日本でもっとも一般的な鍵
ピンタンブラー錠
あれ? 家の玄関の鍵に似ている!
鍵のギザギザにはどんな役目があるのかな?
Photo:Naoto Shoji Text:Ena Sato
Illustration:Naomi Masuda , Hiroshi Hasegawa
(上)中心の鍵穴をよく見ると、穴の内側に左右ひとつずつ小さな突起がある。
(下)合い鍵。鍵穴の突起に引っかからないよう側面にスリット(溝)が入っている。この合い鍵の谷は6つ。どこが谷かわかるかな?
ヒントは4000年前の古代エジプト錠にあった
ピンタンブラー錠は、その名にあるようにピンが主役です。1860年代にアメリカで開発されました。その原型になったのが、約4000年も前に作られた古代エジプト錠です。ピンを利用した世界最古の錠といわれています。
古代エジプト錠ではピンは1本の棒でしたが、ピンタンブラー錠のピンは2本に分断されています(図1)。ドライバーピンとタンブラーピンの切れ目「シアライン」をそろえることで鍵が回るようにしたのです。
シアラインをそろえるのが合い鍵のギザギザ「谷」です。長いタンブラーピンの谷は深く(図2のA)、短いタンブラーピンの谷は浅く(図2のB)なっているのがわかりますか?つまり「タンブラーピンの長さ+合い鍵の谷の深さ=6本とも同じ」です。
ピンシリンダー錠の基本構造(シリンダー内の断面図)
(上)鍵がかかった状態。ピンが内筒と外筒を貫通しているため内筒が回らない。ピンは「ドライバーピン」と「タンブラーピン」に分かれ、長さは1本ごとに違う。
(下)合い鍵を差し込むとピンが押し上げられる。タンブラーピンとドライバーピンの切れ目「シアライン」が6本ともそろうと内筒が回り、鍵が開く。
ピッキングに強いディンプルキーも
大量生産しやすいことも、ピンタンブラー錠の特長です。ドライバーピンとタンブラーピンの長さを変え、合い鍵の谷の位置や高さを調節することで、バリエーションが異なる商品を簡単に作れます。
「ローコストで、非常にたくさんの鍵ちがいが作れることも、世界的に普及した理由でしょう」と金庫と鍵の博物館の杉山泰史さんは言います。
ピンの数を増やし、ピッキングに強いといわれる「ディンプルキー」もピンタンブラー錠の一種です。ピンタンブラー錠の時代はまだまだ続きそうです。
取材協力
金庫と鍵の博物館館長 杉山泰史[すぎやま・やすし]
金庫と鍵の博物館
東京都墨田区千歳3-4-1 03-3633-9151