AEDとは?仕組みや電圧・注意点について
2019.06.03(2023.12.22更新)
心室細動などの症状への対処法として有効なAED(自動体外除細動器)。適切に使用するためには、使い方を含め、それ相応の知識が必要となります。一般の人々でも使用できる医療機器とはいえ、いざ使用が迫られる場面では躊躇してしまうことも十分に考えられます。傷病者の救命率を上げるためにも、正しい知識を持ってAEDを扱えるように備えておきましょう。
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目次
AED(自動体外式除細動器)
AEDに対して、なんとなく「心臓に使うもの」というイメージを持っている方も多いかもしれません。では、AEDはどのようにして心臓に作用するのでしょうか。AEDの仕組みについてご説明します。
AEDの仕組み
AED(自動体外除細動器)は、心臓の「細動(=けいれん)」を取り除き、正常な状態に戻す医療機器です。心臓は本来、全身に血液を巡らせるポンプのような役割を果たしています。しかし、心室細動や心室頻拍と呼ばれる症状が起こると、心臓が不自然に細かく動く状態(細動)になり、正常に血液や酸素が行き届かなくなります。
AEDは、このような状態に陥った心臓に強い電気ショックを与えることで、心臓を正常な状態に戻す働きをします。
AEDの電圧・電流
AEDが心臓に与える電気ショックの強さは、電圧1,200~2,000V/電流30~50Aほどで、電気が流れる時間は数ミリ秒~十数ミリ秒程度です。なお、AEDの使用時は付属の電極パッドを傷病者の素肌に貼り付け、心電図を解析します。心電図を解析した結果、心臓に異常が確認できたときにのみ電気ショックを与える仕組みになっています。
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AEDの効果が期待される症状
AEDを使用して効果が期待される症状としては、前述の心室細動や心室頻拍などが挙げられます。心室細動や心室頻拍が起こると、心臓の機能が停止する「心停止」という状態になります。なお心停止は、心臓の活動自体が止まってしまう「心静止」とは異なる状態です。
ここでは、心停止の要因となる心室細動と心室頻拍について見ていきましょう。
心室細動
心室細動は不整脈の一種で、心室がぶるぶると不規則にけいれんしているような状態になり、心臓の血液をうまく送り出せなくなる症状です。心室細動が起きると、重要な臓器に血液が行き届かなくなり、やがて心臓が完全に停止(心静止)してしまうとても危険な状態です。
心室細動は意識を失うのが早く、心臓が原因の突然死の多くは心室細動が関わっているといわれています。現時点で、傷病者を心室細動から救う唯一の方法とされているのがAEDによる電気ショックです。
心室頻拍
心室頻拍は心室細動と同じく不整脈の一種です。心拍が不自然に跳んだり乱れたりする心室期外収縮という不整脈が、高頻度で起こった場合に心室頻拍と呼ばれます。高頻度とは、心拍数が1分間に120回以上の頻度で心室期外収縮が3連続以上発生することを指します。心室頻拍は心拍数が120回/分~250回/分とバラつきがあり、自覚症状(動悸、息切れ、めまい、ふらつきなど)があります。なかには自覚症状がない人もいますが、悪化すると致命的な心室細動に移行する恐れもある症状です。
AEDの基本セット
メーカーなどにもよりますが、AEDの基本セットは以下の通りです。
- AED本体
- 電極パッド
- バッテリー
- 救急セット(医療用手袋、ガーゼ)
- 除毛テープ
電極パッドは成人用と小児用の2種類があります。AED本体のスイッチで成人モード・小児モードを切り替える形式のものもあります。小児に対してAEDを使用する場合は可能な限り小児用の電極パッドやモードを使用しますが、備えがなければ成人用の電極パッドで代用します。ただし、小児用パッドを成人に使用することはできないので注意が必要です。特に、学校などの子どもが多い施設などに設置されるAEDは小児用を備えている場合が多いので、使用する傷病者に応じて使い分けるようにしましょう。
AEDはメーカーや機種によって多少仕様が異なります。例えば、与える電気ショックの強さが一定の固定式と、徐々に電気ショックの強さが上がるエスカレーション式などがあります。また、電源の入れ方や液晶モニタの有無、防塵防水性能などに違いがある場合もあります。しかし、基本的な仕組みや使い方に大きな違いはありませんので、一度使い方を覚えておけば、いざというときに正しく使用することができます。
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AED使用時の注意点
AEDが必要となる場面はさまざまです。基本的な使い方は同じですが、対象者や周りの状況に応じて、可能な限りAEDの効果が発揮できるように対応することが求められます。想定される場面ごとに注意点を確認しておきましょう。
傷病者の体が濡れているときは
傷病者の体が濡れている状態でAEDを使用すると、電流が体の表面を走ってしまい、正常に心臓へ電気ショックを与えることができなくなってしまいます。プールや水辺などで床が濡れている程度なら問題ありませんが、傷病者の体が濡れている場合はしっかりと水分を拭き取ってから電極パッドを取り付けるようにしましょう。
アクセサリーや湿布、体毛に注意
ネックレスなど金属製のアクセサリーや、湿布などを身に付けている場合も注意が必要です。アクセサリーや湿布を身に着けたままで電気ショックを行うと火傷の原因となるため、可能な限り取り外すようにしなければなりません。また、体毛が濃くてパッドが浮いてしまう場合は、除毛テープなどを使用し、電極パッドをしっかり体に密着させて使用しましょう。
ペースメーカーがある
心臓に持病がある傷病者は、胸にペースメーカーが埋め込まれている場合があります。ペースメーカーは通常、胸に硬いコブのような出っ張りが見えるので、電極パッドはその出っ張りを避けて貼るようにしましょう。
女性傷病者への配慮
緊急時とはいえ、女性の傷病者にAEDを使用する場合は配慮が必要です。AEDを使用するには上半身にパッドを直接貼らなければならないため、可能であれば女性が救命活動を行ったり、人の壁を作って周囲から見えないように配慮しましょう。電極パッドを貼ったあと、上から布などを被せるのも有効です。下着はパッドが貼れれば必ずしも外す必要はありませんが、金具などが火傷の原因になる可能性があるため、できれば外したほうがよいでしょう。また、妊娠している女性の場合、母体が心停止に陥ると、胎児に酸素が供給されなくなり、母子共に助からない恐れがあります。母体を救命することが母子双方の命を救うことにつながるため、妊娠している女性にもAEDを使用するべきとされています。
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AEDの日常点検の必要性
AEDは、正しい使い方を身につけるとともに、いざという場面で確実に使用できる状態に維持することが非常に重要です。通常、AEDは頻繁に使用するものではありません。そのため、設置したものの、その後の管理が行き届いていないというケースも決して少なくないようです。いつでも正常にAEDを使用できるよう、以下の日常点検を行いましょう。
ステータスインジケータの確認
AEDには毎日正常に使用できる状態であるかを、セルフチェックする機能が備わっています。ステータスインジケータという箇所を見れば使用可能かどうかが確認できるようになっており、インジケータが緑色になっていれば正常です。インジケータが赤色でアラーム音が鳴っている場合はすぐに異常を確認し、メンテナンスや交換等、適切に対応してください。
なお、機種によっては遠隔でAEDが正常であるか確認できるタイプもあります。異常が検知された際には管理者に通知される仕組みなので、毎日直接確認する必要がなくなります。AEDの管理にかかるリソースを抑えたい場合は遠隔で確認できるタイプを選ぶと良いでしょう。
バッテリーや電極パッドの定期交換
AEDには耐用年数が定められています。メーカーや機種にもよりますが、パーツ毎の耐用年数は以下の通りです。
- 本体:7年程度
- バッテリー:4年程度
- 電極パッド:2年程度
AEDを緊急時に正しく使うには、日ごろから適切なメンテナンスをしておく必要があります。大切な命を1人でも多く救えるように、ステータスインジケータの確認、耐用年数の確認、消耗品の交換は欠かさず行なうようにしましょう。
ALSOKではお客様のご要望に応じてAEDの導入・設置から管理、訓練まで、安心してAEDをご利用いただくためのサポートを行っています。AEDの導入をご検討中の方はぜひALSOKへご相談ください。
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まとめ
AEDは、心室細動や心室頻拍といった不整脈が起こった場合に、心臓を正常な状態に戻すために電気ショックを与える機器です。特に心室細動が起こった場合、現時点で救える唯一の方法がAEDだともいわれています。
必要な場面でAEDを正しく使えるようにするためにも、AEDの仕組みや使用時の注意点などを知っておくことが大事です。AEDを設置したらは日常的な点検も欠かさないようにしましょう。