AEDの設置場所や導入する際の注意点について

2019.05.23(2023.12.27更新)

いつ誰に起きるかわからない心停止に素早く対応する救命処置として、企業のオフィスビル、工場、公共施設など、あらゆる場所で導入されつつあるAED。AEDがその役割を果たすためには、設置する場所や導入後の管理などが非常に重要です。今回は、AEDを導入・設置する際に知っておくべきポイントについて解説します。

目次

AEDを設置すべき場所

AEDとは

心室細動・心室頻拍などの心停止は、命に関わる重大な事態です。心停止は国内における主な死亡原因のひとつであり、1日に約200人もの方が心原性心肺停止(心臓に原因がある心肺停止)によって救急搬送されています。そして、そのなかには普段健康に過ごしていた方も多く含まれています。初期症状や徴候なしに突然発生するケースは決して少数ではなく、老若男女を問わず、いつ誰に起きるかわからないのが心停止の恐ろしいところです。

そういった心停止に効果的な治療法が、AED等を用いた電気ショックによる除細動です。心室細動とは心臓が不規則に痙攣しているような状態であり、AEDで電気ショックを与えることで心臓本来のリズムに戻すことが期待できます。そのほか、心室頻拍と呼ばれる不整脈の一種にもAEDは有効とされています。

しかし、AEDによる除細動の成功率は1分経過するごとに約10%低下すると言われており、心停止からほんの10分程度で命が助かる確率は限りなく低くなってしまいます。また、一命を取り留めたとしても、対応が遅くなるほど後遺症が残る可能性が高くなります。つまり、心停止の傷病者が発生した場合は、1分1秒でも早くAEDを使用することが非常に重要です。そしてそのためには、できるだけ身近な場所にAEDが設置されていなければなりません。

AEDの設置場所

近年ではAEDが普及し、多くの場所でAEDを見かけるようになりました。また、認知度や理解度も深まり、一般市民によるAEDを用いた救命活動が行われるケースも増えつつあります。しかしながら、AEDを使用しなかった場合やAEDの到着までに時間がかかってしまう場合も多く、いつでも直ちにAEDを使用できる状況には至っていません。

日本救急医療財団による「AEDの適正配置に関するガイドライン」によれば、多くの人が集まる駅・空港や商業施設、集客施設、市役所や交番などの公共施設、会社・工場などはAEDの設置が推奨される施設の例として挙げられています。また、心停止傷病者が発生しやすいスポーツ関連施設や高齢者の多い介護・福祉施設、多くの子どもが集まる学校なども、AEDの設置が望ましい施設です。その中でも心停止の発生頻度が高い場所やリスクのある場所、また救助にあたる人員の多い場所が特にAEDを設置すべき場所となっています。

一方で、自宅における心停止もかなり多くの割合を占め、集合住宅などの人口が密集した環境では、AED設置による効果が期待されています。実際に個人でAEDを所有している方もおり、ご家族や周囲の方にとっても万が一への備えとなっています。

AED配置のポイント

AEDは救急の場面で使用されるものです。わかりにくい場所に設置されていたり、持ち出すまでに時間がかかると、早急な対応が困難になってしまいます。また、敷地の広さに対してAEDの設置数が少ない場合も、対応が遅れる原因となるでしょう。

どこにいても1分以内に使用できる場所

配置の目安は、建物のどこにいてもAEDが1分以内に到着するような場所に設置されていることです。例えば企業のオフィスビルの場合、奇数階または偶数階ごとにエレベーターホールなど人の流れが多い場所に設置されていれば、どの場所からでも比較的短時間でAEDを用意することができるでしょう。

しかし現状では、エントランスに1台のみ設置されている場合も多いようです。設置されているに越したことはありませんが、広さ・規模に対してAED設置数が少ないということは、いざというときの対応スピード、ひいては救命率にも影響するということも忘れてはいけません。

多くの人の目に触れる場所

AEDの設置場所は、普段から多くの人の目に触れる場所が望ましいとされます。オフィスビルであれば、エントランスや受付、エレベーター・階段の付近、社員食堂などが設置場所の候補として挙げられます。そして、誰でもすぐに持ち出せる状態になっている必要があります。担当者しか知らない管理体制や、鍵をかけたロッカーなどでの保管は避けましょう。

看板や案内表示を活用する

看板や案内表示などを使用して、設置場所をわかりやすく示すことも重要です。屋内はもちろん、建物の外で心停止傷病者が発生する可能性もあるため、出入り口のドアなどにAEDの設置を示すステッカーなどを掲示しておくと、AEDを探す時間の短縮につながります。

休日に閉館している公共施設や学校などの場合は、できれば閉館時のことについても考えておきたいところです。例えば、休日に屋外でAEDが必要な事態になっても、設置されている建物の鍵が閉まっていればAEDは使用できません。そのため、学校のAEDを玄関前などの屋外に設置するようにしている地域も実際にあります。

このように、AEDは導入するだけでなく、その効果を最大限に活用するために設置する場所や保管方法、台数も非常に重要であることを覚えておきましょう。

AED導入にあたっての注意点

AEDを導入する際は、AEDが必要な場面で確実に使用できるよう、しっかりと管理体制を組んでおきましょう。

AEDの存在を周知する

導入後は、まずAEDの存在を周知することが大切です。実際に、AEDを導入しているにも関わらず、従業員が所在を認識していないという企業も少なくありません。目立つ場所に設置することはもちろんですが、導入したことを告知したり、防災訓練などの際にAED講習を行ったりと、AEDを設置していることをしっかり意識させるようにしましょう。そうすることで、いざという場面での迅速な対応につながります。

日常点検をおこない消耗品は定期的に交換する

AEDの管理では日常点検が欠かせません。AEDには自動的にセルフチェックを行う機能が備わっており、異常があればランプなどで知らせる仕組みになっています。AEDが正常に使用できる状態であることを日々確認しておきましょう。

さらに、電極パッドやバッテリーなどの消耗品については定期的に交換する必要があります。一般的に、電極パッドは2年程度、バッテリーは3〜5年程度で交換しなければなりません。レンタルの場合は業者がサポートしてくれることもありますが、基本的には設置者や管理者がしっかり使用期限を把握・管理することが求められます。

AEDマップに登録する

AEDを設置したら、必要な場合に有効に利用できるよう、AEDマップへ登録するようにしましょう。AEDマップに登録することで、全国各地のどこにAEDが設置されているかを確認することができます。設置者以外の人がAEDの設置場所を把握できるため、AEDの活用頻度が高くなり、より救命率を上げることにつながります。

登録済みのAED情報やAEDマップへの登録方法については、一般財団法人日本救急医療財団のホームページに掲載されているマニュアルを確認してください。

一般財団法人日本救急医療財団 財団全国AEDマップ登録のご案内
https://qqzaidan.jp/aed_settitouroku/

屋外に設置する際は直射日光の当たらない場所に設置する

近年、各地でAEDが24時間使用できるように屋外への設置が進んでいます。AEDは温度変化の激しい場所に設置していると、正常に動作しなくなったり故障の原因につながることがあります。AEDを屋外に設置する際は、直射日光の当たる場所を避けて設置しましょう。また、急激に冷える場所や、雨・風が当たらない場所であることもポイントです。

温度管理が可能な専用のボックスに入れて設置することで、屋外でもAEDを適正な温度で管理することができます。

AED導入後は従業員への使用訓練も積極的に行う

AEDの導入後は、周知や適切な管理をするとともに、より多くの人がAEDを使用できる状態にしておくことも重要です。いつ誰が心停止の場面に居合わせるかわからないため、企業内での心停止のリスクに備えるためには、積極的に訓練を行うことが望ましいと言えます。

AEDは非医療従事者でも扱える仕組みになっているものの、訓練を受けたことがなければ、いざという場面で躊躇してしまうかもしれません。管理者はもちろんのこと、できるだけ多くの従業員がAEDを使えるようにしておきましょう。

企業では、防災訓練などの際にAEDを用いた心肺蘇生法の訓練を行うのが一般的です。AEDのメーカーや販売業者、消防署などが講習を行っている場合が多いので、プロのアドバイスを受けながら訓練を行うとよいでしょう。AEDの使用方法を解説した動画を活用するのもおすすめです。

ALSOKのAED販売・レンタルサービス

AEDは導入すればそれで終わりということはなく、管理や訓練など、万が一の際に正しく使用できるよう考慮すべき点が多くあります。

ALSOKではAEDを安心してご利用いただくためのトータルサポートを行っています。導入・設置はもちろん、消耗品の管理やAEDの講習なども承っています。AEDの導入をご検討中の方はぜひALSOKへご相談ください。

まとめ

心室細動などによる心停止は、老若男女問わず誰にでも起こりえます。一分一秒を争う場面で人命救助の確率を上げるためには、AEDの導入は必要不可欠だといえるでしょう。AED導入の際は、いつでも誰でも使用できるよう、適切な場所に設置し、適切に管理することが大切です。