ALSOK セキュリティコラム

地域防犯とモラル

まず、このたびの震災により被害を受けられた皆様に、心からお見舞い申し上げます。一日も早い復旧と皆様のご健康を心よりお祈り致しております。
当社では、震災発生直後より社内に「災害対策本部」を設置し、被害状況を収集するとともに、被災地への必要物資の供給や応援勤務者の派遣などを行っております。今後もALSOKグループ全社を挙げて、被災地および被災者の支援に取り組んで参ります。

今回のコラムでは、私の身近で起こったことについてお話したいと思います。

1. 休日の出来事

先日(休日の昼頃)、私が自転車で近所に買い物に出掛けた際のこと。駅前近くの交差点で信号待ちをしていると、巡察中の警察官が私に近づいてきて、次のように話しかけてきました。
「この自転車に固定式の鍵がついていませんが、どうしてですか?」
その質問を聞き、「自転車窃盗の嫌疑をかけられている」と気づいた私は、とっさに自転車を降り、防犯登録番号を警察官に確認してもらい、自分の持ち物であることを証明しました。〔もちろん、私は古今東西、他人の自転車を無断拝借(これは、「占有離脱物横領」あるいは「窃盗」などの罪に問われることになります)したことは、ありませんが・・・〕
私が現在使用している自転車は10年来の愛用品であり、お世辞にも見た目に「キレイ」、「是非譲り受けたい」などというプラスイメージの言葉は思いつかない代物です(正直言って、「汚い」、「オンボロ」自転車です)。痛くもない腹を探られた私は、なにも盗品とまで疑わずともよいのではないかと、内心憤慨していました。その雰囲気を相手が感じ取ったかどうかは定かではありませんが、職務質問した警察官は私に、「最近、このあたりで自転車の盗難が増えているので、鍵は二重にかけたほうがいいですよ」との助言をしました。
一度は少々「カッ」と熱くなった私でしたが、この一件、冷静になってあとから振り返ってみると、私たちが住む地域の防犯について、様々な教訓を示唆してくれていると思いました。

2. 警察官の目

休日の昼間、商店やスーパーマーケットが立ち並ぶ駅前を警察官が巡察している。この活動自体が防犯上、素晴らしいことだと思います。まさか、警察官が立っている目の前で、白昼堂々と不法行為を目論むほど愚かな犯罪者はいないでしょう。更に着目するべき点は、「その勤務中の警察官がきちんと疑わしい人間を調べている」といった職務遂行能力です。警察の方からすれば、当たり前のことと思われるでしょうが、諸外国において警察官がこのようにきっちり任務をやり遂げている国は少ないと思います。私は、勤務の都合上、外国に数年間住んだことがありますが、休日に駅前の街頭に立って巡察している警官を見ることは稀でしたし、ましてや職務質問を受けたこともありません。こういった地道な警察の活動が、日本の治安を維持していると思います。

3. 防犯登録番号

現在、皆さんが購入した自転車は、「自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的推進に関する法律」に基づき、都道府県ごとに「防犯登録」を受ける必要があります。この制度により、警察官が不審な車両を発見した際、無線での通信により、迅速に所有者を特定できます。つまり、こういった仕組みが社会的に出来上がっているために、警察で登録番号を調べれば直ぐに持ち主が判明することになり、ひいては、このシステムが犯罪を抑止していることになるのです。もし仮に、「誰のものか」はっきりわからない社会システムのままであれば、今よりさらに「盗んでしまおう」という輩が増えてしまうことになるでしょう。

4. 瓜田に履を納れず(かでんにくつをいれず)

「瓜田に履を納れず」とは「疑いをかけられるような行為は避けよ」という意味の故事成語です。今回の例で、私は、期せずして職務質問を受けたのですが、そもそもオンボロ自転車に固定式の鍵を備えつけず(脱着式チェーン錠を利用していました)に乗っていたことがいけなかったのです。自分では大事に使っているつもりの愛車でしたが、傍から見れば、ただの「オンボロ自転車」。いや、警察官の目から見れば、「盗難車両」に見てとれたのです。このようにおおやけの目に触れるものは、その姿、形にも気を配るべきなのでしょう。そういった意味でも、今回の出来事が、私に「固定式錠の設置」と共に、「愛用している自転車の買い替え時が訪れている」ことを指し示してくれているのかもしれません。

5. 最後に

今回は、私自身に起きたことを身近な題材としご紹介しました。災難は、いつやって来るかわかりません。また、不慮の事件事故に巻き込まれないためには、自らの創意工夫も必要となりましょう。昨今、体感治安の悪化などが憂慮されていますが、まだまだ、日本は社会システムとしての犯罪抑止力が働き、国民の高いモラルのおかげで、治安が安定しているといえます。その何よりの証が、今般の東北地方太平洋沖地震での被災地の方々の思慮深い行動に表れております。こういった状況でも冷静沈着に行動する日本人のことを各海外メディアも賞賛しています。そういった自負のもと、誇り高き我々が、この未曾有の危機に立ち向かい、共に力を合わせ、がんばりましょう。「がんばれ!日本」