1分の差が生死を分けることもある
119番に通報してから救急車が現場に到着するまで、平均で9分前後かかります。この9分で、止まった呼吸(心停止)が回復する確率は50%以上から20%未満まで低下し、深刻な後遺症が残るおそれも高まります。
これを防ぐのが、「救急現場に居合わせた人」、バイスタンダーによる応急手当です。
バイスタンダーは、救急のプロでないことがほとんどです。そのため、現場での判断やミスの責任を問われることはまずありません。万が一、損害賠償を請求された場合も、東京消防庁の「バイスタンダー保険制度」など、法律相談のための費用を補助する制度があります。また、応急手当の際にケガをしたり、血液から感染した疑いがあるときに見舞金を支給する制度も、各自治体で始まっています。
もしものときはためらわず応急手当に取り組んでください。
倒れている人がいたら…
1.安全を確保し、声をかける
まずは自分の身の安全を最優先します。安全が確保できたら、倒れている人の肩を軽くたたき、大声で呼びかけます。目を開ける、頷くなど、呼びかけに応じる仕草があれば「反応あり」と判断します。反応がない場合は、AEDを使うことを考えて「誰か来てください!」と大声で周囲に呼びかけます。
2.119番通報する
そばに誰かがいれば、その人に119番への通報を頼みます。自分が通報するときは、最初に「火災か、救急か」をはっきり伝えましょう。場所は正確に、できれば住所を言います。 わからなければ、目印になるものを伝えます。「30代くらいの男性が倒れています。声をかけても反応がありません」と具体的に状況を説明し、最後に自分の氏名、携帯番号などの連絡先を伝えましょう。
3.AEDを持ってきてもらう
近くの人に「あなた、AEDを持ってきてください」と具体的に指示します。もしだれも近くにいない場合は、すぐ近くにAEDがあると分かっているときだけ、自分で取りに行きましょう。
4.呼吸を確認する
呼吸すると、胸と腹部が上がったり下がったりします。その動きが見られなければ、呼吸が止まっている(心停止)と考えて、胸骨圧迫(心臓マッサージ)を開始します。
5.心肺蘇生とAEDの使用
胸の中心に片手を置き、もう一方の手を重ねます。ひじを伸ばして垂直に体重をかけ、胸が5㎝沈むくらいの力で、1分間に100回ほどのリズムで胸を圧迫します。人工呼吸が可能なら、胸骨圧迫30回、人工呼吸2回のサイクルで行ってください(感染防護具がない、人工呼吸に抵抗がある場合などは省略します)。AEDが到着したら、以降は音声ガイドにしたがって電気ショックと胸骨圧迫を繰り返します。
AED(自動体外式除細動器)
機能を停止した心臓に電気ショックを与え、正常な機能を回復させる医療機器です。学校や会社、駅、公共施設など、人が多く集まる場所を中心に設置されています。一般の人でも操作でき、操作方法は音声ガイドで案内されます。電気ショックが必要かどうかはAEDが自動で判断するので、意識がなく、呼吸がない場合には迷わず使用しましょう。
出血していたら…
1.出血の場所を確認する
大量に出血している場合、命にかかわることがあります。体を揺らさないよう気をつけながら、出血している場所を確認しましょう。
2.止血する
傷口に清潔なガーゼやハンカチをあてて、強く押さえます。血液に触れないよう、自分の手にビニールの袋や手袋などをかぶせてください。
3.ショック体位を取らせる
ショック症状(冷や汗、呼吸が速い、顔色が青白い)があるときは、ショック体位を取らせます。低体温の場合は、さらに毛布や衣服をかけて保温します。