AEDはどこに設置する?AEDの設置場所やポイント・設置義務について

AEDはどこに設置する?AEDの設置場所やポイント・設置義務について
2024.10.31更新(2021.03.26公開)

AED(自動体外式除細動器)は急な心疾患によって起こる「心室細動・心室頻拍」という症状を、心臓に強い電流を一瞬流して電気ショックを与え、心臓の状態を正常に戻すことを目的とした医療機器です。2004年からは、医療従事者に限らず一般の人も使用して人命救助措置を行えるようになり、医療機関にとどまらず街のさまざまな場所に設置されるようになりました。
この記事では、AEDの設置が望ましいとされる場所や機器の点検に関する情報、耐用期間や管理方法についてご紹介します。

目次

AEDとは

AEDとは、心室細動・心室頻拍が起って全身に血液が送られず心停止した際に、電気ショックを与え、心臓の常態を正常に戻す医療機器です。心室細動や心室頻拍などによる急な心停止は、老若男女問わず誰にでも起こりうるもので、たとえ健康な人でも突然発生するケースは少なくありません。現在、心室細動から救う唯一の方法がAEDとされています。

心停止の傷病者が発生した場合、救命率は1分経過するごとに約10%低下するといわれており、速やかにAEDによる処置を行うことが極めて重要です。また、対応が遅ければ遅くなるほど後遺症が残る可能性も高くなります。

AEDの設置は義務?

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AEDを、自社やその構内に設置したいと考えている方も少なくないでしょう。ここでは、企業によるAED設置の是非やその必要性についてご紹介します。

AEDの設置は法律では義務化されていない

法律でAEDを設置する義務が課せられている企業や施設などは、現在のところありません。
ただし、いくつかの自治体では特定の施設にAEDの設置を必要とする救急条例を設けている場合もあります。(2024年10月時点)

たとえば横浜市では、平成21年から救急条例第6条及び安全管理局告示第1号に基づき、一定規模以上の建物や、劇場、百貨店、ホテル、病院、スポーツ施設、駅舎、飲食店など不特定多数の人が出入りする防火対象物のうち、階数や延べ面積などの条件を満たしている施設にAEDの設置を義務付けています。
また、茨城県や千葉県も同様に、県民の救命率の向上のためAED等救急資器材の設置を促進し、いかなる状況でも心肺蘇生法の実施及びAEDが使用できる環境の整備に努めています。

このように、法律によって設置義務は課せられてはいないものの、自治体ごとにAEDの設置に関する条例があり、基本的に多くの人が集まる商業施設や大規模な集合住宅、スポーツ競技やイベントの会場などは、設置が望ましい場所とされています。
なお、厚生労働省の「AEDの適正配置に関するガイドライン」では、さらに具体的な場所や施設を挙げて設置を推奨しています。

企業の安全配慮義務

企業には「安全配慮義務」と呼ばれる、従業員が安全に働ける環境を整えるための配慮や対策を行う義務が課されています。それに沿った考え方に基づけば、企業内にAEDを設置することも安全配慮の観点から非常に望ましいと考えられるでしょう。

心停止の発生頻度によるAED設置の目安

以下のグラフは、厚生労働省発表「人口動態統計の概況」令和5年のデータをもとにした、おもな疾病による死因別死亡者数をまとめたものです。

国内での死者数が最も多い疾病はがんなどの「新生物」によるものですが、心疾患による死者数も年間23万人以上と非常に多くなっています。なお「心疾患を含む循環器系疾患」で数えた場合の総数は37万人を超え、新生物による死者数に迫る人数となります。心疾患で亡くなる人がこれだけ多い事実を踏まえると、急な心疾患により倒れた人を、その場に居合わせた人(バイスタンダー)がAEDを使用して救命措置を施せるよう、社会全体で取り組むことが急務であると分かります。

令和5年の国内におけるおもな死因別死亡者数
出典:令和5年(2023)人口動態統計(確定数)の概況「第7表 死因簡単分類別にみた性別死亡数・死亡率(人口10万対)」

【AEDの使用で救命率を上げられる場所とは?】

AEDの適正配置に関するガイドラインでは、ある大規模試験の結果、AEDの使用によって救命率が向上した施設は以下の2つの特徴を持っていました。

  • 心停止を起こす事例が2年に1件以上目撃されている場所
  • 50歳以上の成人250人以上が1日あたり16時間以上いる施設

欧州のガイドラインではこの結果を踏まえ、2005年に「心停止が発生する可能性が高い場所」として空港やスポーツ施設など「少なくとも2年に1件は心停止発生の可能性がある施設」にAED設置を推奨しました。これは現在、「5年に1件以上心停止発生の可能性がある場所」に変更されています。
アメリカも同様で、5年に1件以上心停止発生の可能性がある公共の場所にAEDの設置を推奨しています。この取り組みにより、公共の場において発生する心停止の3分の2をカバーできるといわれています。

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AEDの設置基準・設置場所のポイント

AEDの設置基準・設置場所のポイント

AED設置を推奨する場所の要件に沿って考えると、企業の事業所はAED設置が特に望ましい場所のひとつと考えて良いでしょう。ここでは、業務中・休憩中における急病人の発生といったAEDが必要となる場面や、設置にあたって考慮すべき点についてご紹介します。

社内でAEDが必要となる場面とは

社内にいる人が業務中や休憩中に突然倒れてしまったなど、AEDによる救命措置が必要な場面に立ち会った場合、周囲の人はどのような行動をとれば良いのでしょうか。
倒れた人に声をかけたり肩を叩いたりして反応がなければ「意識がない」と判断できます。それに加えて、正常に呼吸をしていない場合は人命が危険な状態にあるとみられ、AED使用による救命措置が必要と考えて良いでしょう。

AEDの設置にあたり考慮すべきこと

AEDを設置する場所は基本的に多くの人が集まる場所や施設、イベント会場などですが、面積が広い施設も多いため、施設内のどの箇所に設置するかも考慮しましょう。AEDの設置箇所が倒れた人から離れていれば、AEDを持ってくるまでに時間を要し、救助にかかる時間も長くなる可能性があります。
施設内の設置箇所として以下の要件を考慮し、最適な設置箇所を検討してください。

人目につきやすい場所を選ぶ

AEDは人目につきやすく、わかりやすい場所に設置しましょう。たとえば、建物の出入り口付近、普段から目に入りやすい場所、多くの人が通る場所など目立つ場所に設置すると、AEDを使用したいときにすぐに見つけてもらうことができます。

誰でも取りに行ける場所

AEDは誰でも取りに行ける場所に設置しましょう。特定の人しか入れない場所や入室に許可が必要となる場所は避けてください。また、防犯面を考慮してAED収納ボックスに鍵をかけてしまうと、緊急時にすぐに取り出すことができません。
また、自治体によっては、地域貢献として民間団体等がAEDを購入して24時間誰もが使用できるよう屋外に設置した場合等に、補助金を設けている場合もあります。

出典:24時間AED設置補助事業について(東京都大田区)

階層移動しやすいエレベーターや階段付近

エレベーターや階段付近に設置することで、他の階でAEDが必要となった場合でもすぐにAEDを持って来ることができます。特に高層ビルなどで数フロア毎にAEDを設置している場合、階段かエレベーターを使って取りに行くことが想定されます。AEDを探す手間や移動時間を削減できるようにエレベーターホールや階段付近に設置しましょう。

一般財団法人日本救急医療財団の「AEDの適正配置に関するガイドライン」によると「心停止発生から5分以内にAEDによる処置が可能な場所」への設置が望ましいとされています。
仮に1分あたり150mの早足移動でAEDを取りに行った場合、「300m以内」の距離にAEDがあれば5分以内に処置を行えます。大規模施設などにおいては、1箇所の設置ではこの距離を賄いきれない可能性があるため、水平移動距離300mごとに複数台の設置が必要となります。

【設置にともない、設置環境が適切かどうかも確認を】

AEDの設置箇所について、設置や使用に適した環境条件であるかどうかも設置する前に確かめておく必要があります。各機種の取扱説明書に記載された温度・湿度範囲を参考に、設置場所が適した環境下にあるか確認しましょう。

AEDの設置が推奨される施設

これまでは「AED設置が望ましい施設」をご紹介しましたが、「AED設置が推奨される施設」についてもご紹介します。下記に列挙する施設はAEDの設置が推奨されているので、未設置の施設があれば是非設置をご検討ください。

【AED設置が推奨される施設】(2024年1月時点の情報です)

  • 駅、空港、バスターミナル
  • 「道の駅」、高速道路などのサービスエリア/パーキングエリア
  • 旅客機や長距離列車、旅客船など長距離輸送機関
  • スポーツジムやスポーツ関連施設
  • デパートやスーパーマーケットなどの大型店
  • 大型集客娯楽施設、観光施設、葬祭場など人が多く集まる場所
  • 人口密集地域にある交番や消防署などの公共施設
  • 50人以上が入所する大規模高齢者施設
  • 幼稚園、小中学校、高等学校、大学や専門学校などの学校
  • 多くの従業員が在籍する企業の大規模事業所 など

上記は厚生労働省の「AEDの適正配置に関するガイドライン」によって設置が推奨されている場所・施設です。

【AED設置が望ましいとされる施設】(2024年1月時点の情報です)

  • 地域のランドマークになる施設
  • 保育園・認定こども園
  • 集合住宅 など

これらの施設についても、上記「AEDの適正配置に関するガイドライン」において「AED設置が考慮される施設(例)」として挙げられています。

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AED設置後の注意点

現在、多くの場所でAEDの設置が進んでいます。しかし、設置しただけでなく、正常に使用するには適切に管理することが重要です。AEDを設置する際の注意点をご紹介します。

AEDを設置したら設置者申請登録を行う

AEDを設置したら、一般財団法人日本救急医療財団を通じて「AEDマップ」への設置登録を行うことが推奨されています。AEDマップへ登録することで地域にAED設置に関する情報が提供され、地図上でどこにAEDが設置されているのかを簡単に知ることができるようになります。

一般財団法人日本救急医療財団 設置場所登録申請
http://qqzaidan.jp/kakushuiin/sinpai/aed/entry/

定期的な点検を行う

AEDの電極パッドやバッテリーは使用期限が決まっている消耗品です。AEDを設置した後はいつでも正常に使用できるように、インジケータや消耗品の点検を行いましょう。定期的な点検を継続することが、万一のときの命を救うことにつながります。

ALSOKのAED販売・レンタルサービス

ALSOKのAED販売・レンタルサービス

さまざまな場所で設置が推奨されているAED。社内での業務中・休憩中に急な心疾患によって従業員が倒れてしまうことも考えられます。そこでALSOKでは、AEDの販売・リース・レンタルを行っています。使用を想定した簡易講習も実施し、いざというときに誰でもすぐ活用できる環境を整えられます。

ALSOKのAEDの大きな特徴として、警備会社のノウハウを活かした独自の管理システムで、本体や消耗品の使用期限を適切に管理・通知し、期限が近づいた消耗品の交換品をお客様のもとにお届けします。また、AEDを使用した際は、使用済みの消耗品を無償で新しいものに交換します。AED本体は用途や設置環境に合わせてさまざまなラインナップを取り揃えており、お客様のご要望に応じて最適な機種をご提案します。

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まとめ

性別・年齢を問わず、AEDを使用すべき機会は誰にでも起こりうることです。万一の事態でも救命措置が確実に行えるよう、施設内や会社内といった人が集まる場所に設置して万全の状態を常に整えておくことが重要です。
導入して終わりではなく、日常点検や消耗品の交換等を確実に行い、いざというときにしっかり備えましょう。

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