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東日本大震災から今年の3月で10年が経ちます。
カツオの水揚げ量日本一の港町・気仙沼から、水族館や東照宮など見どころたくさんの仙台へと復興が進む街を訪ねてみました。
Photos:Naoto Shoji
※新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、開業日や営業時間は変更の可能性があります。訪れる際は、事前にお電話にてお問い合わせください。
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午前1時、気仙沼漁港には多くの船が並び、水揚げがはじまります。カツオやサンマ、カジキ、サメなどたくさんの魚が水揚げされますが、名物はやっぱりカツオ。24年連続日本一の水揚げ量を誇ります。東日本大震災が起きた年も、全国のカツオ船の協力によって日本一の座を維持しました。
「気仙沼市魚市場」の2階には、長さ354mもの国内最大級のデッキが設けてあり、水揚げや入札の様子を見学できます。真上から見られるので、臨場感たっぷりです。
カツオの水揚げは6月から11月。メカジキやサメ類は一年を通して揚がります。
気仙沼を代表する老舗酒蔵が「男山本店」です。震災で木造3階建ての本社屋の1・2階を全壊・流失するなど大きな被害を受けましたが、高台にあった酒蔵は無事で、翌日からもろみの温度管理を行いました。電気も水も使えない状況が続きましたが、周囲の人々の協力によって発電機や燃料が手に入り、震災から10日後にお酒を搾ることができました。2013年からは営業担当だった柏大輔さんが杜氏(とうじ)になり、未経験にもかかわらず、就任した年から前年を上回る賞を受賞。その理由は、「前任者から教わった基本を忠実に守っていることと、全国の人々からのご支援に対する感謝の気持ちで造っているから」だと代表の菅原昭彦さんは話します。酒蔵見学をすれば、真摯に酒造りをする杜氏の姿を見られるかもしれません。
気仙沼市魚市場
気仙沼市水産情報等発信施設では、気仙沼市の水産業に関する展示を行っており、遠洋マグロ漁船の映像や漁具を見ることができる。
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低温売場で保管されているメカジキ。仲買人が鉤(かぎ)やライトを使って、鮮度や脂の乗りを確認する。
入場無料。見学は5:00~12:00頃まで可能。事前にボランティアガイドを依頼することもできる。詳細はお電話にてお問い合わせを。
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カツオの水揚げの様子。
0226-22-7119
気仙沼市魚市場前8-25
6:30~17:00
年末年始
無料
男山本店 魚町店舗
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「男山」はすっきりとした辛口で白身魚に合い、「蒼天伝」はやや甘口で青魚に合う。
0226-24-8088
気仙沼市魚町2-2-12
10:00~17:00
火曜
大正元年に創業。代表銘柄の「男山」に加え、気仙沼の青い空と青い海をイメージした「蒼天伝」を造り、2002年から販売をはじめた。
本社屋は2020年5月に再建。現在は店舗兼ギャラリー。
酒蔵見学
希望日の1週間前までにメールまたは電話でお申し込み。
通年。日曜定休(5~8月:日・祝日休み、9~4月:要問い合わせ)
見学料+お土産付き1,000円(税込)
気仙沼市にある波路上(はじかみ)地区は三方を海に囲まれた地形です。
東日本大震災では、ほとんどの建物が津波に飲み込まれてしまいました。気仙沼向洋高校も4階まで津波に襲われましたが、当時校舎にいた生徒や教職員、工事関係者は高台や屋上に避難して、全員無事でした。校舎は、地震と津波の脅威と教訓を伝えるために、震災当時のままで保存され、「気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館」として開館しました。
最初に映像シアターで震災時及び直後の映像を見たあと、校舎に入って倒壊した教室を見ながら歩きます。窓ガラスは割れ、天井はむき出し。床には机やパソコン、流れ着いた瓦礫が散乱しています。教職員と工事関係者たちが避難した屋上に上がると、9.8mの防潮堤と青い海が見えます。
震災の跡を歩き、目の当たりにすることで、地震や津波の恐ろしさをまざまざと実感しました。
気仙沼市東日本大震災
遺構・伝承館
2019年3月10日に開館。旧校舎と伝承館からなる施設。手前と奥が旧校舎で、真ん中の黒い建物が新設された伝承館。
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0226-28-9671
気仙沼市波路上瀬向9-1
4~9月/9:30~17:00(最終受付16:00)
10~3月/9:30~16:00(最終受付15:00)
月曜(祝日の場合は翌日)、祝日の翌日、12月29日~1月4日
毎月11日、9月1日、11月5日
大人600円、高校生400円、小中学生300円
※「語り部ガイド(約90分)」:地元の方々が体験したことを話しながら館内を案内。
1~20名まで6,000円(税込)、要予約。
詳しくはHPをご確認ください。
https://www.kesennuma-memorial.jp/
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訪れた人々が感じたことを書き残した付箋。なかには震災後に生まれた小学生の感想も。
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高さ8mにある3階の教室に津波で流されてきた車。
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津波で流されてきた冷凍工場がぶつかった跡。
仙台市に隣接する港町・名取市閖上(ゆりあげ)地区も東日本大震災で多くの被害を受けました。その閖上地区を流れる名取川沿いには「かわまちてらす閖上」があります。震災後、地元住民のための憩いの場をつくろうということで2015年に計画が立ち上がりました。出店者が設計段階から携わり、2019年にオープン。新鮮な魚介類や名物の笹かまぼこ、地元の食材を使ったカレーやスイーツの店舗などが長屋形式で26軒並んでいます。店舗の多くは川側にガラス窓が大きく開けており、「にぎわい広場」にあるテラス席では、名取川や閖上大橋を眺めながら心地よく食事ができます。
「かわまちてらす閖上」を運営するまちづくり会社の松野水緒さんは「閖上地区の魅力は空が広くて、海や川が近いところ。そして地元の人々の人柄のよさです」と話します。夕方に訪れれば、蔵王連峰に沈む美しい夕日を眺められます。
かわまちてらす閖上
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休日には約1,500人が訪れる。テイクアウトして水辺の近くで食事をするのも気持ちいい。
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「ICHIBIKO閖上店」の「いちびこミルク」(825円、税込)。
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「MINAMO CAFÉ」の「シフォンケーキ チョコバナナ」(700円、税込)。
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「漁亭浜や」の「かわまちてらす丼(汁もの、香の物付き)」(2,200円、税込)
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「漁師直送ウロコ水産」の「海鮮丼」(550円、税込)。
震災前から変わらぬ姿を見せてくれるのが「仙台東照宮」。
白い石鳥居は、岡山県犬島の花崗岩が使われており、宮城県最古のもの。震災時に石灯籠は倒れてしまいましたが、石鳥居はビクともしませんでした。随身門や拝殿はケヤキ造り。落ち着いた佇まいで仙台の町を見守っています。
「仙台うみの杜水族館」は震災後にオープンしました。東北の海や世界の海の生き物に出会えます。見どころは三陸の豊かな海を再現した大水槽。
50種3万点の生き物が生息しており、マイワシの大群は大迫力です。スナメリ(クジラの仲間)には癒されます。
仙台に来たら食べて帰りたいのが牛たん。「伊達の牛たん本舗」の看板メニューは、たん元から10~15㎝ほどの柔らかい部位の「芯たん」の定食です。炭火でじっくり焼いた香ばしい「芯たん」は、歯ごたえを残しつつ柔らかく、ジューシーな旨味。麦ご飯が進みます。
お土産でおすすめなのが「九重本舗玉澤」の和菓子「霜ばしら」です。見た目は本物の霜柱のよう。口に含むと一瞬で溶けていき、やさしい甘味を感じられます。縦に割ってみると、薄い砂糖の膜が蜂の巣のように重なっています。一つひとつ飴職人による手づくりです。
さまざまな魅力をもつ宮城を訪ねてみてはいかがでしょうか?
仙台東照宮
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徳川家康を御祭神とする神社。本殿、随身門、鳥居が国の重要指定文化財に指定されている。
奥に見えるのが随身門。
022-234-3247
仙台市青葉区東照宮1-6-1
8:30~17:00
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拝殿の奥に見える唐門。
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扉に七宝を使用した金具が装飾されている。
仙台うみの杜水族館
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2015年に仙台にオープンした水族館。300種5万点の生き物を展示。写真はイルカとアシカとバードがコラボレーションするパフォーマンス。
022-355-2222
仙台市宮城野区中野4-6
2021年3月19日まで10:00~17:00(最終入館は16:30まで)
無休
大人2,200円、中・高校生1,600円、小学生1,100円、幼児600円、シニア1,600円
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黄色い足が特徴のジェンツーペンギン。冬は屋外で間近に見られる。
伊達の牛たん本舗
東インター店
写真の「芯たん定食」(2,300円、税込)は数量限定。麦ご飯、テールスープ、漬け物、南蛮みそ漬付き。
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022-287-5968
仙台市若林区六丁の目北町14-85
11:00~21:30(L.O.21:00)
無休
九重本舗玉澤 直営店
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1675年創業。屋号の由来にもなっている「九重(ここのえ)」は、明治天皇に献上していたお菓子で、仙台で長年親しまれている
右の「霜ばしら」(2,916円、税込)は冬季限定。左の「九重」(箱詰一杯分15g10本入、1,620円、税込)は、白湯やソーダを注いでいただく。
022-246-3211
仙台市太白区郡山4-2-1
9:00~17:00
日曜