしょう。
さらに、認知症の方の介護においては、被介護者とのコミュニケーションが困難となったり、徘徊や罵声といった認知症特有の症状に悩まされたりと、介護者への精神的ストレスが大きくなりやすいです。
このような精神的な負担が蓄積されると、介護うつへ発展してしまうおそれがあります。
経済的な負担
介護には、医療費や介護用品などさまざまな費用が必要となります。介護保険制度による介護サービスを利用する場合は一部給付を受けられますが、自己負担額がゼロというわけではありません。介護の時間を確保するために離職や時短勤務となれば収入が減少するため、経済的な負担が大きくなってしまうでしょう。
介護の負担を減らすためにできること
介護を行ううえで、介護疲れが続いていることは重大な問題です。介護者・被介護者がともに健康でいるためには、介護の負担となる要素を取り除かなければなりません。介護の負担を減らすためには、以下の公的支援やサービスの活用が有効です。
地域包括支援センターの利用
地域包括支援センターでは、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員等の専門職のチームアプローチにより地域住民の生活を包括的に支援しています。介護に関する相談のほか、介護予防におけるケアプランの作成や適切な支援サービスへの展開などさまざまなサポートを受けることができます。
介護サービスの活用
介護サービスは、「介護保険サービス」と「介護保険適用外サービス」があり、どちらも利用することができます。介護保険サービスは介護認定の条件を満たす方を対象とし、費用の1割(一定以上所得者の場合は2割または3割)負担で、自宅での介護やデイサービス、ショートステイ、福祉用具の購入補助や貸し出しなどのサービスを利用できます。
介護保険適用外サービスは、誰でも利用できるサービスです。費用は全額負担となりますが、家事代行や外出支援、配食サービス、見守りサービスなど介護保険の適用内にはないサービスを受けることが可能です。例えば、食事調理、洗濯、掃除といった家事代行は、介護保険サービスの場合は要介護者本人にのみ提供されますが、保険適用外サービスであれば同居家族の分までサポートされます。
これらの介護サービスを組み合わせることで、介護者の負担を大幅に軽減することが可能です。
老人ホームなどの利用
老人ホームとは、プロの介護士による介護サービスを受けられる高齢者向けの入居施設です。入居後は施設が生活の拠点となるため、介護者の負担が大幅に軽減されます。有料老人ホームや特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院などさまざまな種類があり、施設によって特徴や費用等が異なるため、事前にしっかりと調べて老人ホームへの入居を決めると良いでしょう。
給付金制度の活用
介護の経済的な負担を軽減するには、公的機関による給付金・助成金制度の活用が役立ちます。要介護者とその家族が活用できる給付金制度は以下があります。
特定入所者介護サービス費 | 低所得者が介護施設を利用する際、自己負担の上限額を超えた居住費・食費分が助成される |
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高額介護サービス費 | 1カ月間の介護サービス利用料が自己負担の上限額を超えた場合、超えた分の払い戻しができる |
高額医療・高額介護合算療養費制度 | 医療保険と介護保険の自己負担額を合算し、年間の上限額を超えた分の払い戻しができる |
医療費控除 | 介護医療費が一定額を超えた場合に控除できる |
障害者控除 | 要介護認定を受けている65歳以上で基準を満たしていれば障害者控除を受けられる |
介護手当(家族介護慰労金) | 要介護4・5の高齢者を在宅で介護しており介護保険サービスを過去1年間利用していない場合に手当を受けられる |
介護休業給付金 | 雇用保険の加入者が介護休業を取得した場合に、給与の一部が保証される |
福祉用具、住宅改修費用給付 | 福祉用具のレンタル・購入、住宅改修費用の一部が給付される |
その他自治体独自の給付金制度 | おむつ代助成、タクシー券配布など |
給付金・助成金の具体的な金額は制度の内容や個々の上限額、お住まいの自治体などによって異なるため、自治体の窓口やケアマネジャーに相談しましょう。
介護疲れを軽減するために意識したいこと
日々の介護疲れを軽減するためには、以下のポイントを意識することが大切です。
無理をしない
介護疲れを軽減するために大切なのは、無理をしないことです。介護疲れが続くと介護者の気持ちの余裕がなくなり、被介護者に優しく接することができなくなります。介護においては一人で頑張るのではなく、身近に協力者を作ることがポイントです。家族など身近な人に助けを求めて役割を分担する、積極的に介護サービスを利用するなど、無理せず続けられる環境を整えましょう。介護疲れを軽減することで、介護者・被介護者の良好な関係構築にもつながります。
専門家に相談する
介護中はさまざまな悩みが尽きず、誰しも辛いと感じる瞬間があるものです。介護における悩みや不安がある場合は、一人で抱え込まず、第三者に話すことで気持ちが楽になったりストレスを軽減させたりできます。また、人と会話をする機会を設けると、介護で発生しやすい孤立感の解消にもつながります。しかし、「友人には介護の悩みを相談しにくい」「近くに相談できる人がいない」という方もいるでしょう。
介護に関して相談したいときは、地域包括支援センターや自治体の相談窓口、居宅介護支援事業所のケアマネジャーに相談する方法がおすすめです。介護の悩みや不安を聞いてもらえるだけでなく、専門家によるアドバイスを受けることができます。
リフレッシュの時間を設ける
在宅介護をしている方の中には、被介護者に付きっきりの状態で自分の時間がないという方が多いです。長時間の介護で休む暇もないと、疲労やストレスが溜まって介護を続けられなくなるケースもあります。
日々の介護の疲れを軽減するためには、適度に介護から離れる時間も必要です。ショッピングをする、美容院へ行く、おいしいご飯を食べに行く、趣味の時間を確保するなど、介護者自身の心身のケアやリフレッシュできる時間を確保しましょう。ご家族に協力してもらったり介護サービスなどを活用したりしながら、自分の時間を作ることが大切なポイントです。
介護が必要なご家族をサポートするALSOKのサービス
ALSOKでは、介護をしているご家族をサポートするサービスをご提供しています。
在宅介護をしている場合、家族が留守となる間に突然の体調の悪化や怪我が心配というケースは多いのではないでしょうか。そこでおすすめなのが、もしものときの駆けつけが可能な「HOME ALSOKみまもりサポート」です。
異常が発生したときは緊急ボタンを押すことで、ALSOKがすぐに駆けつけます。ヘルスセンターへつながる相談ボタンもあり、看護師資格を持つスタッフに健康や体調に関するお悩みを気軽に相談できるので、介護者にとっても安心なサービスです。
さらに火災感知を行うオプションサービスがあり、火災や煙を感知した場合もALSOKが駆けつけます。
在宅介護は、被介護者の状態に合わせて見守りやサポートが必要となります。専門的な知識・ケアを求められることもあるため、積極的な介護サービスの利用をおすすめします。
ALSOKグループでは、利用者の状態に合った介護サービスを展開しています。デイサービスや訪問介護に加え、設備の整った有料老人ホームやグループホームのご紹介も可能です。施設の感染対策はもちろん、ALSOKならではの防犯対策や防災訓練にも積極的に取り組んでいるため、安心してご利用いただけます。
介護に関して不安なことやご要望等あれば、お気軽にお問い合わせください。
まとめ
介護疲れが限界を迎えると、介護者・被介護者の双方にさまざまな悪影響を与えてしまう可能性があります。介護疲れを溜めないためにも、公的支援や介護サービスなどを活用して介護者自身も心身の健康を維持しましょう。