子どもがいない夫婦の相続と終活準備|安心できる老後のために必要なこと
少子化の進む昨今では、子どもがいない夫婦も多くいます。しかし、老後の介護や葬儀、相続などにおいては、子どもがいない夫婦ならではの問題も生じます。年を重ねてからトラブルに見舞われることのないよう、事前に終活準備を行い、対策を取っておく必要があります。
本記事では、子どもがいない夫婦が安心して老後を過ごすための、介護や葬式・お墓、相続に関する終活について詳しく解説します。
目次
子どもがいない夫婦が終活をしない場合に起き得るトラブル
終活とは、人生の終わりに備えた準備や活動のことです。子どもがいない場合には特に終活をする必要はないと考えるかもしれませんが、自分や配偶者の介護や葬儀、相続の場面を迎えた際、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。
介護
子どもがいない夫婦は、介護が必要になった場合に備えておかないと、高齢者が高齢者を介護する「老老介護」や、認知症の人が認知症の人を介護する「認認介護」の状態になる可能性があります。夫婦のどちらかが要介護となった場合、子どもがいる夫婦であれば子どもと相談しつつ、介護サービスの利用などを検討できるでしょう。しかし、子どもがいない場合は、自身も高齢で体力も衰えているなか、配偶者の介護と並行して介護サービスの検討などを行うこととなり、十分なケアができないおそれがあります。
また、長年介護が続くと、介護をする側が体調を崩し、心理的にも大きな負担になるといったケースも少なくありません。子どもがいない場合は頼れる人が身近にいないケースもあり、ひとりで介護を抱え込むことになりかねないからです。その結果、社会的にも孤立してしまい、夫婦の生活自体が立ち行かなくなる危険性があります。
葬式・お墓
子どもがおらず、配偶者も亡くなっていて身寄りのない方が亡くなった場合、自分が望むお葬式や埋葬方法を行ってくれる人がいない可能性があります。終活で意思を明示していないと、望まない形で埋葬されてしまうかもしれません。
また、先祖代々のお墓が管理されず無縁仏になってしまうことも考えられます。大切な遺品や思い出の品も適切に引き継がれることなく、廃棄されたりする可能性が高くなります。
相続
子どもがいない場合でも、夫婦の一方が亡くなった場合に配偶者がすべての財産を相続できるとは限りません。
亡くなった人の親族が健在であれば、配偶者以外にも相続権が発生します。順位は、死亡した人の両親が1位、2位が兄弟姉妹です。
また、法律で定められている相続財産の割合は、以下の通りです。
亡くなった人の両親が健在の場合:配偶者2/3、両親1/3
亡くなった人の両親が亡くなっており、兄弟姉妹が健在の場合:配偶者3/4、兄弟姉妹1/4
亡くなった人の両親・兄弟姉妹が亡くなっており、甥や姪が健在の場合:配偶者3/4、甥や姪1/4
亡くなった人の両親や兄弟姉妹、甥や姪もいない場合:配偶者が全額
たとえ長年疎遠だったとしても、法律上はこのように相続権があるため、突然知らない親族が現れて相続権を主張する可能性もあります。何も対策をしていないと大きなトラブルになりかねず、注意が必要です。
子どもがいない夫婦の終活【介護】
子どもがおらず、身近に頼れる親族もいない場合、介護が必要になったときは配偶者の負担が大きくなってしまいます。すでに配偶者が亡くなっている場合は、自分一人では情報収集や手続きが難しいこともあるでしょう。自分や配偶者に介護が必要になったときに備え、終活でやっておくべきことを確認しておきましょう。
任意後見制度の利用を検討する
「任意後見制度」とは、将来自分の判断能力が不十分となったときに備えて、事前に任意後見人を指名し、特定の事務を行ってもらうように依頼する制度です。
任意後見人を定めておくことで、認知症などになり判断能力がなくなった場合でも、速やかに介護サービスの契約や施設への入所、財産の管理などを行ってもらえます。
任意後見契約は、契約後すぐに効力が生じるわけではなく、本人が認知症などになった場合、家庭裁判所によって任意後見監督人が選任された時点から効力が発生します。
介護サービスの情報を集める
介護が必要になった場合に備えて、事前に介護サービスや介護施設の情報を集めておくと良いでしょう。
介護サービスには、「介護保険サービス」と「介護保険適用外サービス」があり、自宅で受けられるサービスや施設に通うデイサービス、ショートステイ、施設で生活するサービスなど多くの種類があります。自宅からの距離やサービス内容、必要な費用などを日頃から確認しておくと、いざというときに役立つでしょう。
また、入居型のサービスなどでは保証人が必要となるケースも多く、施設によっては高齢の配偶者を保証人として受け付けないこともあります。不安がある場合は介護サービスと合わせて身元保証サービスについても調べておきましょう。
子どもがいない夫婦の終活【葬式・お墓】
子どもがいない夫婦の一方が先に亡くなった場合、葬式やお墓選びで残された側がどうすれば良いのか困ってしまったり、トラブルになってしまったりするおそれがあります。そのような事態を避けるために、元気なうちに終活でやっておくべきことを解説します。
信頼できる人と死後事務委任契約を結ぶ
死後事務委任契約とは、自分が亡くなった後の事務作業(葬儀や納骨、各種手続き等)を任せる契約です。子どもがいる夫婦は子どもに任せられるケースが多いかもしれませんが、子どもがいない場合、残された周りの人たちは誰がやるべきなのか困惑してしまい、手続きが滞りかねません。
そうならないために、死後事務委任契約を信頼できる人と結んでおくことで、突然亡くなった場合でも必要な手続きを一括して任せることができます。この契約では、葬儀、埋葬、公共サービスの解約などのほか、親族や友人への訃報連絡、遺品整理なども依頼できます。
死後委任契約は、親族だけなく、知人や同僚などの身近な人物と結ぶこともできますし、弁護士や専門のサービス会社に頼むこともできます。夫婦と継続的に関係性のある、信頼できる身近な人に頼むことができれば一番ですが、それが難しい場合は弁護士などへの依頼も視野に入れておきましょう。
墓じまいを検討する
子どものいない夫婦が、先祖代々のお墓を管理している場合もあるでしょう。お墓を任せられる親族がいない場合に検討したいのが、墓じまいです。
墓じまいとは、現在のお墓を撤去し更地にすることです。一般的に数十万円の費用がかかるため、夫婦でよく話し合い検討することをおすすめします。トラブルに発展しないよう、親戚やお墓のあるお寺にも事前に相談しておきましょう。
自分たちが入るお墓を探す
また、自分たちが入るお墓についても考えておきましょう。子どもがおらず、親族に管理してもらうことが難しい場合は、永代供養付きのお墓も選択肢のひとつです。永代供養付きのお墓は、お寺や霊園が遺骨の管理や供養を行ってくれます。
親族や知人がお墓の管理をする必要がないので、残された人への負担もなく安心です。永代供養の種類は、故人や家族だけで納骨できる個別墓のほか、合祀墓や集合墓、納骨堂などがあります。
子どもがいない夫婦の終活【相続】
子どもがいない場合は、相続の場面でトラブルにならないよう、準備や確認を進めておくことをおすすめします。
法定相続人の範囲を確認する
遺言書などを作成する際は、必ず相続人の範囲を把握したうえで進めましょう。確認を怠ると、後から相続人が現れてトラブルに発展する可能性があります。
相続人は、顔見知りの親戚だけとは限りません。把握できていない場合は、以下の方法で調査しておくと良いでしょう。
- 夫婦それぞれの戸籍謄本を、本籍地の市町村役場で取得します。本籍地が変わっている場合は、以前の本籍地の戸籍謄本も取り寄せ、出生から現在までのものを揃えて確認する必要があります。
- 取得した戸籍の情報から、戸籍に記載されている人の戸籍等を取得し、相続人を探します。
- 相続人が全員わかったら、その情報を元に相続人の相関図を作成します。相続人が死亡している場合、その事実を確認できる戸籍謄本も必要です。
必ず遺言書を作成する
遺言書とは、自分の財産を死後にどう分けるのかについて意思表示した書面のことです。子どもがいない夫婦にとって、自分の財産をどうするかを伝える手段として、遺言書は欠かせないものとなります。生前整理の一種として、必ず遺言書を作成しましょう。
子どもがいない夫婦の遺言書でよくみられるのが、財産をすべて配偶者に相続させようとするケースです。特定の親族にほとんどの財産を相続させるという遺言書は、遺留分(一定の相続人に保障されている最低限の遺産割合)という法的な権利を侵害し、大きなトラブルの元になってしまいます。
これを避けるためには、法定相続人全員について少なくとも遺留分以上の相続を約束する内容の遺言書を作成することが重要です。子どもがいない場合、遺留分の請求権利が認められているのは両親・祖父母のみとなります。
また、自筆ではなく公正証書の形式を用いる、夫婦それぞれ遺言書を作成するという点も重要になります。
子どもがいない夫婦の老後を支えるALSOKのサービス
ALSOKグループでは、利用者の状況にあった介護サービスを展開しています。
デイサービスや訪問介護に加え、設備の整った有料老人ホームやグループホームのご紹介も可能です。ALSOKの有料老人ホームはすべての施設にセキュリティシステムを導入しており、緊急時にはALSOKが駆けつけます。施設の感染対策に加え、ALSOKならではの防犯対策や防災訓練にも積極的に取り組んでいるため、安心してご利用いただけます。
子どもがいない夫婦の場合、万が一のときには配偶者が対応する必要があります。配偶者が留守の間の体調不良や発作が心配というケースも多いでしょう。ALSOKの見守りサービス「HOMEALSOKみまもりサポート」は、体調が悪くなったときは緊急ボタンを押すことで、ALSOKがすぐに駆けつけます。熱中症や災害時の危険があるときは、音声で警告。火災感知を行うオプションサービスがあり、火災や煙を感知した場合にも現地に駆けつけ対応します。
また、健康について気になることがあれば、相談ボタンを押すだけで看護資格を持つスタッフに24時間健康相談が可能です。
まとめ
子どもがいない夫婦は、介護や葬儀、相続などにおいて、子どもがいる夫婦とはまた別の問題が発生する可能性があります。トラブルにならないよう、早めに終活に取り組みましょう。墓じまいの検討や相続範囲の確認など、時間や手間がかかることも多いため、夫婦の希望をお互い確認し合いながら、計画的に進めることが大切です。