実家の空き家を売りたい!空き家を売却する場合の流れ・注意点を解説
近年、過疎化や少子化などの影響により全国的に空き家が増加しています。そこで2023年に空き家法が改正され、所有者の責任がより明確になりました。この改正を受け、「相続したけれど住む予定のない実家をなるべく早く売却したい」と考える方も多いのではないでしょうか。
本記事では、空き家法改正の詳細、空き家を売却する方法や流れ、空き家を売却する際にかかる税金や注意点について詳しく解説します。
目次
空き家法改正とは
2023年12月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が改正されました。背景には、1998年~2018年の20年間で、使用目的のない空き家が約1.9倍に増加したことがあります。少子化により今後も空き家は増える見込みです。
改正により、以前から定められていた「特定空き家」に加え、特定空き家化を未然に防止する管理策として「管理不全空き家」が追加されました。
特定空き家・・・倒壊のおそれがあるなど、周囲に悪影響を及ぼすと判断された空き家
管理不全空き家・・放置すると「特定空き家」になるおそれのある空き家
特定空き家、管理不全空き家の「勧告」を受けると、固定資産税が最大6倍になってしまいます。また、人が住んでいない家は老朽化が進むため、将来的に活用するとしても修繕費がかさんでしまう問題もあります。
対策としては、別荘として活用する・民泊にする・人に貸すといった方法もありますが、管理や活用が難しいのであれば、売却する選択も考えましょう。早めに売却を進められれば、固定資産税や修繕費用の心配をなくすことができます。
参考:国土交通省 空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)について
実家の空き家を売るには
空き家を売るには、4通りの方法があります。売却を決めたら、どのように売却するのが最善かを検討しましょう。
売却方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
そのままの状態で空き家を売却する | ・手間がかからない | ・売値が安い ・状態によっては買い手が見つかりにくい |
リフォームして空き家を売却する | ・印象が良い ・売却が早めに決まりやすい |
・リフォーム費用がかかる |
空き家を解体して更地として売却する | ・「古家付き土地」より高く売却できる | ・解体費用がかかる ・土地に対する固定資産税が減免されない |
不動産会社に買い取りを依頼する | ・決済までが早い | ・売値が相場よりも安い |
そのままの状態で空き家を売却する
空き家を解体せず、そのままの状態で売るのが一番基本的な方法です。売値は他の売却方法と比べて安くなりますが、その分手間もかかりません。中古住宅は新築住宅より価格が安いため、特に都心などの都市部で人気があります。
ただし木造住宅の場合、築20年以内は「中古住宅」として販売できますが、築20年以上は建物の価値がほとんどなくなってしまうため、「古家付き土地」として売却されます。
また、状態によってはなかなか買い手が付きにくく売却に時間を要するかもしれません。そのままの状態で売るにしても、他の方法を検討したうえで決めた方が良いでしょう。
リフォームして空き家を売却する
空き家をリフォームしてから売却すると、内見の印象が良くなるため、売却も早めに決まりやすくなります。また、買主がリフォーム費用や手間を省けるため、購入されやすくなります。ただし、リフォーム費用がかさむと利益減になるため、最低限のリフォームにとどめた方が良いでしょう。
空き家を解体して更地として売却する
空き家を解体してから売却すれば、買主にとっては解体の手間をかけず土地活用に移れるため、売却が決まりやすくなります。空き家の老朽化が進んでいて倒壊する可能性があるなど、何かしらの事情でリフォームが難しい場合におすすめです。
売主にとっても「古家付き土地」より高く売却できるメリットがありますが、空き家の解体費用、期間がかかります。
また空き家がある場合、固定資産税・都市計画税特例措置の対象になりますが、解体後は土地の固定資産税・都市計画税に特例が適用されなくなるので注意が必要です。
不動産会社に買い取りを依頼する
空き家をなるべく早く売りたいのであれば、不動産会社に買い取ってもらう方法がおすすめです。最短1週間で売買契約ができ、残代金の決済も1カ月ほどで完了できます。しかし売却価格は相場より安くなり、市場の6~8割程度になる可能性があります。
空き家を売る場合の流れ
ここでは、実際に空き家を売却する際の流れを解説します。
相続登記をする
まずは、空き家の名義を被相続人から相続人へ変更する「相続登記」を行います。これまで相続登記は任意でしたが、法改正が行われ2024年4月から相続登記が義務化されています。すぐに空き家を売却する場合でも必ず行いましょう。自分で行うことも可能ですが、司法書士へ依頼する方が安心でき、スムーズに進めることができます。
参考: 東京法務局 相続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始)
~なくそう 所有者不明土地 !~
価格査定を依頼する
相場を確認するために、いくつかの不動産会社に相見積もりを依頼しましょう。最初からひとつの不動産会社だけに依頼すると、査定額が相場より低い価格で売却してしまうおそれがあります。
依頼する不動産会社を決め媒介契約を結ぶ
依頼する不動産会社を決定し、媒介契約を結びます。媒介契約とは、不動産会社に売却の仲介を依頼する契約のことです。
不動産会社は、大手だから良い、査定額が高いから良いというわけではありません。物件がある場所の特性、地域の特徴などによって、物件ごとに合う不動産会社は変わってきます。安易に決めず、納得のいく不動産会社を探しましょう。
売却活動を行う
不動産会社を通して売却活動を行います。インターネットやチラシなどで物件情報を掲載し、購入希望者を探します。物件に興味を持つ方から連絡が入ると、実際に現地を案内します。売買契約が成立するまでの期間は、売りに出されてから3カ月ほどが多いですが、場所や条件によってはさらに長い期間が必要になることもあります。
売買契約を結び、決済する
無事に買主が決まったら、不動産売買契約を結び、決済します。通常の契約では、売主と買主が契約書に署名捺印をして、買主が売主に手付金を払います。
空き家の解体や土地の測量など、売買契約で定めた事項がある場合、決済・引き渡しまでに完了しなければなりません。売買契約時、不動産会社に仲介手数料の半額を払うことが多いため、確認も必要です。
物件を引き渡す
売買契約書で定めた期日に、決済と物件の引き渡しが行われます。期日当日は、司法書士による本人確認、登記手続きに必要な書類の確認を行い、その後に残りの代金を買主が支払います。鍵の引き渡しと、法務局で所有権移転登記の手続きが行われれば、売買手続きは完了です。
空き家を売却する際にかかる税金
空き家を売却し、利益がでた場合には、以下の税金がかかります。
・譲渡所得税…土地などの資産を譲渡することによって生じる所得にかかる税
・住民税…地域の行政サービスに必要な財源を確保するための税
・復興特別所得税…東日本大震災からの復興のために必要な財源の確保のための税
譲渡所得税の税率は、売却した不動産の保有期間が5年を超えていた場合は15%、5年未満だと30%です。住民税は保有期間が5年超の場合5%、5年未満は9%になります。復興特別所得税は所得税額の2.1%です。
不動産の保有期間は、親が実家を所有していた期間も含まれます。
空き家の3,000万円特別控除の特例
厚生労働省は、空き家の発生を抑制するための特例措置として、特別控除を定めています。
空き家の相続人が、相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡(耐震性がない家屋は耐震工事が済んでいる場合のみ)、または空き家を取り壊した後に土地を譲渡した場合、最高3,000万円までの譲渡所得が非課税となります。
また2024年1月1日以降の譲渡については、譲渡後、譲渡した日が属する年の翌年2月15日までに耐震工事、または取り壊しを行った場合も対象になります。
以前は被相続人が相続の開始直前に当該家屋に住んでいたことが条件でしたが、老人ホームに入居していた場合も対象になりました。
参考:国土交通省 空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)
空き家を売却する際の注意点
空き家を売却する際にはいくつかの注意点があります。
相続開始から3年を経過する前に売却する
空き家の3,000万円特別控除の特例は、「相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに」空き家を譲渡したときのみに有効です。3年経過すると特例を受けられなくなり、譲渡所得に対して課税されてしまうため、売却予定であれば3年以内に売却しましょう。
相続登記が完了しているか確認する
2024年から相続登記が義務化されたため、登記簿に記載された名義人と売主は一致している必要があります。登記簿に記載された名義人だけが家を売却できるため、相続登記が完了していないと、売却自体がストップしてしまいます。
抵当権抹消登記が済んでいるか確認する
抵当権とは、住宅ローンを借りる際、金融機関が建物や土地に設定する権利を指します。債務者のローン返済が滞った際、金融機関は抵当権により不動産を競売にかけてローンを回収します。この抵当権は、ローン完済後に債務者が手続きを行わなければ放置された状態になり、買い手が見つかりにくくなります。ローン完済を公示するためには、抵当権抹消登記の手続きを行う必要があるため、確認が必要です。
相続の場合には相続人全員の同意が必要
複数の相続人がいて、相続登記も共有名義の場合、空き家を売却するためには相続人全員の同意を得なければなりません。ひとりでも反対していると売れないため、必ず全員の意思を確認しておきましょう。
契約不適合責任を問われないか確認する
契約不適合責任とは、売買契約後、売買契約書に告知事項として記載されていない欠陥(シロアリの発生や雨漏りなど)があった場合、売主が負わなければならない責任のことです。
契約不適合責任を問われると、修繕費を払うなどの対応が必要となるため、不動産売買契約書の内容は事前にしっかり確認しておきましょう。契約不適合責任の期間や、契約不適合の場合の措置が記載されているかも確認が必要です。また、エアコンなどの付帯設備は免責となるように記載することをおすすめします。
ただし買主が買い取り業者であれば、契約不適合責任は多くの場合免除されます。
空き家を売却するまでの維持管理に役立つALSOKのサービス
空き家を売却する際は、空き家の価値を下げないような管理が必要です。買主との交渉中に空き家の管理不足から欠陥が見つかったり、空き家が犯罪に利用されたりした場合、売却が白紙になることも考えられます。買主が見つかり契約が締結するまでの期間は、空き家の維持管理を定期的に行いましょう。
空き家が住んでいる場所から離れているなどの理由で適切な維持管理が難しい場合は、空き家管理サービスの利用がおすすめです。
「HOME ALSOKるすたくサービス」は、お客様に代わって敷地内の気になる箇所の確認や、郵便受けの整頓を行い、犯罪が起こりやすい空き家をしっかり管理します。さらに防犯面を強化したい方は、不審者の侵入時にALSOKが駆けつける「るすたくセキュリティ」もご加入いただけます。また、換気や通水、庭の確認などもオプションサービスとして実施いたします。
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まとめ
空き家売却の際には細かい確認事項が多いため、売却を検討している場合はできるだけ早めに動き出すことをおすすめします。特に特別控除の適用は3年以内に売却した場合なので、期限が迫っている場合は注意しましょう。専門家の力も借りながら、売主に不利益が生じないように売却を進めることが重要です。