ALSOKあんしん通信
高齢者を狙った悪質商法の種類や対策を解説
高齢者を狙った犯罪が後を絶ちません。なかでも、違法または不当な手段を用いた悪質商法は、お金や健康面での不安を抱えることの多い高齢者がターゲットにされやすい傾向にあります。そこで本記事では、高齢者を狙った悪質商法の種類や事例、被害に遭わないための対策について解説します。
後を絶たない高齢者を狙った悪質商法
まずは、悪質商法とはどのようなものなのか、近年の実態も含めて解説します。
悪質商法とは
悪質商法とは、一般消費者を対象とした、違法または不当な手段・方法が含まれた商取引のことです。悪徳商法や問題商法とも呼ばれますが、どれも基本的な意味は変わりません。近年は高齢者がターゲットとなるケースが多く、深刻な社会問題となっています。
手を変え、品を変え・・・なくならない悪質商法
悪質商法には、「マルチ」「デート」「点検」「催眠」などさまざまな手口があります。巧妙な誘いで消費者に不利益をもたらす悪質商法は、複雑化・多様化しています。新たな手口が生み出されるたびに政府や警察などが注意を呼び掛けているものの、いたちごっこが続いているのが現状です。
警察庁のデータによれば、令和5年に検挙された悪質商法(注)の事件数は151件でした。事件に巻き込まれた被害者数は107,970人、被害総額は約2,374億円にものぼります。
(注)ここでの悪質商法の事件数は「利殖勧誘事犯」「特定商取引等事犯」による事件数の合計を指します
利殖勧誘事犯:手持ちのお金を増やしたいという願望につけ込んで、未公開株、社債、ファンド、外国通貨等の取引、これら投資被害の救済を仮装して金を集める悪質商法。出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(以下「出資法」という。)違反(預り金の禁止等)、金融商品取引法違反、無限連鎖講の防止に関する法律違反等に係る事犯をいう。捜査の結果、詐欺に当たるものも含まれる。
特定商取引等事犯:訪問販売、電話勧誘販売等で不実を告知するなどして商品の販売や役務の提供を行う悪質商法。特定商取引に関する法律(以下「特定商取引法」という。)違反及び特定商取引に関連する詐欺、恐喝等に係る事犯をいう。
引用:警察庁生活安全局生活経済対策管理官「令和5年における生活経済事犯の検挙状況等について」
高齢者は悪質商法のターゲットにされやすい
高齢者は、「確実な年金収入がある」「健康面の不安がある」「孤独感を感じている」などの理由から悪質商法のターゲットにされやすい傾向があります。悪質商法を企てる業者は、興味をひきやすい健康や趣味にまつわる誘い、老後の経済的な不安に付け込んだ儲け話など、高齢者の生活のあらゆる場面を狙っています。
また、高齢者は自宅にいることが多いことから、訪問販売や電話勧誘によるトラブルに巻き込まれやすいのも特徴です。孤独感から話し相手を求める高齢者に巧みに近づき、さまざまな商品を売りつけようとします。なかには長時間居座ったり、大声で怒鳴りつけたりして強引に契約を迫るケースもあります。
高齢者を狙った近年の悪質商法事例
ここでは、高齢者を狙った悪質商法の事例を3つご紹介します。
事例1:高額な掲載料をだまし取る手口
俳句を雑誌に投稿したことをきっかけに、80歳代女性のもとに「素晴らしい作品ですね。新聞にも作品を載せませんか」と電話がかかってきた。代金が20万円と高額であり迷ったが、強引に勧められ断りきれず契約した。3日後、やはり高いと思って断ったが、すでに新聞を印刷しており解約できないといわれた。
最近急増しているのが、電話で「あなたの短歌や俳句を新聞(雑誌)に掲載しませんか」と勧誘し、高額な掲載料を請求する例です。当初は無料と話を持ちかけておきながら、後から高額な料金を請求するパターンが増えています。断ろうとしても「すでに印刷してしまった」「掲載枠を取ってしまった」と理由をつけて解約を拒んだり、断っているのに勝手に掲載して代金を請求したりします。
事例2:架空の投資話によりお金をだまし取る手口
「値上がりが確実です、あなたにだけこっそりお教えしますよ」と今年の秋に上場する予定の未公開株の購入を勧められた70歳代の男性。買付代金を支払ったが、株券は手元に届かなかった。不審に思い発行会社に確認したら、上場予定など全くないと言われた。
60歳代の女性は、「当社はアフリカでダイヤを採掘し、収益をアフリカ難民支援のために学校や病院の建設に使っています。元本保証で損はしないので、株式転換社債を購入しませんか」と勧められ数百万円の契約をしてしまった。その後、友人から注意され解約を申し出たが、応じてくれない。
高齢者を狙う業者のなかには、「元本保証」「高配当」などを誘い文句に架空の投資話を持ちかけ、多額の金銭をだまし取る悪質ファンド(利殖勧誘事犯もしくは資産形成事犯ともいう)もいます。不況や老後の経済的な不安に付け込み、素人には仕組みが分かりにくい海外の投資話や未公開株などの話を持ちかけてくるのが特徴です。悪質ファンドによる被害の増加は、近年とくに大きな問題となっており、警察庁と金融庁が対策チームを設置するなど、被害防止の取り組みも活発になっています。
出典:警察庁生活安全局生活経済対策管理官「令和5年における生活経済事犯の検挙状況等について」
事例3:SNS型投資詐欺
ある日SNSを視聴していると、「10万円が1,000万円になる」「絶対に儲かる」といった広告が表示された。詳細を知ったり、サービスを利用したりするためにはグループに加入しなければならず、グループに参加したところ数名が在籍していた。そのなかには顧客を装った「サクラ」が潜んでおり、話を信じて対象となる口座に振り込んだ。
しかし、ある日突然連絡が途絶えてしまい、結局振り込んだお金が返ってくることはなかった。
近年は高齢者もSNSを利用するようになりました。それに伴い、高齢者をターゲットとしたSNS型投資詐欺の被害が増えています。警察庁が発表した令和6年1月から6月のデータでは、SNS型投資詐欺の被害者は男女ともに50歳から60歳代の方が半数を超えています。
このような被害に遭わないためには、実在するサービス・企業なのかを確認する、「必ず儲かる」などの誘い文句を信用しないといったことが大切です。また、近年は広告塔に著名人を起用して投資を勧めるケースもありますが、そのような場合は著名人がなりすましでないかもチェックしましょう。
出典:警察庁・SOS47 特殊詐欺対策ページ「SNS型投資詐欺」
高齢者を狙った悪質商法の種類
こちらでは、高齢者を狙った悪質商法の代表的な手口をご紹介します。
マルチ商法・マルチまがい商法
マルチ商法とは、商品やサービスを業者から購入して、その商品の買い手を購入者自身が探し、販売組織に加入させ、ピラミッド式に組織を拡大させる販売形態です。「知り合いに売るだけで簡単に儲けられる」「紹介料で稼げる」などの言葉で勧誘されます。マルチ商法は、友人や知人などの親しい方から誘われることもあり、人間関係にも影響を与える可能性があります。
なお、実質的にはマルチ商法と同じ手口でありながら、法律上の定義を回避して行われるものをマルチまがい商法と呼びます。
電話勧誘
電話勧誘は、販売業者がターゲットとなる消費者の自宅や職場に電話し、商品やサービスを販売する方法です。ビジネスシーンではテレアポと呼ばれる営業手法がありますが、悪質業者の場合は身分を偽ったり、虚偽の説明をしたりします。お金や健康などに不安を抱える高齢者に対しては、強引な勧誘や脅迫じみた案内などを行い、無理やり契約を迫るケースもあります。
インターネット通販
近年ではインターネット通販が広く普及し、年齢を問わず多くの方が利用するようになりました。しかし同時に、利用した覚えのないサイトから利用料を請求されたり、購入した商品が届かなかったりといったトラブルも増えています。また、公式ページと似たページを作成して消費者をだまし、個人情報を盗み取るなど、手口も多様化しているのが特徴です。
高齢者を狙った犯罪には悪質商法以外にも特殊詐欺などがあります。被害に遭わないためにこちらの記事もご参考ください。
悪質商法にだまされないための対策
悪質商法から身を守るためには、次のような対策が効果的です。
儲け話をすぐ鵜呑みにしない
悪質業者は、言葉巧みに相手の警戒心を解き、契約を迫ります。「必ず儲かる」や「無料で始められる」などの誘い文句で投資話や商品・サービスの購入を持ちかけられたときは、鵜呑みにしないように注意しましょう。
あいまいな返答をせずハッキリと断る
悪質業者は、電話勧誘や自宅訪問で高齢者とコンタクトを取ろうとします。これらに対応する際、あいまいな返答をすると、悪質業者はどんどん付け込んでくるので危険です。業者の話にあいづちを打つだけも、相手に興味があると思わせてしまい、気付いたときには断れないような状況に陥っていることがあります。そのため、少しでも怪しい、悪質商法かもと感じたときは、「いりません」「必要ありません」といったように、ハッキリと断りましょう。
個人情報を安易に伝えない
悪質商法の被害に遭わないためには、家族構成や資産などの個人情報を安易に業者に教えないことも重要です。個人情報が流出してしまうと、自分自身はもちろん、家族や親戚への二次被害に繋がるおそれもあります。そのため、知らない人からの電話や見覚えのないサイトからのDMなどが届いた場合は、たとえ特典が用意されていても安易に個人情報を伝えないようにしましょう。
不審に感じたり、不安なことがあったりしたら警察や消費者生活センターに相談する
業者とやり取りをしていて少しでも不安を感じたら、すぐに警察や消費者生活センターに相談しましょう。これらの専門機関では、消費者から寄せられた悪質商法などの相談に対し、問題解決のための助言・あっせんを行っています。警察に連絡する場合は「#9110」(警察相談専用電話)、消費者生活センターの場合は「188」(消費者ホットライン)に電話をかけると担当者に繋がります。購入してしまった後でも、クーリング・オフなどで契約を解除できる可能性があるので、早めに相談することが大切です。
クーリング・オフ制度について詳しくは次の記事をご覧ください。
家族で助け合いながら悪質商法の被害を防ごう
悪質商法は誰でも被害に遭う可能性がありますが、とくに高齢者は狙われやすい傾向にあります。気付かないうちにすでに被害に巻き込まれているかもしれません。普段からご家族とコミュニケーションをよく取り、不安なことがあったら小さなことでも話すようにしましょう。また、もし高齢の親や祖父母の様子が変だなと感じたら声をかけ、心配事などがないか相談にのってあげましょう。
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悪質商法の勧誘電話は、ご自宅の固定電話にかかってくることも多いです。被害に遭わないためには「電話に出ない」ことが重要ですが、大切な電話もたくさんかかってきます。
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