ルーブル美術館の鍵
ブラマー錠
「モナリザ」で有名なパリのルーブル美術館。
そこにあった鍵と同種の鍵が東京にもあります。
Photo:Naoto Shoji Text:Ena Sato
Illustration:Naomi Masuda , Hiroshi Hasegawa
(上)東京の「金庫と鍵の博物館」の玄関扉の鍵穴。8つの方向に刻みが入っている。
(下)合い鍵は、軸棒の周りに長さの違う出っぱりが8本ついている。この出っぱりがシリンダー内の杭(松葉)を押し下げる。
ちょっとおしゃれな鍵穴はルーブルゆずり?
いつも当ページのお話をしてくれる東京の「金庫と鍵の博物館」の玄関扉についている、どことなくおしゃれな鍵穴。これは館長の杉山泰史さんの父、章象さんがパリで買ってきた鍵なのです。
ざっと20年以上前のこと。章象さんはフランス旅行した際に、ルーブル美術館を訪れました。もちろん美術鑑賞のためですが、お仕事柄、展示室の扉の鍵穴に興味津々。しげしげと観察していますと、警備員が近づいて来ました。「ムッシュ、あなたは何をしているのですか?」
章象さんがワケを話すと、美術館の人が、それならと言って同じ型の鍵を売っている鍵屋さんを教えてくれました。章象さんはさっそくその店へ行って購入。当時7万円ぐらいしたそうです。
ブラマー錠の基本構造(シリンダー内の断面図)
4枚の円盤にキリカキと「つく」と呼ばれる突起が1つずつ。ダイヤルを1回転すると、(1)の円盤が連動して回る。2回転目で(1)のつくが(2)のつくと当たって(2)の円盤が回り出す。同じように3回転目で(3)の円盤が、4回転目で(4)の円盤が動き出す。
4枚のキリカキの位置をそろえてから鍵を回す。閂がキリカキに収まって扉が開く。
ブラマー錠はルーブルの開館前に発明された
この鍵はブラマー錠といい、1784年にイギリス人のジョセフ・ブラマーが考案しました。元々宮殿だったルーブルが美術館として開館したのが1793年です。
日本へは明治時代に輸入され、主に金庫に使われていました。構造が複雑で、「杭の切り込みの位置がすべてバラバラなので金庫破りはきわめて難しい」と杉山さんは言います。
加えて、合い鍵の製造にとても手間がかかるため、現在日本では製造されていません。そしてルーブル美術館でいまもこのブラマー錠が使われているかどうかは-秘密です。
取材協力
金庫と鍵の博物館館長 杉山泰史[すぎやま・やすし]
金庫と鍵の博物館
東京都墨田区千歳3-4-1 03-3633-9151