ひとつの鍵では開かない
親子錠
有名ドラマにも登場した銀行の貸金庫。
そこで使われている「親子錠」には、開けるために2本の鍵が必要です。
Photo:Naoto Shoji
Illustration :Naomi Masuda
上:2つ穴タイプの錠前と鍵。右が親鍵、左が子鍵。
下:錠前のなかは、キリカキ(溝)のある板とバネがいくつも重なった、精巧なつくり。
「親鍵」と「子鍵」2本の鍵で道をつくる
「親子錠」はその名の通り、開錠のために「親鍵」と「子鍵」の2本の鍵が必要なのが特徴です。安全性がとても高く、昔から銀行の貸金庫などに使われています。「親鍵」を銀行側、「子鍵」をお客様側が管理し、両者の合意がないと開かないからです。
開錠するには、まず親鍵を回します。親鍵側のキリカキ(溝)の位置をそろえ、閂(かんぬき)が通る道をつくる。そして、子鍵を回すと子鍵側のキリカキがそろい、閂がそれぞれのキリカキに収まって、開きます。回す順番が逆だと開きません。
写真は2つ穴タイプの親子錠ですが、1つ穴タイプもあります。その開錠する仕組みは同じ。親鍵をさして回し、一度抜く。そして子鍵を同じ穴にさして回すと開くのです。
1つ穴も2つ穴も、錠のなかの構造はとても複雑で緻密。複数枚の板が重なっていて、それがしっかりと鍵の凸凹とかみ合わないと回りません。
親子錠の構造
上の写真は施錠された状態。閂(かんぬき)が通る道が閉ざされている。親鍵を回すと、右の写真のようにキリカキがそろい、道ができる。下の写真のように、子鍵を回すと閂がキリカキに収まっていく。
安心をつくるのはアナログな確認作業
東日本大震災を機に、貸金庫は需要が高まっています。最近では、貸金庫のある専用ブースにお客様自身が入り、中身を取り出せるタイプも増えました。カードと暗証番号入力で入室し、鍵を使って貸金庫を開けるのです。
親子錠の貸金庫の場合、子鍵をお客様が持ってきただけでは、銀行側はすぐには親鍵を使ってくれません。子鍵を持ってきたのは本当に本人なのか、代理人なのか、厳格な手続きの上で、行員が立ち会いのもと、やっと貸金庫を開くことができるのです。
取材協力
金庫と鍵の博物館館長 杉山泰史[すぎやま・やすし]
金庫と鍵の博物館
東京都墨田区千歳3-4-1 03-3633-9151