ストーカー規制法が施行されたのは2000年のこと。しかし、現在に至るまで、悪質なストーカーによる被害や相談が絶えることはありません。
警察庁によると、令和5年のストーカー事案の相談件数は19,843件です。平成29年(23,079件)から減少傾向にあるものの、近年は毎年20,000件近くのストーカー被害が継続的に確認されています。
出典:警察庁「令和5年におけるストーカー事案及び配偶者からの暴力事案等の対応状況について」
ストーカー行為とは、恋愛感情などの好意の感情を満たす目的やその感情が満たされなかったことへの恨みをはらす目的で、同一の人やその家族に「つきまとい等」の行為を繰り返すこと。たとえば、以下の8つの行為です。
1 |
つきまとい、待ち伏せ、押しかけ |
5 |
無言電話、連続したSNS等を利用した連絡 |
2 |
監視していると告げる |
6 |
汚物などを送付する |
3 |
面会・交際を要求する |
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名誉を傷つける |
4 |
著しく乱暴な言動をする |
8 |
性的しゅう恥心の侵害 |
(出典:警視庁「ストーカー規制法」)
男(39)は元交際相手の女性(37)に対し、約1カ月の間「もう理屈をこねるのはやめます。君のことが好きだから一緒になってください」などと書いた手紙や小説の表紙などを県内の女性の実家に郵送したほか、実際に家に押しかけるなどのストーカー行為をした。
男(65)は約6カ月間にわたり、女性(52)に対して恋愛感情を綴った手紙を送りつけたり、執拗に電話をかけるなどしていた。その後、警察署からストーカー行為をやめるように警告されたにもかかわらず、5日間で連続して20数回電話をかけ、さらにこの女性に何度もつきまとうなどのストーカー行為をした。
ネットストーカーの中には、ネット上でつきまとうだけでなく、実際に自宅まで押しかけたり、後をつけまわしたりするなど、ストーカー行為が実世界に移行する例も珍しくありません。ネット上は匿名性が高く、個人で犯人を特定して解決することは困難ですので、特に注意が必要。ネット上では不用意に実名や住所を出さないのはもちろん、行動パターンなどがわかる書き込みをしたり、顔写真を出したりするのも控えるようにしましょう。
●早めに警察に相談する
相談は警視庁ストーカー対策室(東京都)や最寄りの警察署の窓口へ。状況に応じて、よりよい対策を教えてくれたり、ストーカー被害から身を守るための道具(防犯ブザーなど)を貸し出してくれたりします。行為が悪質な場合は、禁止命令や警告など法的な措置を講じてもらえることも。警察総合相談電話番号は「#9110(携帯電話からも可)」。
●一人での行動は極力控える
移動の際は、なるべくタクシーや公共機関を使い、家族や友人に迎えに来てもらうようにしましょう。また、移動経路は意図的に変更する、人通りの多い道を選んで歩くようにすることが大切です。音楽を聴きながら、携帯電話でおしゃべりしながらの一人歩きは、周囲への注意が行き届かなくなるため、非常に危険です。
●個人情報は大事に守る
郵便物には電話番号や銀行口座番号など、大事な個人情報が記載されているものがあります。郵便ポストには鍵を必ず掛けるようにしましょう。また、情報が記載されている書類や女性のものとわかるゴミなどは裁断してから捨てましょう。
そのほか、被害を最小限に食い止めるための自己防衛手段には次のものがあります。
●きっぱりと拒否の姿勢を見せる
あいまいな態度は相手に期待させる恐れがあります。二人きりで会わない、電話や手紙に応対しないなど、はっきりと拒否の意思を示しましょう。
●常に助けを呼べる状態にしておく
携帯電話は、いつでも110番できるように設定しておきましょう。また、市販のセキュリティ機器を導入するなどして、いつでも人が助けに来てくれる環境を作っておきましょう。