空き家になった実家を貸すにはどうすれば良い?空き家を賃貸に出すメリット・デメリット
空き家になった実家を相続した際、売却せず人に貸す方法もあります。「思い入れがあるため売却はしたくない」「将来的に家族が住むまでの期間だけ貸し出したい」といった方も多いのではないでしょうか。
本記事では、空き家になった実家を貸すメリット・メリットや個人で貸す方法などを解説します。実家を空き家のまま放置している方や、再活用できないかと迷っている方は参考にしてください。
目次
空き家になった実家を貸すメリット
最初に空き家になった実家を賃貸するメリットについて解説します。
思い入れのある実家を手放さずに済む
空き家になった実家の処理は大きく「売却」か「活用」の2つに分かれますが、家族が反対する可能性もあり、実家の処分に踏み切れない方もいるでしょう。しかし、賃貸として活用すれば思い出の詰まった実家を残せますし、将来自分や家族が転居することも可能です。
老朽化の進行を止められる
空き家は人が住まなくなると、カビや雨漏り、害虫・害獣被害などによって老朽化していきます。賃貸物件として人が暮らす環境を維持できれば、日常的にメンテナンスされ、その分老朽化の進行も抑えられるのです。
空き家を放置したままにしていると、倒壊などのおそれがある「特定空き家」に認定され、自治体から管理の勧告や命令を受ける可能性があります。また、「特定空き家」になるおそれのある空き家として、「管理不全空き家」に該当するケースもあります。
「特定空き家」「管理不全空き家」に認定された場合、減税措置が受けられず固定資産税が上がってしまいます。
家賃収入が見込める
空き家は所持しているだけで固定資産税などの維持管理費が発生しますが、賃貸による家賃収入が得られれば維持管理費の相殺、もしくは収益が見込めます。
他の土地活用(アパート経営など)と比較すると収益性は落ちるものの、低コストで実家を維持する手段としては効果的といえるでしょう。
相続税対策になる
空き家を賃貸として相続した場合「小規模宅地等の特例」により、相続税を抑えられる可能性があります。特例による、評価額の軽減率と適用される宅地の限度面積は下記の通りです。
- 評価額の軽減率:50%
- 特例が適用される限度面積:200m²(限度面積を超えた分は対象外)
(例)
土地の評価額:5,000万円
建物の評価額:1,000万円
土地面積:200m²
● 空き家として相続した場合
- 特例は適用されない
- 5,000万円 + 1,000万円 = 6,000万円を基準に相続税が計算される
● 賃貸(貸付事業用宅地等)として相続した場合
- 特例が適用されるため土地の評価額は5,000万円の50% = 2,500万円
- 2,500万円 + 1,000万円 = 3,500万円が基準額となる
上記のように「小規模宅地等の特例」の適用によって相続税を大きく抑えられますが、下記条件に当てはまる場合は特例を利用できないため注意が必要です。
- 相続開始前3年以内に、新しく貸付を始めた場合
- 親族などに相場より安い賃料で物件を貸していた場合
- 物件が長期間空室だった場合(一時的な空室であれば可)
今後、実家を相続する予定がある方は、賃貸住宅として相続できないか事前に確認しておきましょう。
参考:国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
空き家になった実家を貸すデメリット
空き家を貸すことにはデメリットも生じます。賃貸活用を決める前にデメリットを把握し検討すべき点を確認しておきましょう。
リノベーションやリフォームの費用がかさむ可能性がある
空き家を賃貸住宅として貸し出す場合、余程状態が良くない限りはリノベーションやリフォーム費用が必要です。リフォームは新築の状態に回復させるための補修・修繕工事で、外壁の塗装やユニットバスの交換などが該当します。リノベーションは新しい付加価値を加えるための改修で、間取りやデザインの全面変更などです。
特に築年数が古い住宅では、入居者を見つけるために大規模な改修が必要になり費用がかさむ可能性があります。
借主が見つからない可能性がある
空き家の立地や状態によっては、借主が見つからず、維持管理費だけを払い続ける可能性も出てきます。そのため、空き家に賃貸住宅としての価値があるかを事前に確認しておきましょう。
空き家の価値を調べるには、次の方法がおすすめです。
- 不動産会社に査定を依頼する
- 自分で相場を調べる
- 自治体の空き家相談窓口に相談する
事前確認を行うことで借主が見つからない可能性を検討できるため、必ず実施しましょう。
管理・修繕の対応が必要になる
賃貸住宅の管理を管理会社に依頼する場合は、管理手数料が発生します。また、入居者の入退去前後に発生する修繕の対応も貸主負担となります。その他、設備故障時の修理費なども発生するリスクがあることを覚えておきましょう。
固定資産税などの支払い義務がある
賃貸物件として他人に空き家を貸し出ししていても、土地の所有者には「固定資産税」と「都市計画税」の支払い義務が発生します。
住宅用地には最大1/6まで減税される特例措置が設けられており、賃貸住宅にも適用されます。
※200m²以下の小規模宅地の場合
- 固定資産税の計算方法:課税標準額(固定資産税評価額 )×1/6×1.4%(固定資産税の標準税率)
- 都市計画税の計算方法:課税標準額(固定資産税評価額 )×1/3×0.3%(都市計画税の標準税率)
下記のような物件の場合、それぞれの金額を計算してみましょう。
(例)
土地の固定資産税評価額:5,000万円
建物の固定資産税評価額:1,000万円
土地面積:200m²
【固定資産税】
土地: 5,000万円 ×1/6×1.4% =11万6,000円
建物:1000万円×1.4%=14万円
【都市計画税】
土地:5,000万円×1/3×0.3% =5万円
建物:1000万円×0.3% =3万円
特例措置を適用した場合、支払額は固定資産税が25万6,000円、都市計画税が8万円で合計33万6,000円となります。
※この他調整率などが適用されるため、上記金額はあくまで目安となります。
参考:国土交通省 - 固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置
空き家を個人で貸すにはどうすれば良い?
空き家を個人で貸す場合は、不動産会社への依頼が一般的です。具体的な方法と手順を確認していきましょう。
空き家の賃料査定を依頼する
「賃料査定」とは空き家を賃貸物件として貸し出した際、どれぐらいの家賃を設定できるかを算出する作業です。条件に見合う適正な賃料を設定しなければ、入居希望者が現れない場合があります。
査定額は不動産会社の評価基準によって異なる場合があるため、相見積もりを依頼しておくと、より正確な市場価値を把握できます。
不動産管理会社を決める
賃料査定と合わせて、賃貸開始後の管理を担当する不動産管理会社を探しましょう。どの不動産管理会社に依頼すれば良いか迷った際は、次のポイントに注目して探すと良いでしょう。
- 賃貸住宅に関する実績やノウハウが豊富
- 空き家がある地域の事情に詳しい
不動産管理会社は、長期間付き合うことになる会社です。管理費用やサービス内容だけでなく、相談時の対応などを見て総合的に判断しましょう。
賃料や入居条件を決める
不動産管理会社が決まったら、空き家の賃料や入居条件を設定しましょう。賃料は立地や築年数、建物の構造などさまざまな要素を総合的に判断した上で決定します。相場より高い家賃も設定できますが、借り手が付かなくなるリスクがあります。
また「ペット入居可」や「楽器の使用可」といった特定ニーズへ対応することで、入居率を高められる可能性もあります。しかし、騒音など近隣トラブルの原因を生む可能性があるため、管理会社と擦り合わせしながら条件を決めると良いでしょう。
契約形態を決める
賃貸の契約形態には次の3種類があります。
- 普通借家契約:契約期間が1年以上の際に使用。もっとも一般的な契約形態
- 定期借家契約:あらかじめ契約期間を決めて貸し出す際に使用
- 一時使用賃貸借契約:持ち主不在の期間だけ貸し出す際に使用
「普通借家契約」は賃貸契約で広く採用されている契約形態です。空き家を継続的に賃貸物件として利用する場合に最適な契約方法となります。
「定期借家契約」は入居期間を定めて賃貸する契約形態であり、将来的に空き家への転居や売却を検討している方におすすめの方法です。
「一時使用賃貸借契約」は転勤などで一時的に空き家を賃貸する方法です。貸主の都合で入居者への退去を依頼できる一方、入居者への負担が大きいため借り手を見つけるのが難しいというデメリットがあります。
契約形態は、空き家の利用プランに合わせて選びましょう。
物件の入居者を募集する
賃料や契約形態などの条件が決まったら、入居者の募集を始めます。個人での募集も可能ですが、営業力や拡散力のある不動産会社に委託するのが一般的です。
大手の不動産ポータルサイトに物件情報を掲載している管理会社に委託すれば、多くの方に空き家の情報を届けられるでしょう。
賃貸借契約を結ぶ
内見などを経て入居申し込みがあれば、入居者審査を行います。もしも内見や契約時の説明を管理会社に委託していた場合は、入居希望者の情報(支払い能力・保証人・保証機関の可否・人柄)が貸主に提供されるため、問題がないかをチェックしましょう。
情報に問題がなく、双方の合意が得られれば賃貸借契約を結びます。
空き家を知り合いに貸し出す場合は?
空き家を知り合いに貸す場合も、必ず賃貸借契約書は作成しておきましょう。その際は、以下の項目を含めた契約書の作成がおすすめです。
- 契約期間
- 賃料・共益費
- 賃料・共益費の支払い方法や支払い期限
- 敷金の有無と金額
- 禁止または制限される行為・注意事項
- 契約の解除条件とその内容
- 退去時の原状回復に関する条件
- 家賃債務保証業者の情報、または連帯保証人の情報と極度額(保証人が代わりに支払う金額の上限)
知り合いだからと口頭でのやり取りで貸し出した場合、家賃の未払いや物件・設備の破損といったお金のトラブルが起こる可能性もあります。賃貸借契約書は必ず作成しておきましょう。
空き家を無料で貸し出すには
親戚や友人に無料で空き家を貸す場合は、「使用貸借契約」を結ぶことがおすすめです。「使用貸借契約」は家賃を無料にする代わりに、破損などによる物件の修繕費用を借主負担にできる契約形態となっています。
「使用貸借契約」は契約書なしでも契約が成立します。しかし、口約束で終わらせるとトラブルが発生した場合の責任が正しく判断できない可能性があります。無料で貸し出す場合でも、借主と相談した上で契約書を作成しておきましょう。
空き家バンクを活用する
空き家の借主を見つけるためには不動産会社だけでなく、「空き家バンク」の利用も検討してみましょう。
「空き家バンク」は自治体が運営する空き家紹介システムで、無料で利用できます。空き家を無料で貸し出す場合だけでなく、売却や有償で貸し出す場合も利用可能です。空き家バンク活用のメリット・デメリットは下記の通りです。
【メリット】
- 仲介手数料が不要(マッチング後に発生する手数料は有料)
- 地域によっては補助金や助成金を利用できる
- 自治体運営のため利用者に安心感を提供できる
【デメリット】
- 積極的な広告や宣伝は行わないため、契約まで時間がかかるおそれがある
- 契約交渉や手続きは自分で行わなければならない
空き家は人が住まなくなると劣化が早くなります。不動産管理会社と空き家バンクの両方を活用すれば、より早く入居者を見つけられるでしょう。
マッチングを待つ間、空き家の防犯や管理が不安な方は、空き家管理サービスを活用すると良いでしょう。
空き家管理には「HOME ALSOKるすたくサービス」がおすすめ
空き家を貸し出す場合、準備期間や入居者が見つかるまでの間は防犯対策や管理の必要があります。空き家になった実家が遠い、管理に割く時間がないなど、空き家の維持・管理を自分でするのは難しいと感じる方もいるでしょう。空き家の防犯・管理を考えている方には、ALSOKの「HOME ALSOKるすたくサービス」がおすすめです。
「HOME ALSOKるすたくサービス」は、お客様に代わって敷地内の気になる箇所の確認や、郵便受けの整頓を行い、犯罪が起こりやすい空き家をしっかり管理します。さらに防犯面を強化したい方は不審者の侵入時にALSOKが駆けつける「るすたくセキュリティ」もご加入いただけます。
また一部離島や山間部を除き、全国にある空き家に対応していますので、実家の空き家管理にお困りの方は、ぜひALSOKにご相談ください。
まとめ
空き家の賃貸利用は家賃収入が得られるほか、思い入れのある実家を手放さずに済むというメリットがあります。しかし、リフォームや適切な家賃設定をしても、すぐに入居希望者が現れるとは限りません。入居者が決まるまでの期間も空き家を放置せず、適切な管理を行うようにしましょう。