認知症に関する基礎知識~認知症のサイン~
もし、自分の親や自分自身が認知症になったら、物忘れや記憶がおぼろげになって果てには家族のことも分からなくなってしまうのでは…。そんな不安に駆られたことはありませんか。そこで、ここでは決して他人事とはいえない認知症について、認知症のサインや注意すべきこと、症状が出た場合の対処方法についてみてみることにしましょう。
認知症とは
認知症は、今まで正常だった記憶や思考能力が脳の病気や障害によって低下していく障害のことです。認知症にはいくつかの原因がありますが、なかでも脳神経が変性して脳の一部が萎縮していく過程でおきるアルツハイマー型認知症がもっとも多くなっています。
その次に多いのが、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によって引き起こされる血管性認知症です。アルツハイマー型に血管性認知症が合併している事例などもあります。
高齢化が進むとともに発症する人数も増えており、65歳以上の認知症患者は2020年には300万人を超すと推計されています。
早期発見と早期治療が大切
認知症ではないけれど、正常な「もの忘れ」よりも記憶などの能力が低下している「軽度認知障害」が最近では注目されています。ちょっとしたもの忘れというのは加齢による老化現象との区別がまぎらわしく周囲の人にはわかりにくいものです。
とはいえ、もの忘れの程度がほかの同年齢の人に比べてやや強いと感じるようなときや、もの忘れがなくても言おうとした言葉がでてこない、知り合いの顔が分からない、服を着ることができない、物事を計画立てて順序よくすすめることができない、などの障害を感じる場合には、念のために専門医を受診しましょう。認知症は最近では早期に治療を開始することで進行を遅らせることができるようなってきています。早期の発見がカギとなります。
認知症のサイン
認知症の発症が疑われる場合には何らかのサインが出ているものです。
たとえば、もの忘れが多いという場合にそれが正常なもの忘れなのか、そうでないもの忘れなのかを区別できればいいのですが、なかなか難しいというのが現実です。
区別の目安としては次のようなものがあげられています。
1.もの忘れのために日常生活に支障をきたしているか
日常生活においてさほど重要でないことを忘れるのは正常な物忘れですが、仕事の約束や毎日通っている道で迷うなどの場合は認知症が疑われます。
2.本人が忘れっぽくなったのを自覚しているか
以前に交わした会話の内容などをすっかり忘れており、会話の流れが理解できないにも関わらず、確認することをせず、ごまかして辻褄だけを合わせるようになってくると認知症の疑いがあります。
3.もの忘れの範囲は一部か全体か
経験のなかの一部分を忘れるのはよくあることですが、経験全体を忘れてしまうのは認知症かもしれません。
記憶・学習能力などにみられるサイン
正常なもの忘れ | 認知症によるもの忘れ | |
---|---|---|
もの忘れの範囲 | 出来事などの一部を忘れる(例:何を食べたか思い出せない) | 出来事などのすべてを忘れる(例:食べたことそのものを忘れる) |
自覚 | もの忘れに気づき、思い出そうとする | もの忘れに気づかない |
学習能力 | 新しいことを覚えることができる | 新しいことを覚えられない |
日常生活 | あまり支障がない | 支障をきたす |
幻想・妄想 | ない | 起こることがある |
人格 | 変化はない | 変化する(暴言や暴力をふるうようになる、怒りやすい、何事にも無関心になるなど) |
出典:厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」
認知症の症状と治療
認知症の症状は、障害の中核となる記憶などの認知機能障害と、周辺症状の行動異常・精神症状に大別できます。行動異常や精神症状というのは具体的には不安・焦り・睡眠障害・徘徊・家族への依存・暴力などを指します。
認知症は完全に治す治療法がまだ確立されていません。できるだけ症状を軽減して進行を遅らせることが、現在行われている治療の目的となっています。
治療方法には薬を使用する薬物療法と薬を使用しない非薬物療法があります。
このうち薬物療法はアルツハイマー病の進行をある程度抑制できる効果が期待される薬が若干あるのですが、非薬物療法によって症状を抑えることが主な治療方法となっています。
非薬物療法とは認知症患者を刺激せず症状を悪化させないための療法です。具体的には、否定をしたり叱ったりせずに聞き役になる、規則正しいリズムの生活をおくれるように配慮する、環境を急激に変えないようにする、などが基本となります。また、認知能力を高めるために、常に問いかけを行い、場所や時間、状況や人物に対しての認識を高めるトレーニングを行なったり、簡単な楽器演奏などの運動で刺激を与えたり、過去を回想するなどを行う療法もあります。
症状がすすんだら早めに医師の診察を
病状が進んでくると徘徊や弄便(ろうべん)など、周辺症状が激しくなってきます。
ここまで進むと介護者の疲労は並々ならぬものになります。医師の診察を受け、場合によっては入院して薬物療法を試すということも考えるべきステージとなります。
家族による介護にも限界はある
認知症の介護は家族への負担が大きくなります。とくに高齢者夫婦でパートナーを介護する老老介護の場合は、気持ちに体力が追いつかなくなる場合が多く、介護している側の精神的なストレスが大きくなり、いずれは生活が破綻してしまいます。
長年連れ添ったパートナーですから「できる限りできることは自分がしてあげたい」と思う気持ちはわかりますが、生活が破綻してしまっては元も子もありません。早めに施設などを利用することを考えて、自身の健康の維持を心がけましょう。
ALSOKでは、介護サービスの提供を行っています。介護疲れで倒れる前に相談してみることをおすすめいたします。
出典:厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」
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