AIカメラとは?防犯対策に役立つ機能と活用事例をご紹介

AIカメラとは?防犯対策に役立つ機能と活用事例をご紹介
2023.05.12

近年さまざまな技術の発展が進んでいくなかで、防犯対策の一助になりえるものとして、AIを搭載したカメラ「AIカメラ」が注目されています。

AIカメラを防犯対策に取り入れることで、一体どのようなことができるのでしょうか。

この記事では、AIカメラの説明や防犯対策に役立つ機能について、また実際に活用されている事例をご紹介します。

目次

AIカメラとは?

AIカメラとは、その名の通りAI(人工知能)の技術が搭載されたカメラのことです。カメラが撮影した画像や動画を、カメラに搭載されたAI(人工知能)が解析します。AIが解析した結果は、クラウド上などにデータとしてアップロードして保管することも可能です。

AIカメラの機能

AIカメラの機能は大きく分けると「撮影」と「解析」の2つに集約されます。
撮影機能は、従来のカメラと基本的に同じですが、最新型のスマートフォンのカメラなどのように顔認証技術によって自動でピントや明るさを調節したり、人の動きを追いかけたりすることが可能など、性能は年々向上しています。

解析機能についてはいくつかのパターンがあります。

1つ目は、検知したいデータをあらかじめ登録しておき、そのデータに合致した対象物がカメラに写り込んだ場合に検知するパターンです。例えば、工場などでの異物検知や道路の舗装損傷の検知といった用途で利用されています。

2つ目は、写り込んだ映像をリアルタイム、あるいは事後的に分類する機能です。例えば、道路に設置して混み具合を識別したり、ショッピングモールに設置して来店者の移動状況や棚前での行動などを分析し、サービス向上につなげたりする用途で利用されています。
ただし、AIカメラ(映像データ)に限らず、個人を特定した上での映像解析は行政によって規制されています。詳しくは総務省「カメラ画像利活用ガイドブック」をご覧ください。

総務省「カメラ画像利活用ガイドブック」はこちら
https://www.soumu.go.jp/main_content/000542668.pdf

AIカメラで実現できること

AIカメラで実現できること

ここからは、AIカメラで出来ることについて具体的に見ていきましょう。

人物やモノの検知・認識

通常の防犯カメラ・監視カメラでは対象物を撮影するだけですが、AIカメラでは映像内の人物・モノが何であるかを検知したり、動きを認識したりすることが可能です。例えば、映像内にある人物がリュックを背負って自転車に乗っている場合、「人間・リュック・自転車」のように、3つの対象を別々に認識することができます。

検知・認識機能により具体的にできることとしては、以下が挙げられます。

  • 不審な動きをしている人物の検知
  • オフィスビルや商業施設などでの混雑状況の判別
  • 工場などでの商品・モノの検品
  • 医療現場でのMRI画像の分析
  • 年齢、性別を認識してマーケティング用に来場者分析を行う など

姿勢検出

映像内の人物の関節位置・角度などから、どのような姿勢になっているかを割り出せるのが姿勢検出です。
この姿勢検出機能を使ってできることとして、例えば熟練の技術者の姿勢を検出することが挙げられます。上半身をよく使う技術者の仕事であれば、熟練者には肩から肘、肘から手首など各関節の動きに特徴が見られることもあります。このように熟練者の姿勢を検出できることで、新人の教育を効果的に行えるなどのメリットにつながるのです。

技術者の教育以外にも、姿勢検出は以下のような場面で活かされます。

  • アスリートのフォーム確認・修正
  • 身体の歪みや不健康な姿勢の検出
  • 要介護や病人の転倒の検出 など

顔の検知・認識

AIカメラでは、人の顔を検知し、特徴を捉えて個別に認識(識別)することが可能です。例えば、オフィスや工場などで活用する場合、データベースに登録されている顔の特徴と照合することで、社内の人間かどうかを判別できます。
また、AIカメラ映像から検出した人間の属性(性別・年齢)を検出し、利用状況を可視化することも可能です。

顔の検知・認識を活用できるその他の例としては、以下が挙げられます。

  • オフィスにおける入館許可および勤怠管理
  • コンサートなどのイベントにおける来場客の年齢・性別調査
  • 無人店舗での来店客の顔認識 
  • 施設利用状況のリアルタイム連携(属性分類別の混雑状況把握)など

文字の検知・認識

AIカメラでは、映像内の文字・数字などを検知し認識することも可能です。文字認識(OCR)は、紙に書かれている手書きの文字や、印刷された文字などを判別します。そのため、画像内のテキストを抽出することも可能です。最近では、翻訳技術と組み合わせたシステムなどが登場しています。ただし、認識できる文字はAIカメラが対応している言語のみとなります。

文字の検知・認識を活用する例としては、以下が挙げられます。

  • 文字の認識・読み上げによる、目が不自由な方のサポート
  • カメラで撮影した書類の文字起こし など

領域や境界線の認識

領域・境界線の認識は、撮影した物体の領域を細かく認識する機能で、セグメンテーションと呼ばれます。例えば、街中の映像があったとして、映像内の人間・道路・壁・木々・看板などを見分けて境界線を認識できるのです。

セグメンテーションは、以下のような場面で活用されています。

  • お掃除ロボットの領域把握
  • 金属などの表面に発生したさびの認識
  • 立入禁止区域の監視 など

バーコードの検知

バーコード認識は、主にスマートフォン(エッジ型AIカメラ)で使用される機能です。AIカメラでは、複数のバーコードを同時に読み取ることができます。

AIカメラによるバーコード認識は、以下のような場面でも活用されています。

  • 物流倉庫での荷物の認識および検品作業 
  • 図書館の蔵書点検作業
  • 工場ラインの検品作業 など

AIカメラの種類について

AIカメラは、AIの搭載方法の違いによって、大きく3種類に分かれます。それぞれの特徴について見ていきましょう。

クラウド型AIカメラ

カメラで撮影し取得したデータを、クラウド上のAIシステムで解析します。クラウド上でAIが処理を行うため、手元に膨大な量のデータを保管する必要や画像処理用の機材を用意する必要がないなど、管理の手間が減ります。
また監視や防犯目的だけではなく、顧客満足度の改善といったインストアマーケティング(店舗を中心に販売促進や売上拡大を目指す考え方)に役立つでしょう。

また、個人の特定につながるような情報の漏洩を防ぐために、クラウド上にアップロードするデータは事前に精査する必要があります。

エッジ型AIカメラ

エッジ型AIカメラとはエッジAI機能が搭載されたカメラのことを指します。
エッジ型AIカメラで撮影した映像はAIによってすぐに解析され、映像を保存する場合は必要なデータのみをサーバに送ります。クラウド型カメラと異なり、エッジ型AIカメラ側でAI処理を行うため、撮影した映像の素早い解析が可能です。
また、基本的な処理をエッジデバイス上で実行し、処理結果のみをサーバやクラウドへ送信します。重要なデータを外部とやり取りせずに済むため、通信経路上でデータを盗まれる、外部に情報が流出する、といった情報漏えいリスクの低減が期待できます。さらにアップロードするデータが少なくて済むので、クラウド型AIカメラに比べ通信量の削減にもつながる点がメリットです。

※備考
「エッジAI」という呼び方は、エッジ(先端)にあるデバイスに搭載されているAIを指すことから名付けられています。ここでいう先端とはスマートフォンやセンサーなど、いわゆるIoT機器として活用できるデバイスのことで、これらのデバイスに直接AIを搭載し情報処理する技術です。エッジAIにもタイプがあり、エッジAI上で判断のみを行いクラウドとの接続で学習データやモデルの更新をするタイプと、エッジAI上で判断と学習双方を行いクラウドとの接続を必要としない独立型タイプの2つがあります。

その他

その他の種類としては、カメラとコンピュータが別々に分かれているタイプが挙げられます。カメラ・コンピュータ、それぞれの必要なスペックを吟味したうえで導入できるため、無駄なコストを減らすことができます。

ただし、機材購入に関するコスト自体は最適化できる反面、「電源は2系統の確保が必要」「特殊なケーブルなどが必要」など現場への設置時には、多少考慮すべきことが増える点がデメリットでしょう。

それぞれに特徴が異なるため、自社が利用を想定するシチュエーションに適したカメラを選ぶ必要があります。

AIカメラと従来の防犯・監視カメラの違い

警察庁が発表している「令和3年の犯罪情勢」によると、令和2年の侵入犯罪の認知件数が5万5,515件であったのに対し、令和3年では4万7,325件と14.8%減少しました。

侵入窃盗が減少している要因としては、防犯カメラをはじめとする高性能の防犯機器が普及していることが考えられます。しかし、年々減少傾向にあるとはいえ、認知されているだけでも依然として4万件以上の侵入犯罪が発生しています。

そこでここからは、AIカメラと従来の防犯カメラ・監視カメラとの違いをご紹介します。
防犯対策用の監視カメラ(ネットワークカメラ)は従来からありますが、AIカメラと一体どのような違いがあるのでしょうか。

まず、従来の監視カメラで映像を確認・分析するには、録画を見るかリアルタイムで映像モニターを監視する必要がありました。しかし、AIカメラではAIが画像を分析するため、常にモニターの前に居続ける必要はありません。

また、AIカメラには映像内に問題があれば察知し、責任者や管理者へ自動で通知・アラートが届く機能もあります。

このように、人の手が必要かどうかによって、両者には大きな違いがいくつも挙げられます。その他の違いに関しても、以下の表にまとめたので参考にしてください。

機能 AIカメラ 従来の防犯カメラ
モニターの監視 24時間自動 人が判断
顔認識 自動(機械学習) 人が判断
行動予測 自動(機械学習) 人が判断
経験が必要
リアルタイム 24時間自動 多くは録画で確認
責任者・管理者への通知 自動送信 電話・メール等で知らせる

撮影する・録画するなどの純粋なカメラの機能だけではなく、カメラに映ったものをAIが学習し分析することで、より進んだ防犯対策が実現します。

従来の防犯カメラの場合、映像をチェックする監視員が必要でした。その点AIカメラであれば、リアルタイムで異常を検知することができ、監視員も必要ありません。監視に人的リソースを必要としないため効率よく防犯対策を実現できます。

さらに、異常判定の制度を高められる点もより進んだ防犯対策を実現させます。従来の防犯カメラにも異常を検知する機能を搭載したものはありますが、AIカメラであれば、常に「正常な動き」「異常な動き」という2つのデータを蓄積し、蓄積したデータをもとに判定を行います。そのため、「どのような動きを異常事態とみなすのか」の判断をより高いレベルに引き上げることが可能です。これはデータの蓄積によって予測・分析精度を高められるAIカメラにしかないメリットでしょう。

AIカメラの活用シーンを5つご紹介

AIカメラの活用シーンを5つご紹介

ここからは、一般的にAIカメラが活用されている主なシチュエーションについて、詳しく見ていきましょう。具体的に5つの例をご紹介します。

顔認証での入退室および勤怠管理

先ほども少し触れましたが、AIカメラが活用されているシチュエーションとして代表的なのが、オフィスでの入退室・勤怠管理です。あらかじめ社員の顔写真を登録しておき、社員だと認識した場合のみドアのロックが解除されるようにすれば、部外者の入室制限ができます。また、入室・退室時刻と勤務実績を照らし合わせることで適切な勤怠管理にもなります。
加えて、サーマルカメラの機能が搭載されていれば、入退室時に検温を実施することも可能となり、より安全な感染症拡大防止にもつながるでしょう。

店舗や施設における混雑状況の把握

飲食店や商業施設においては、AIカメラで訪れた人数を検知することで、混雑状況をより正確に把握できます。さらに、得られたデータにより混雑する時間帯の予測も可能になります。

また、統計や時間帯別の混雑状況をグラフ化・数値化することで、顧客の利便性が向上し、効率の良い集客も見込めるでしょう。実際、駅構内に設置されたカメラから改札の通過人数を認識できるようにしている鉄道会社もあり、カメラから得られたデータをもとに混雑状況を把握・予測し、各社アプリなどに反映させているのです。

【鉄道各社アプリの例】

  • 駅視-vision(東急線アプリ)
  • 駅混雑予測情報(JR東日本)
  • 改札口混雑(JR東日本) など

犯罪の未然防止

防犯カメラ・監視カメラの設置によって犯罪抑止につながるうえ、AIカメラが不審な動きを検知することで犯罪の予兆を把握することもできます。

AIカメラでは、「動いている・停止している」などの単純動作だけではなく、「首を左右に振っている・右手を動かしている・鍵穴に手を当てている」などの細かい動作まで認識可能です。例えば、「首を左右に振って周囲を見ながら、鍵穴に右手を当てている」人物がいれば、ピッキング中の侵入者かもしれない、という予測につながるでしょう。

このように、映像内の人物の動作を検知し、不審な動きをしている人を発見することで犯罪を未然に防ぐことにつながります。

侵入者の検知と通知

不審な動きをしている人物や従業員の作業服を着ていないなど、AIカメラの高精度解析によって立入禁止場所における侵入者の検知およびアラート通知も可能です。
侵入の証拠映像の録画はそのままに、侵入の瞬間だけをアラート通知できるタイプもあり、不審者の発見、事件の早期解決にもつながります。不審者の侵入だけでなく、休日の従業員立ち入りや運送業者の出入りも確認ができます。

AIカメラによる侵入者の検知・アラート通知機能は、幅広い業界での防犯・監視に有効です。

ALSOKの「AIカメラシステム」サービス

AIカメラでは犯罪抑止につながる上に、不審な動きを検知することで犯罪の予兆を把握することができます。従来であれば防犯カメラの映像をみて監視員が判断していたものを、AIカメラだけで犯罪の予兆を検知し、把握するのです。そのため、犯罪の未然防止につなげることが可能です。
ALSOKでは、こうしたAIカメラのメリットを活用した「AIカメラシステム」を提供しています。防犯対策の強化を検討している場合は、この機会にALSOKのAIカメラシステムを導入してみてはいかがでしょうか。

ALSOKのAIカメラシステムは、人物検出に特化していることが大きな特長です。ほふく前進(※1)やかがみ歩き(※2)、傘をさしていても身体の一部が分かれば人物検出を行うなど、高性能のAIが搭載されているため防犯対策の一助になるでしょう。

※1 腹ばいになって、手と足(膝)で地面をするように前進すること。
※2 膝をまげてかがみながら歩くこと。

ALSOKのAIカメラシステムの事例

実際にALSOKのAIカメラシステムが導入されている場所としては、以下が挙げられます。

  • 太陽光発電所
  • プラント施設
  • 自動車販売店
  • 屋外資材置き場

敷地が広く、複数の監視員で監視しているような場所でも、ALSOKのAIカメラシステムは人物検出に特化しているため、不審者の侵入防止に役立ちます。

また、立入禁止区域を設けているような、危険なエリアが多い工場内などでは、セグメンテーションを応用した安全対策も講じることが可能です。

ALSOKのAIカメラシステムについて、詳しくはこちらからご確認ください。

ALSOKの関連商品

まとめ

AIカメラは、人の手を介することなく人物・モノの検知が可能な機器です。オフィスにおける入退室管理、商業施設における来場者の人数把握、侵入犯罪の抑止などさまざまな場面でAIカメラは活用されています。安全対策や防犯対策としてAIカメラの導入を考えている場合は、この機会にALSOKのAIカメラシステムを検討してみてはいかがでしょうか。