庫内の温度上昇を抑えて守る
耐火金庫
火事になっても中身が燃えないのが「耐火金庫」。
中をどうやって守っているのかな?
Illustration :Naomi Masuda , Hiroshi Hasegawa
水の気化を利用して温度上昇を抑える
金庫は頑丈だから、半永久的に性能が変わらず使える、と思っていませんか?じつは、一般的な耐火金庫の耐火性能が有効なのは20年ほど。火事から中身を守る耐火材「気泡コンクリート」の水分が、年月とともに、少しずつ気化してしまうからです。
気泡コンクリートには小さな気泡がたくさんあって、水分を含んでいます。火事などで外から熱せられ、温度が上がると水分が蒸発。まわりの熱をうばいながら蒸発するため、金庫の庫内の温度上昇も抑えられます。暑い日に水まきをすると涼しくなるのも同じ原理です。
耐火金庫の仕組み(上から見た断面図)
外板の内側に耐火材の「気泡コンクリート」が入っている。気泡コンクリートにもともと含まれている水分が、温度が上がると気体になる。そのときに庫内の熱がうばわれ、温度の上昇を抑える。
また、金庫の扉は「煙返し」と呼ばれる階段状になっていて、煙の侵入を防ぐ働きをしている。
耐火金庫に入れるのに適する物・適さない物
一般用紙(遺言状、権利書など)、書籍、印刷物(株券など)
フィルム、磁気カード、骨董品、美術品、宝石類(真珠、ヒスイ、エメラルドなど)
※多額の現金、小切手、貴金属などの値打ちがあって盗まれたくないものは、工具などによる金庫破りで盗難にあうおそれがあるので、耐火金庫ではなく防盗金庫に入れるほうがよい。
真珠やクレジットカードを入れてはダメ
一般の家や事務所で使われている耐火金庫は「一般紙用耐火金庫」といい、耐火性能時間内では、庫内の最高温度が177度以上にならないようにできています。
紙は焼失からは守られますが、変色したりコゲ跡がつく可能性があります。とくに、絵画や掛け軸などの美術品は要注意です。磁気カードは100度以下で変質するので、銀行のカードなども使えなくなる可能性があります。また、真珠やヒスイなどもヒビが入ったり変質するおそれがあります。耐火金庫は万能ではないので、説明書などで確認して入れてくださいね。
取材協力
金庫と鍵の博物館館長 杉山泰史[すぎやま・やすし]
金庫と鍵の博物館
東京都墨田区千歳3-4-1 03-3633-9151