播磨は兵庫県西南部の旧国名です。
赤穂義士と塩で知られる赤穂(あこう)、海山の幸が豊かなたつの、そして国宝・姫路城のある姫路を訪れました。
Photos:Naoto Shoji
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赤穂市といえば、元禄14年に起こった赤穂事件ゆかりの地です。同事件は、江戸城での刃傷事件によって切腹した赤穂藩主の浅野内匠頭長矩(あさのたくみのかみながのり)の仇を討つため、大石内蔵助(おおいしくらのすけ)ら47人の家臣が吉良上野介邸(きらこうずけのすけ)を襲撃した事件です。「忠臣蔵」として人形浄瑠璃や歌舞伎の人気演目となっています。長矩の居城だった赤穂城は城址公園となっています。公園内にある「赤穂大石神社」は、四十七義士らをご祭神として、内蔵助らの屋敷跡に創建されました。境内には四十七義士にまつわる史料館がいくつかあります。「義士宝物殿」「義士宝物殿別邸」は四十七義士の衣装や遺品などが展示してあり、必見です。圧巻なのは「義士木像泰安殿」。四十七義士像と長矩像、萱野三平(かやのさんぺい|討ち入り前に自刃(じじん)した)像の49体の木像が奉安されています。その多くが討ち入りの姿ではなく、俳句を練ったり手紙をしたためたり、物思いにふけっています。これは木彫家49人が一人一体ずつ、史実や逸話をもとに日常の姿を彫ったためです。その精巧さに感嘆し、一人ひとりに思いを馳せてしまいます。「大石邸長屋門・庭園」内には樹齢三百年以上といわれる大楠が高くそびえ立ち、神社を静かに見守っています。
公園内には堀や石垣が残り、築城当時の姿を残した天守台からは御殿の間取りを復元した本丸や赤穂の街が一望できます。
赤穂大石神社
1912(大正元)年に創建。四十七義士と萱野三平、本能寺の変で亡くなった森蘭丸らを合祀する。庭園には子宝の御利益が得られる子宝陰陽石もある。
0791-42-2054
赤穂市上仮屋131-7(旧城内)
「義士史料館」大人(高校生以上)450円、小人(中学生以下)無料
赤穂城の米蔵跡には「赤穂市立歴史博物館」があり、赤穂義士にまつわる資料や映像を見られます。また、赤穂市は古くから塩の産地として栄えたため、製塩や塩の流通など、塩にまつわる展示も並びます。江戸時代に、潮の干満差を利用して海水を塩浜に送る入浜式塩田(いりはましきえんでん)という方法が完成し、製塩はこの地の一大産業となりました。入浜式塩田の模型を見ていると、いかに優れた方法だったかがわかります。
赤穂の塩づくりについて学んだあとは、「赤穂市立海洋科学館・塩の国」へ。広大な敷地内に入浜式塩田など3つの塩田が復元されています。塩田でつくったかん水(濃い塩水)を煮詰めて塩をつくる釜屋も復元されており、釜炊きの風景を想像できます。昭和20年代後半から主流となった流下式塩田(りゅうかしきえんでん)も稼働し、実際にかん水をつくっています。そのかん水を煮詰めて塩をつくる「塩づくり体験」は、大人も子どもも夢中になれておすすめです。
明治時代、塩の保管や売り渡しに関する事務は大蔵省塩務局庁舎で行なっていました。現在は「赤穂市立民俗資料館」として当時の姿を残しています。館内は、手すりや天井にアールヌーボー風の装飾が施されて、レトロな雰囲気です。展示品は江戸時代から昭和初期に赤穂で使われていた生活用具や農耕用具、電化製品など。帳場(ちょうば)に座ったり、石臼を動かしたり、触れる展示もあるので楽しめます。
赤穂市立歴史博物館
赤穂義士と塩を顕彰するため、愛称は「塩と義士の館」。「赤穂の城と城下町」や「旧赤穂上水道」の展示もあり、赤穂の歴史を学べる。
0791-43-4600
赤穂市上仮屋916-1
9:00~17:00(入館は16:30まで)
水曜(祝日の場合は翌日)、12月28日~1月4日
大人(高校生以上)200円、小学生・中学生100円
赤穂市立海洋科学館・塩の国
塩に関する展示のほか、瀬戸内海の成り立ちと赤穂の自然や地質などを実物標本やパネル、映像で紹介。
0791-43-4192
赤穂市御崎1891-4
9:00~16:30(入館は16:00まで)
火曜(祝日の場合は翌日)、12月28日~1月4日
大人(高校生以上)200円、小学生・中学生100円
「塩づくり体験」の詳細はHPをご確認ください。
http://www.ako-kaiyo.jp/
赤穂市立民俗資料館
旧日本専売公社赤穂支局事務所
1908(明治41)年築。現存する日本最古の塩務局庁舎として兵庫県指定重要有形文化財に指定されている。
0791-42-1361
赤穂市加里屋805-2
9:00~17:00(入館は16:30まで)
水曜(祝日の場合は翌日)、12月28日~1月4日
大人(高校生以上)100円、小学生・中学生50円
お土産選びに立ち寄りたいのが、たつの市にある「道の駅みつ」。瀬戸内海の播磨灘に面した絶好のロケーションです。「お土産コーナー」に揖保川の水と赤穂の塩を使ったたつのの名品・淡口醤油や、道の駅のオリジナル商品「牡蠣ポン酢」などが並びます。「とれとれ直売所」には室津漁港など瀬戸内海で獲れたばかりの魚介類がずらり。その新鮮な魚介を使ってバーベキューもできます。屋上デッキやテラスで瀬戸内海を眺めながらいただく海鮮は最高です。
道の駅みつ
地元野菜が並ぶ「産直売り場」や新鮮な魚介を使った料理をいただける「シーサイドレストラン魚菜屋(ととなや)」もある。
079-322-8500
たつの市御津町室津896-23
9:00~18:00(シーサイドレストラン魚菜屋は10:30~18:00、L.O.17:00)
水曜、1月~3月末・8月は休まず営業
※一部商品はオンラインでも購入可能。
https://mitinoeki.shop-pro.jp/
姫路のシンボルといえば「姫路城」。400年超の歴史の中で一度も戦火にまみれなかった城です。「白鷺城(しらさぎじょう)」とも呼ばれる白い城壁は、消石灰や貝灰などを塗り重ねる白漆喰総塗籠(しろしっくいそうぬりこめ)という工法によるもので、火災や雨から城を守ってきました。城内を歩いていると、高い石垣や狭間(さま|矢や鉄砲を放つための穴)が設けられた壁、太い格子がはめられた格子窓など、戦を想定した要塞だったことがわかります。高い石垣に築かれた大天守と3つの小天守が渡櫓(わたりやぐら)でつながる連立式天守が美しく、いろんな位置から見上げてはうっとりしてしまいます。
姫路の甘味を楽しむなら、まずは回転焼きの「御座候(ござそうろう)」。小麦粉の皮であんこを挟んで焼いたお菓子です。「御座候」の本社と工場のある敷地内に、あんこの原料であるあずきの世界を学べる「あずきミュージアム」があります。館内にはあずきのルーツや種類、栽培方法など、あずきに関する展示や資料がもりだくさん。見学後はミュージアムレストランで、赤飯やあずきソフトクリームなどを堪能できます。
この季節は「姫路ハートフル観光農園」でのいちご狩りもおすすめです。農薬を減らし味の深みを増やすため、漢方薬を使用して栽培しています。地面より高い位置に棚を組む高設(こうせつ)栽培なので、立ったままいちご狩りができます。どの品種も「魔法のいちご」と呼ばれるほど甘く育ち、一口食べたらとりこになります。
歴史と文化にあふれる播磨。ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。
姫路城
1346(貞和2)年に赤松貞範が築城。黒田重隆や羽柴秀吉によって治められた。黒田官兵衛生誕の地。
079-285-1146
姫路市本町68
9:00~17:00(入城は16:00まで)※季節により変動あり
12月29、30日
大人1,000円、小人(小学生~高校生)300円
あずきミュージアム
「御座候」は1950年に創業し、全国78店舗で回転焼きを販売する。あずき染め製品などのグッズを購入できるショップもある。また定期的にあずきを使った調理体験も開催している(要予約)。
079-282-2380
姫路市阿保甲611-1
10:00~17:00(入館は16:00まで)
火曜、年末年始、設備点検等の臨時休館
大人(高校生以上)1,200円、小中学生600円
姫路ハートフル観光農園
079-337-3715
姫路市夢前町山冨13-2
9:00~16:00
月曜
いちご狩り(30分食べ放題)大人2,500円、小学生2,000円、幼児1,000円、3歳以下無料。要予約
※いちごは12月中旬~2月頃までオンラインで購入できる。
http://www.himeji-ichigo.com/
猿尾滝(さるおだき)
美方郡香美町(みかたぐんかみちょう)
兵庫県の北部に位置する香美町にあり、日本の滝100選に認定されている滝。上下二段に分かれていて、異なる流れになっています。上段は別名「雄滝(おだき)」で、ゴツゴツした岩肌を水が荒々しく直下します。下段は別名「雌滝(めだき)」で、水が岩の割れ目を滑るように流れ落ちます。落差は上段が39m、下段が21m。ともに滝壺があり、近づくと水しぶきを浴びられます。見どころは上段の滝の真ん中。滝の中に自然がつくりだした石仏がいくつか見られます。観音様や仏様、マリア像、岩猿の姿に見え、神秘的です。快晴の14時頃に訪れると、光が差し込んで虹が見られることも。