美しい眺望を誇り、豊かな自然に囲まれた浜名湖。
名物のうなぎや浜松餃子などのグルメはもちろん、歴史的建造物から最新スポットまで見どころがたくさんあります。
そんな浜名湖周辺を散策してきました。
Photos:Naoto Shoji
※新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、開業日や営業時間は変更の可能性があります。訪れる際は、事前にお電話にてお問い合わせください。
浜名湖は、明応7(1498)年の明応地震により今切口が決壊して、海水と淡水が混ざった汽水湖になったと言われています。
徳川家康は、この今切口付近に「今切関所(現・新居関所)」を設置。度重なる災害を経て現在の場所へ移転しました。関所は幕府が江戸を守るために全国に53か所設置した建物です。いわゆる「入鉄砲と出女(江戸から出る女性)」を取り締まりましたが、「新居関所」では「入り女」(江戸へ向かう女性)も取り締まるなど、箱根の関所とともに厳しい取り調べが行なわれていました。通行人の手形や荷物を確認していた面番所(めんばんしょ)には役人の姿をした人形がずらり。万一の事態に備えて刺股(さすまた)などの責め道具が用意されており、思わず緊張してしまいます。
江戸時代、「新居関所」の周辺には25軒ほどの旅籠(はたご)があり、その中で最大規模を誇っていたのが「紀伊国屋」(現・新居宿 旅籠紀伊国屋資料館)。創業時期は不明ですが、元禄16(1703)年に徳川御三家のひとつ、紀州藩の御用宿となっています。明治7(1874)年の大火により一度焼失しましたが、二階建てに建て替え、一部増築し、昭和30年代に廃業するまで250年以上にわたり旅館として営業していました。夕食に、秘伝のたれを使用したうなぎの蒲焼を提供しており、その味は「うなぎを食べるなら紀伊国屋」と江戸まで伝わるほど評判だったそうです。
新居関所
安政2(1855)年から同5年にかけて建て替えられ、関所の遺構としては全国で唯一現存する建物。通行する女性の取り締まりをしていた「改女(あらためおんな)」とその家族が住んでいた女改之長屋(おんなあらためのながや)や渡船場護岸(とせんばごがん)も復元している。
053-594-3615
湖西市新居町新居1227-5
9:00~16:30
月曜(祝日の場合は開館)、12月26日~1月2日、8月は無休
大人400円、小・中学生150円
右が面番所。奥は2015年に復元した大御門(おおごもん)。明け六つ(午前6時)に開き、暮れ六つ(午後6時)に閉まっていた。
面番所では番頭(ばんとう)、給人(きゅうにん)、下改(したあらため)、足軽(あしがる)といった身分の約15人もの関所役人が通行人の手形や荷物を確認していた。
新居宿 旅籠紀伊国屋資料館
建物は明治初めの再建。旧来の部材を使いながら2001年に解体修理が行なわれ、現在は資料館として公開されている。
053-594-3821
湖西市新居町新居1280-1
9:00~16:30
月曜(祝日の場合は開館)、12月26日~1月2日、8月は無休
大人210円、小・中学生100円
玄関土間の奥に宿泊用の部屋が並ぶ。
当時の資料をもとに復元した夕食。紀伊国屋名物のうなぎの蒲焼も。
浜名湖西岸の湖西市は、トヨタグループの創始者であり、発明家の豊田佐吉の出身地です。佐吉が生まれた地には、「豊田佐吉記念館」があり、佐吉の発明品などを展示する「展示室」や復元された生家などを見学できます。「展示室」では、佐吉が大正13(1924)年に開発した日本初の動力織機、「G型自動織機」が動く様子を見られます。この織機は、糸が切れたら自動的に機械が停止し、横糸がなくなる前に自動的に横糸を補充します。これらの画期的な仕組みは、佐吉が現場で気づいたことを基に改良に改良を重ね形にしたもの。佐吉のものづくりに対する姿勢や情熱を感じることができます。
浜名湖周辺は平坦な道が多く、サイクリングコースとしても人気です。おすすめは浜名湖の東側にある温泉街の舘山寺。「ゆ~りん舘山寺ターミナル」で自転車を借りて、心地よい風を感じながら町を散策してみてはいかがでしょうか?
豊田佐吉記念館
053-576-0064
湖西市山口113-2
4月1日~9月30日9:30~17:00、10月1日~3月31日9:30~16:30
水曜、12月26日~31日、1月6~8日、2月最後の水曜の直前の月・火曜、9月第1水曜の直前の月・火曜
無料
写真は「展示室」にある「G型自動織機」。高い評価を得て、英国の繊維機械会社から特許権譲渡を申し入れられた。「展示室」では佐吉の生涯を解説するパネルや特許証なども展示している。
正門と「展示室」
生家の隣の「休憩室」にある「豊田式木製人力織機」。佐吉が最初に発明した織機で、それまで両手で織っていたものを片手で織れるように改良した。
ゆ~りん舘山寺ターミナル
「ぐるっと浜名湖サイクリング ゆ~りん」は、浜名湖畔の7か所(舘山寺、弁天島海浜公園、渚園、気賀駅、三ヶ日駅、海湖館、新居町駅西)に設置されているレンタサイクル。
053-487-0152(かんざんじ温泉観光協会)
浜松市西区舘山寺町1832-1
9:00~16:30
年中無休
(1日)/大人520円、小人310円(保証料1,000円、乗り捨て時には返金なし)
舘山寺にある「浜名湖ベイストリート」。舘山寺には遊園地やフラワーパークなど観光スポットがたくさんある。
浜名湖の銘菓といえば春華堂の「うなぎパイ」。その春華堂が、2021年4月に直営の店舗やカフェが入った「SWEETS BANK」をオープンしました。その建物は巨大な机に、巨大な椅子! 家族団らんの象徴であるダイニングテーブルを13倍にスケールアウトしました。店舗には「うなぎパイ」はもちろん、上生菓子や「フルーツおはぎ」などの和菓子、ケーキやエクレア「咲クレール」などの洋菓子も並び、まるでスイーツの天国のよう。さらに、「SWEETS BANK」限定の焼きたてスイーツを購入することができます。カフェ&ベーカリー「とらとふうせん」では、バターたっぷりのブリオッシュを使った料理やスイーツを楽しめます。建物の外にも中にも、巨大モニュメントの真っ赤な豚の貯金箱「ピギー」やコーヒーカップ、エッグスタンドなど写真を撮りたくなるオブジェがたくさん。遊び心あふれる新スポットです。
SWEETS BANK
053-441-3340(受付時間9:00~19:00)
浜松市中区神田町553
9:00~19:00
月曜、火曜
春華堂のショップバッグも巨大に。南棟には、浜松いわた信用金庫とコミュニティスペースを併設している。
「とらとふうせん」。巨大なカップがのったテーブル席がかわいい。
店舗の商品棚は「うなぎパイ」の“層”をイメージしている。
「かしぐらしのピギー」と「コーヒーカップ」を模した上生菓子(ともに432円)。
天竜浜名湖鉄道は、浜名湖の北側を走り、湖西市と掛川市を結んでいます。その中間にある都田(みやこだ)駅。レトロな駅舎には「Miyakoda駅cafe」が併設され、店内はマリメッコなどの北欧デザインでカラフルに彩られています。都田駅から15分ほど歩いたところには、田園風景の中に、北欧風のカフェやインテリアショップ、ホテルなどが集まる「ドロフィーズキャンパス」があります。「Miyakoda駅cafe」とともに、すべて地元の都田建設によるデザイン。まるで北欧に来たかのような気分に浸れます。
都田駅「Miyakoda駅cafe」
壁一面に北欧デザインのファブリックが貼られている。テラス席の奥はホーム。
「Miyakoda駅cafe」の入り口であり、駅の待合室でもある。木製のシャンデリアは宮大工によるもの。
スパークリングジュースとクッキー(セットで720円)。
ドロフィーズガーデン
北欧の風景を表現した「ドロフィーズガーデン」。「ドロフィーズキャンパス」にはホテルもあるので泊まりで楽しめる。
ノルディックデリ
北欧のカジュアルでヘルシーなランチを楽しめる。アフリカから取り寄せた一枚板のテーブルが圧巻。
ドロフィーズファブリック
マリメッコなど北欧デザインの生地約300種類を切り売り。
「Miyakoda駅cafe」で気になった柄もあるかも。
浜松グルメといえば、円形焼きの餃子の中央にゆでもやしを添えた浜松餃子。「石松餃子」は甘味のあるキャベツを使用し、ジューシーながらあっさりとした味わいで、箸が止まりません。
浜名湖北部にある「うなぎ千草」は、うなぎを蒸してから焼く関東風の製法ですが、蒸す時間が短い独自の焼き方。旨味を逃がさず、ふっくらとしながら、表面はパリっとした食感で、甘めのたれとよく合い、絶品です。うなぎに夢中になってしまいますが、カウンター席からの奥浜名湖の景色も必見です。
石松餃子 本店
昭和28年に創業。もやしを添えた元祖の店。静岡県を中心に10店舗を展開している。取り寄せも可能。
053-586-8522
浜松市浜北区平口252-1
平日11:00~14:30(L.O.14:00)、17:00~20:30(L.O.20:00)、土日・祝日11:00~21:30(L.O.21:00)
無休
写真は「石松餃子 車盛り20個」(1,280円)。
餃子の写真が入った看板が目印。
うなぎ千草
昭和56年に創業。主に浜名湖産のうなぎを使用。土日祝日は行列必至。
053-524-0809
浜松市北区三ヶ日町鵺代4-1
11:00~14:00、17:00~19:30
木曜、第3水曜(祝日の場合は営業)、12月31日17:00~19:30、1月1日
うなぎを1枚1枚丁寧に焼く、店主の中野源太郎さん。
店舗は2010年にリニューアルした。内装は古代風で落ち着いた雰囲気。手前はテーブル席で、奥は座敷。
写真は「うな重(上)」(3,200円)で、肝吸いと香の物が付く。三ヶ日牛のステーキ重や浜名湖沖産の生しらす丼もある。
大瀬崎(おせざき)と富士山
静岡県沼津市
駿河湾に約1km突き出した大瀬崎は、海岸沿いの海流によって運ばれた岩や土砂が帯状にたまってできた「砂嘴(さし)」という地形です。一帯にはヒノキ科針葉樹のビャクシンが群生し、国の天然記念物に指定されています。岬の先端には円形の「神池」があります。海の間近にもかかわらず淡水で、伊豆七不思議のひとつです。県道17号線沿いにある「富士山ビュースポット西浦江梨」の展望台からは、この大瀬崎と富士山を眺められます。細長く突き出した岬と遠く海の向こうにそびえ立つ富士山の美しいコラボレーションは、ほかでは見られない絶景です。
写真提供:沼津市
「富士山ビュースポット西浦江梨」からの景色。富士山は夏には雪が溶けて山肌が見えてくる。夏に訪れるなら雲が少ない早朝がおすすめ。