ALSOKアンケート
〈防災と防災教育に関する意識調査〉
命を守るための防災教育、覚えていない?
「経験がない」と回答した人が3割
ベテラン社会人の3割が防災を学ぶきっかけは、メディアの報道
<2018年3月5日>
ALSOK(本社:東京都港区、社長:青山幸恭)は、東日本大震災が発生した3月11日を前に、高校生および東日本大震災以前から社会人だった人(以下、ベテラン社会人)、東日本大震災以降に社会人になった人(以下、若手会社員)を対象とした、「防災と防災教育に関する意識調査」を実施しました。
調査結果は以下の通りです。
【調査概要】
調査対象:全国の男女600人
高校生 200人
東日本大震災以前から社会人(ベテラン社会人) 200人
東日本大震災以降に社会人(若手社会人) 200人
調査期間:2018年1月29日~31日
調査方法:インターネット調査
命を守るための防災教育、受けても覚えていない?
3割が「防災教育の経験がない」と回答
ALSOKは、今年3月で東日本大震災から7年が経過することから、防災教育と家庭での災害対策の現状について調査しました。
防災に関する訓練や教育、学習(以下、防災教育)経験の有無を質問したところ、全体では3人に1人(33.0%)が「経験がない」と回答しました。
学校現場では、1995年の阪神・淡路大震災及びそれ以降の地震の教訓を踏まえ、防災教育・防災管理、学校の施設整備が進められてきているので、現在35歳前後より若い人たちは少なからず防災訓練や防災教育の経験があると想定されます。しかし、高校生ですら18.0%が「経験がない」と回答しており、残念ながら、せっかくの防災教育の経験が記憶に残っていない人がいるようです。
防災教育のきっかけ、6割は学校や会社などが企画
ベテラン社会人の3割は、メディアの報道がきっかけ
「防災教育の経験がある」と回答した人に、防災教育のきっかけを聞いたところ、「学校や会社、町内会などで学ぶ機会があったから」が高校生で78.7%、全体でも64.4%となっており、能動的に学ぶより、学校や会社などが企画して学ぶ機会を設けたことがきっかけと回答する人が最も多いことがわかりました。また、ベテラン社会人では、32.7%が、「災害のニュースを見て気になったから」と回答し、メディア報道が契機となって防災教育の重要性を感じていることがわかりました。また、15.0%は、「子供が学校で教わってきて教えてもらった」ことがきっかけで、自分も防災教育に関心を持つようになっており、学校での防災教育が、家庭にも波及していることがわかりました。
“教育”が多くの人命を救った「釜石の奇跡」
防災教育が功を奏した逸話として有名なのが、東日本大震災における「釜石の奇跡」です。
地震発生から数十分後、岩手県釜石市には想定を遥かに超える高さの津波が押し寄せ、避難所として指定されていた場所さえも飲み込まれてしまいました。ところが、この数年前から先進的な防災教育を受けていた釜石市の小中学生たちは「もっと安全な場所へ」と自らの判断で率先して避難し、結果、周囲の大人達の命を救うことにもつながりました。
この「釜石の奇跡」をもたらした防災の教えを集約したものを、「避難三原則」といいます。
東日本大震災に伴い発生した津波がそうだったように、自然の猛威は人間の想定をしばしば上回ります。与えられた想定に安堵することなく自分で状況を判断し、「より安全に」なるような行動をとりましょう。
また、警報が発せられた際に「どうせ大したことにならないだろう」 「他の人の様子を見てから動こう」と考えてしまいがちな人間心理は、避難の初動を遅らせる原因となります。空振りを恐れず、率先して避難行動を開始する勇気を持つようにしましょう。
<避難三原則>
- 想定にとらわれるな
- その状況下で最善を尽くせ
- 率先避難者たれ
(出典:日本防災士機構「防災士教本」)
安全に避難するために知っておきたい「パニック発生の4条件」
大勢の人がいる場所で緊急避難を行う際に、冷静さを失った人々が先を争って避難口に殺到する、いわゆる「パニック」が発生すると、転倒や将棋倒しといった二次災害につながったり、避難効率の悪化により被害者が増えてしまう恐れがあります。パニックが起きるのは下記の4つの条件がほぼ同時に満たされたときで、このうち一つでも欠けるとパニックは起こりにくくなると考えられています。
緊急時に避難誘導を行う立場にある方は、いたずらに①の「差し迫った危険の存在」を隠すのではなく、脱出口の明確な表示や適切な通知によって、避難者の③「脱出口に制約がある」「全員が避難できない」という認識をいかにして払拭するかを考えておきましょう。
避難者一人ひとりにおいても、パニックの原理や弊害を正しく理解したうえで、④「正常なコミュニケーション」を失わないように、「慌てなくても大丈夫」「みんな避難できるから落ち着いて」といった声を掛け合うことや、日頃から訓練や広報を通じてコミュニケーションを図っておくことが大切です。
<パニック発生の4条件>
- 差し迫った危険が存在するという認識が人々の間にあるとき
(単に思い込むだけでも) - 脱出の可能性があるとき
- 脱出口に制約があるなど、全員が避難できないと考えられるとき
- 正常なコミュニケーションが欠けているとき
(出典:日本防災士機構「防災士教本」)
家庭の災害対策がここ1~2年で「増えた」と感じている人は「減った」人の約2倍
しかし、4人に3人は「備えが足りていない」と感じている
東日本大震災が発生した直後と、ここ1~2年の間を比較して、災害に対する家庭の備えは増えたか減ったかを聞いたところ、「増えた」(20.5%)と考える人が「減った」(10.5%)と感じている人よりも約2倍多いことがわかりました。
しかし、現在の災害に対する家庭の備えが「足りている」と回答した人は全体で23.3%で、およそ4人に3人(76.7%)は「足りていない」と感じていることがわかりました。
家庭の防災を採点すると、30点以下が半数以上
大規模災害が発生した時、必要だと思う現金「10万円以下」が4割
災害に関する備えを自己採点すると、半数以上(55.5%)が30点以下と回答し、平均は33点と、低い水準にとどまりました。
大規模災害が発生した時、手元にどれくらい現金があれば安心できるか聞いたところ、約4割の方が10万円以下と答えました。
なお、非常用持ち出し袋に用意する現金には1,000円札や、公衆電話用に10円玉など小銭も用意しておいたほうが良いでしょう。
6割の人が学校や会社の備蓄や実施している対策の内容を知っている
学校や会社にいる間に災害が発生した場合、どこにどのような備えがあるかや、どのような対策をしているか知っているか、という質問では、全世代で半数以上(57.3%)、高校生は63.5%が知っていると回答しました。
東日本大震災の際、多くの帰宅困難者が出て混乱が生じました。東京都では企業に、条例で3日分の水と食料、毛布の備蓄を義務付けています。また、多くの企業では、事業継続計画(BCP)のため、社員の携帯電話にショートメールを一斉送信し、社員の安否確認をするシステムなどの対策を行っています。
防災対策、最優先すべきは「人が死なない防災」
被災後にどのように避難生活を送るか、いかにして身内の安否を確認するかといった問題への備えは、災害から生き延びることができてはじめて意味を持つ、「生き延びた人のための防災」であるといえます。もちろん、これらの備えも重要ですが、まず第一に備えるべきは、被災したそのときに命を守るための「人が死なない防災」です。
(出典:日本防災士機構「防災士教本」)
例えば、1995年1月に発生した「阪神・淡路大震災」では、直接死の死因のうち約8割が、家屋や家財等の倒壊による「窒息・圧死」や「外傷性ショック」でした。人が住まう住戸、多くの人が集まる公共施設では、災害耐性や減災対策が不十分であることは死に直結します。普段から多くの時間を過ごす場所ほど、耐震性の強化や家具などの転倒対策を施すようにしましょう。
日本は世界で最も自然災害リスクの高い国であるといわれます。あらゆる災害をイメージし、被災したそのときに命を守るための備えや訓練を疎かにしないようにしましょう。
もしも、何でも答えてくれるAI(人工知能)があったら、
災害が起きた時に知りたいのは「家族や友人の安否情報」
災害が起きた際、何でも答えてくれるAI(人工知能)があったら、何を知りたいか聞いたところ、「家族や友人の安否情報」(60.5%)が最も多く、次いで「水や食料の配給状況」(45.0%)、「災害やインフラの普及状況など正確な情報」(41.8%)の順となりました。
防災教育の課題
従来から行われている防災教育の手法は、大きく二つに分類できます。
ひとつは、「過去にこんな恐ろしい災害があった」といって恐怖心を喚起する「脅しの防災教育」。しかし、人間は怖いという気持ちを持続しにくいため、その教育効果も時間が経つにつれて減衰していきます。もうひとつは「こうすれば大丈夫」「ここなら安全」といった、「知識の防災教育」。ハザードマップがその典型ですが、単に知識として情報を与えるだけでは災害イメージの固定化を招き、想定を上回ったことに対処できなくなってしまう恐れがあります。
一方、先に紹介した「釜石の奇跡」の舞台となった釜石市で取り組まれていた防災教育は、「姿勢の防災教育」と位置づけられています。これは、 「避難三原則」にあるように、自分の命を守るために主体性を持って行動する意識の醸成を目指すものでした。
(出典:日本防災士機構「防災士教本」)
今回のアンケートから、学校や勤め先、自治体などが防災について学ぶきっかけや機会を提供してはいるものの、各家庭では十分な対策を実践するには至っていないという現状が見てとれました。自然災害の怖さやその対策について学習しても、学んだことを基に実際に減災の取り組みを行ったり、いざという時に行動に移そうとしなければ意味がありません。いかにして「防災に取り組む姿勢」を身に付けさせるかが、今後の防災教育の課題であるといえます。
調査回答者属性
ALSOKの災害対策商品・サービス
非常持出品セット 緊急キット
ご家庭をはじめ、各所への備蓄に最適な非常持ち出し品のセットです。被災後のライフラインが断絶した1日を過ごすために必要となる食料や水、トイレなどの厳選したアイテムをまとめた「緊急キット」です。コンパクトで頑丈な箱に梱包されているので保管スペースをとりません。長期保存が可能です。
高齢者向け緊急キット
上の「緊急キット」の内容をベースに、2016年の熊本地震で被災した経験のあるALSOKグループの介護会社社員にヒアリングを実施し、「あって良かった」「あれば良かった」というアイテムを取り入れました。介護が必要な高齢者などが災害時に避難する際、最低限必要なアイテムを厳選した、軽量かつコンパクトな非常持ち出し品セットです。
ALSOK安否確認サービス
震度5弱以上の地震が発生した際に、対象社員へ安否確認メールを自動配信します。メールを受信した社員からの応答結果は、管理者が専用Webサイト上で把握・集計できます。
事故や業務上のトラブルといった自然災害以外の緊急時にも便利な「緊急連絡」機能など、あらゆる緊急事態の問題解決に活用できます。
災害図上訓練
ご依頼先の建物図面や周辺地図を用い、実際に直面する可能性の高い被災状況を想定した図上訓練で、参加者各々が「自ら考える」訓練です。想定外の災害にも素早く対応できる判断力を養います。
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