明治という変革の時代を迎え、多様な文化を急速に取り入れた神戸。1000万ドルと評される街並は、
神戸人の柔軟さがもたらした美しさ。隣接するのは、国内有数の酒どころや傑出した漫画家を刺激した街。
異国情緒から日本の創造性まで、どれもが新鮮な体験です。
Photos :Naoto Shoji
※本記事に記載している情報は2018年12月時点のものです。ご利用の際は最新の情報をご確認ください。
明治政府の成立に伴って、神戸が開港したのは1868年。外国人の居留地整備は進められていましたが、混乱の時代でもあり間に合わず、隣接するエリアに「雑居地」を設置。そこでは外国人が日本人から直接土地や家屋を借りたり購入したりするという、独特の事情も経て街は形成されました。
現在の三宮駅北部に位置する北野は、高台という立地もあり外国人に人気となった雑居地です。明治後半から大正初めにかけて建てられた建物は100棟以上ありましたが、戦火や老朽化によって現在は30数棟が残るだけです。一帯は「神戸北野異人館」としてお店や観光名所などで都市整備がされています。
「風見鶏の館」は、ドイツ人貿易商ゴットフリート・トーマス氏の自邸で、鮮やかなレンガ張りが特徴です。重厚な佇まいの中に、当時流行したアール・ヌーヴォーを取り入れた趣が優美です。「うろこの家」はその名の通り、外壁のうろこ模様が印象深い建物。スレートと呼ばれる薄い天然石を約3000枚使っています。「英国館」は、典型的なコロニアルスタイル建築で、シャーロック・ホームズの部屋が設けられています。「ベンの家」は、家主の狩猟三昧の趣味が鑑賞できる屋敷です。
古き異国の面影を感じる散歩になるでしょう。
神戸北野異人館街
明治の開港後、明治政府は現在の旧居留地から山手に伸びる道路の整備を行った。現在は、外国料理を提供するレストランが30店以上あり、風景とともに味覚も楽しむことができる。
うろこの家&展望ギャラリー
外国人のための借家として、明治後期に建てられ、大正時代に移築された。マイセンやロイヤル・コペンハーゲンの名磁器がコレクションされ、地元の画家、堀江優のアートも注目。国指定登録有形文化財。
0120-888581
神戸市中央区北野町2-20-4
9:30~17:00(10月1日~3月31日)
9:30~18:00(4月1日~9月30日)
無休
英国館
明治42年の建築当時の姿を止めるコロニアル様式の洋館。イングリッシュ・ガーデンが見事で、館内には築後100年を記念して再現したシャーロック・ホームズの部屋がある。
0120-888581
神戸市中央区北野町2-3-16
9:30~17:00(10月1日~3月31日)
9:30~18:00(4月1日~9月30日)
無休
ベンの家
王侯貴族の血を引く英国の貿易商、ベン・アリソンの住まい。
彼は趣味の狩猟が高じて世界各地で獲物を捕え、その剥製が展示され、大型の動物が所狭しと並んでいる。
0120-888581
神戸市中央区北野町2-3-21
9:30~17:00(10月1日~3月31日)、9:30~18:00(4月1日~9月30日)
無休
風見鶏の館
明治42年ごろの建物で、ドイツ人貿易商ゴットフリート・トーマスの自邸。尖塔の風見鶏が建物を際立たせる。日本で活躍したドイツ人建築家ゲオルグ・デ・ラランデの設計。国指定重要文化財。
078-242-3223
神戸市中央区北野町3-13-3
開館時間/9:00~18:00(入館は17:45まで)
休/2・6月の第1火曜日(定休日が祝日の場合、翌日休)
※「英国館」「ベンの家」「うろこの家&展望ギャラリー」は異人館うろこグループの運営です。
海外の食文化を取り入れてきた一面も神戸の魅力です。
都市型オーベルジュという独自のスタイルで知られる「神戸北野ホテル」。市街にいながらにして自然の素材を生かした料理を存分に楽しむことができ、一線を画すのが「世界一の朝食」。フランス料理界の重鎮、ベルナール・ロワゾー氏から再現を許されたメニューです。
前夜のディナーの余韻に浸りながら、さらなる贅沢な味わいを楽しめます。もともと、ロワゾー氏が提唱した「水の料理」を受け継いだ総支配人・総料理長の山口浩氏。バターやクリームなどフランス料理特有の濃厚さを抑えたメニューを提案、朝食もその流れを汲んでいます。
豪華さに驚かされますが、一品一品の素材と調理法にこだわった健康料理。「ロカボ朝食」では、このメニューをおにぎり約1個分の糖質量40g以下に抑えています。ぜひ体験したい贅沢な朝の時間。
神戸北野ホテル
客室30室のスモール・ホテルであり都市型オーベルジュ。2000年から運営を手掛けるのが、フレンチの重鎮ベルナール・ロワゾーの下で学んだ山口浩総支配人・総料理長。地産地消の醍醐味を存分に堪能できる食とおもてなしが人気。
078-271-3711
神戸市中央区山本通3-3-20
世界一の朝食:ダイニング「イグレック」
7:15~10:00
無休
世界一の朝食。栗の花のハチミツやコンフィチュール(ジャム)は自然な甘みに、サラダは生野菜の代わりにフルーツや季節の野菜を低速ミキサーでしぼってジュースにしている。そして、カトラリー左のタピオカ・オレは、丹波の黒豆とともにドライフルーツやナッツと供される独特の味わい。写真はパンのみ2人分。
ダイニング「イグレック」は、広い空間を生かした心地よさと明るさに溢れる。
95年の阪神淡路大震災で営業を中止していたホテルをリノベーションして、2000年に開業。
多彩な素材と豊かなアイデアを駆使したドイツ菓子
多彩な素材と豊かなアイデアを駆使したドイツ菓子の魅力を、日本から発信する「ケーニヒス クローネ」。素朴でやさしい味わいに、和の要素も取り入れたお菓子は、全国で知られています。
新たな展開となったのが、2017年8月からスタートした、オリジナルケーキ作りを体験できる「手づくりスイーツ館」。200名ほどが収容可能で、学校や企業がイベントに活用することも多いそう。もちろん、家族やカップルのお誕生日に、そして旅の思い出作りにも最適です。
所要時間90分ほどのコースで、プロのアドバイスを受けながら思い思いのケーキ作りができます。決められた完成形はなく、デコレーションなどで自由な発想が生かせるのが魅力です。
また、2013年に完成したホテルは、敢えて菓子店従業員がホテル運営をいちから立ち上げてきたこともあり、温かみのあるおもてなしを大切にしています。
手づくりスイーツ館(ケーニヒス クローネ神戸)
元工場だった建物を利用し、2017年からオリジナルケーキづくりの施設としてスタート。ベースとなるケーキを参考に、トッピングやデコレーションを自由に楽しめる。
078-222-2612
神戸市中央区御幸通4-1-6
11:00~、13:30~、16:00~(1回の所要時間90分、受付各30分前)
完全予約制、20名以上は電話で申し込み。
無休(臨時休業の場合あり)
手前は生デコレーションケーキ、奥はパイケーキをベースにオリジナルの一品に。
プロのアドバイスも受けながらなので安心。
1階は店舗で、ケーキの販売も行っている。
ホテル ケーニヒス クローネ 神戸
キャラクターである「くまポチ」が客室内にあしらわれ、全室バルコニー付き。1・2階のカフェ「くまポチ邸」はさしずめサロンのような賑わい。ドイツ菓子の魅力を神戸から発信するお店として、地元民から愛されることがうかがえる。
078-321-5512(ホテル)
神戸市中央区三宮町2-3-10
「くまポチ邸」
078-331-7490
10:00~20:00(販売)、11:00~20:00(カフェ、L.O.19:30)
無休
三宮神社がすぐそばという、市内観光にも適した好立地。
上質な時間を提供する客室は5タイプ。写真はデラックスツイン。
日本の漫画界を牽引してきた手塚治虫。幼少期から約20年間を過ごしたのが宝塚で、彼の作品に与えた影響は少なくありません。彼の足跡から作品の原画の他、貴重な資料が揃う施設が「宝塚市立手塚治虫記念館」です。手塚治虫がこよなく愛した宝塚大劇場のすぐそばにあるのも何かの縁に感じられます。 エントランス前には火の鳥の大型モニュメント、館内に足を踏み入れるとリボンの騎士の王宮をイメージした内観。数々のキャラクターのお出迎えに、マニアならずとも気分が高揚します。 この記念館が誇るのは、なんといっても手塚作品のアーカイブ。漫画はもちろんアニメ作品のほとんどを視聴することができます。初版本の展示の他、ライブラリーでは約2000冊が閲覧可能で、英語・中国語・ハングル版なども揃っています。 〝マンガの神様〟手塚治虫、その実像に迫る記念館です。
宝塚市立 手塚治虫記念館
手塚治虫は5歳から24歳で上京するまで、宝塚市に住んでいた。当時は宝塚レビュー全盛の時代で、隣に大スター姉妹も住んでいたことから大ファンに。能や歌舞伎も題材にした宝塚歌劇は手塚作品に多大な影響を与えている。ここではそうした若き日の写真や、ノート、イラストなど貴重な資料が展示されるほか、手塚少年をテーマにしたアニメも上映され、ここでしか見られない。
0797-81-2970
宝塚市武庫川町7-65
9:30~17:00(入館は16時30分まで)
※2018年12月25日~2019年3月31日まで、改修のため休館。
床に手塚治虫の顔、さまざまなキャラクターは天井のステンドグラスにも。
ライフワーク作品に登場する火の鳥がエントランス前に大きく飾られている。
情報・アニメ検索機では、アニメ作品のほとんどを見ることができる。
手塚作品の世界観を再現するコーナーが各所にあり、ここではアニメ制作を体験できる。
手塚先生にそっくりという河合館長。
全国の出荷量の3割を占めるといわれる灘の酒。神戸市から西宮市の沿岸にかけた一帯は、灘五郷とよばれる酒どころ。
六甲山からの伏流水と吹き下す風「六甲おろし」、隣接する摂津・播州の米。完璧な条件がそろっている灘は、18世紀後半から酒造りが盛んになったといわれます。
なかでも西宮では六甲山の伏流水は「宮水」として酒造りに重用され、現在でも水を汲み上げて仕込み水として使われています。
「白鹿」で知られる醸造元辰馬本家酒造は、酒造りの伝統的な工程や技を後世に残すために、木造蔵を修復した「白鹿記念酒造博物館 酒蔵館」で道具などを展示。米を蒸した場所の遺構などは必見。
大関では本社に隣接する店舗「関寿庵」で、日本酒の魅力を生かしたお菓子の販売と喫茶での提供、そして、しぼりたて生原酒の量り売りを行っています。
灘の酒の歴史を知り、味わいに浸る贅沢な旅です。
白鹿記念酒造博物館
江戸時代初期に創業した白鹿の醸造元は、長い歴史を持つ酒造り文化を残すために博物館を設立。明治2年の建物を修復した酒蔵館では、酒造りの工程の他、灘の歴史、山田錦など酒米についても深く知ることができる。
0798-33-0008
西宮市鞍掛町8-21
10:00~17:00(入館は16:30まで)
火曜日(祝日の場合は翌日、連休に含まれる場合は連休明け休館)
夏期・年末年始
酒造りの最終段階の作業と貯蔵のための大桶が並ぶ風景は迫力がある。
第二次世界大戦、阪神淡路大震災も耐え抜いた蔵を修復。
展示されている道具に触れると、蔵人の苦労が伝わるよう。
蔵の軒先に下げられた杉玉と酒樽。美味しい新酒が楽しみになる。
宮水を運んだ大八車。敷石を並べた「板石道」を再現している。
大関 甘辛の関寿庵(せきじゅあん)
江戸時代からの灘を代表する醸造元、大関で知られるのはワンカップ。新たな時代への商品開発で定評があるが、酒造りの匠の技を和菓子にも生かし、店舗販売している。また、醸造所直詰の利点を生かしたしぼりたて生原酒と、喫茶スペースではケーキなども堪能できる。
0798-32-3039
西宮市今津出在家町3-3
10:00~19:00
1月1・2日
大関の大吟醸を生地に染み込ませた酒かすてらセット、594円(税込)。
大関の純米や大吟醸のしぼりたて生原酒が100円で試飲できる。ガラスコップ付き試飲は500円。
他ではお目にかかれない日本酒や焼酎も扱う。
大関本社に隣接し、西宮今津の酒蔵通りに面している。
キッザニア甲子園
単なる楽しさではなく、学びや気づきを得ることを重視する施設がキッザニア。体験を通して、未来を生きぬく力を育むことができる。国内2番目で2009年にオープンしたキッザニア甲子園は、約60のパビリオンに約100種類のアクティビティ(仕事やサービス)が体験できる環境を整えている。
西宮市甲子園八番町1-100 ららぽーと甲子園
<第1部>9:00~15:00
<第2部>16:00~21:00
完全入替え制
3歳~15歳
不定休
ALSOKのパビリオンでは、仕事内容の説明を受けた後、現金輸送の重要なミッションに向かう。往復のルートは変えるなど、内容もリアル。
現実社会の約3分の2サイズの街並みには実在する企業のパビリオンが立ち並び、見慣れた風景が広がる。
入り口には世界共通で、実際に使われていた飛行機が置かれている。
甲子園球場からほど近いららぽーと内で、約6000㎡という敷地面積。