三河エリアと知多半島には、気候風土によって育まれてきた発酵の文化と、豊かな歴史が根付いています。旅を通じて、次代に受け継がれる伝統に触れてきました。
岡崎
徳川家康公の居城だった「岡崎城」から西へ八丁(約870m)進むと、愛知名物「八丁味噌」の産地・八丁町に辿りつきます。中でも「カクキュー八丁味噌」は、江戸時代初期より続く八丁味噌の老舗。店舗では味噌蔵や史料館を見学できる他、売店や食事処などもあり、八丁味噌の奥深い世界に触れられます。
敷地内を歩いていると、ふと味噌の独特の香りが漂ってきました。味噌蔵の中には、大きな木桶がずらり。円錐状に積み重ねた重石は約3トンにも及びます。
「重石は職人の手でひとつひとつ積み上げます。味噌の水分を全体に行き渡らせるためです」と、企画室の大山智也さん。二夏二冬じっくり寝かせた八丁味噌は、濃厚な旨みとかすかな酸味・渋味を備えた他にない風味に仕上がります。
昼食は岡崎IC近くの「包子」へ。ホテルで修業を積んだ店主が地元・岡崎でオープンした本格中華レストランで、今年で17年目を迎えます。カジュアルな店内は女性も入りやすく、料理の味はお墨付き。地元の人に愛される名店です。
さらに家康公ゆかりの地として訪れておきたいのが「大樹寺」です。桶狭間の戦いで織田勢に追われ、死を覚悟した家康公は、この寺で天命に目覚めたと伝えられています。山門から岡崎城の天守を望む「ビスタライン」を前に、歴史の重みをしみじみと感じました。
カクキュー八丁味噌(八丁味噌の郷)
正保2(1645)年創業。当主は代々「早川久右衛門」を襲名し、江戸時代より変わらぬ伝統製法で八丁味噌を作り続けている。
0564-21-1355
- 住所
- 愛知県岡崎市八丁町69
- 営業時間
- 10:00~16:00、売店/9:00~17:00
- 休
- 12月31~1月2日
※見学は当日受付(団体は要事前予約)
https://www.kakukyu.jp/
カクキュー八丁味噌の郷を訪ねる
成道山松安院 大樹寺
松平家・徳川将軍家の菩提寺として名高い。境内には松平家8代の墓や、家康の祖父・松平清康が建立した多宝塔などがある。
0564-21-3917
- 住所
- 愛知県岡崎市鴨田町広元5-1
- 拝観
- 9:00~16:00(受付15:30)
- 拝観料
- 大人500円、小中学生300円、幼児無料
- 休
- 無休
https://daijuji.jp/
包子
本格中華をカジュアルに食べられるレストラン。幻の沖縄産アグー豚を使用した小籠包や、自家製ラー油の担々麺が人気。
0564-25-2007
- 住所
- 愛知県岡崎市大平町西上野107
- 営業時間
- 11:00~15:00(L.O.14:30)
17:30~21:00(L.O.20:30)
※ディナーのみ予約可 - 休
- 水曜
https://paozu2008.com/
半田
知多半島は温暖な気候と豊かな地下水に恵まれ、古くから醸造業で栄えてきました。その繁栄を支えたのが、半田市にある「半田運河」です。江戸時代には、運河周辺の醸造蔵から酒、みりん、酢などの産物が、江戸や大坂へ次々と出荷されていました。今でも運河沿いには、黒板囲いの醸造蔵が建ち並びます。しだれ柳越しに風情ある景色を見ながら歩いていると、往時の栄華が目に浮かぶようです。
その半田運河の北東で存在感を示す建物が、「半田赤レンガ建物」です。明治31(1898)年に本格的なドイツビールの製造工場として建設され、パリ万博で金賞を受賞した「カブトビール」を生み出しました。戦時中に製造が中止され、長らく幻のビールとなっていましたが、平成17(2005)年に、復刻。建物内のショップやカフェ&ビアホール「Re-BRICK」でその味を楽しむことができます。常設展示室で、先人たちの情熱と歴史を知って味わう幻のビールは、より一層おいしく感じられました。
半田赤レンガ建物
明治31(1898)年竣工。戦中は飛行機製作所の衣糧倉庫、戦後は食料品工場として使用され、耐震化工事を経て2015年に観光施設としてリニューアルオープンした。
0569-24-7031
- 住所
- 愛知県半田市榎下町8
- 営業時間
- 開場時間/9:00~17:00(最終受付16:30)
カフェ/10:00~17:00 (L.O.16:30)
ショップ/10:00~17:00 - 休
- 年末年始、定期点検日
- 入園料
- 大人200円(20名以上の団体は160円)
中学生以下無料
碧南
碧南市にある三河みりん発祥の醸造元「九重味淋」は、創業250余年の老舗です。黒板塀沿いの小道を歩き、桜の花びらと九をかたどった紋付きののれんをくぐると、もち米を蒸すふくよかな香りがただよってきました。本みりんの原材料は、もち米・米こうじ・米焼酎のみ。2か月糖化させたもろみを2日かけて搾り、じっくり熟成させます。温暖で肥沃な土地である岡崎城下だったからこそできた、贅沢で雑味のない味わいが特長です。往時には、常滑焼の一斗甕に詰められたみりんが船で江戸へ運ばれ、「三河みりん」の評判を広げていったといいます。
九重味淋
安永元(1772)年創業。創業当時から受け継ぐ製法で本みりんを造り続けている。直売店では本みりん「九重櫻」をはじめとした食品を、レストランではみりんを使ったメニューの数々を提供し、みりんの新たな可能性と魅力を伝える。
0566-41-0708
- 住所
- 愛知県碧南市浜寺町2-11
https://kokonoe.co.jp/ - 見学
- 10:00~(水曜、木曜、金曜のみ)
※「みりん蔵ガイドツアー」は3日前までに要予約
レストラン&カフェ K庵
- 営業時間
- ランチ/11:00~14:00(L.O.13:30)
カフェ/14:00〜17:00(L.O.16:30) - 休
- 月曜、火曜(臨時休業有り) ※ランチのみ予約可
https://kokonoe.co.jp/k-an/
九重味淋を訪ねる
半田運河 蔵のまち
常滑
伊勢湾に面する常滑市は、千年続く焼き物の里として有名です。常滑焼は日本六古窯(他に瀬戸、信楽、備前、丹波、越前)で最古の歴史をもつといわれ、甕、土管、タイル、急須、招き猫など、その時代の生活に合わせた製品を世に送り出してきました。
ここに来たらぜひ歩きたいのが「やきもの散歩道」です。現存する日本最古の登り窯や、黒板塀の工場、土管や焼酎甕が積まれた「土管坂」などの見どころが点在し、焼き物の里・常滑を肌で感じられます。
陶彫のある商店街を抜けると、「INAXライブミュージアム」が現われます。INAXブランド発祥の地に開設された体験・体感型の文化施設です。光るどろだんごづくりや、タイルアート体験などを楽しめる施設の他、常滑の土管産業の歴史を伝える「窯のある広場・資料館」や、世界各地のさまざまなタイルを収蔵する「世界のタイル博物館」などがあります。常滑焼の歴史と、世界の焼き物の歴史、2つの視点が交わる常滑ならではの名所です。
最後に訪れたのは、常滑市の南、知多半島の先端近くにある「南知多ビーチランド」。「ふれあい日本一」を掲げるレジャー施設で、さまざまな海洋生物たちとのふれあいや餌やりを楽しめます。
施設として積極的に動物の繁殖に取り組んでいるため、園内生まれの動物たちが多いのだとか。イルカスタジアムでは、息の合った大迫力のイルカショーが見られました。
隣接する「南知多おもちゃ王国」はおもちゃのテーマパークです。メリーゴーランドやゴーカートなどのアトラクションの他、世界のおもちゃで遊べる9つのパビリオンがあります。シーズンによってはバーベキューや海水浴なども楽しめるので、家族や友人たちと過ごせるレジャー施設として、地元の方たちに愛され続けているそうです。
伝統と文化を、情熱を持って次代へ伝え続ける岡崎・知多半島、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。
INAXライブミュージアム
窯のある広場・資料館、世界のタイル博物館、建築陶器のはじまり館、土・どろんこ館、陶楽工房、やきもの工房の6館を展開。
0569-34-8282
- 住所
- 愛知県常滑市奥栄町1-130
- 開館時間
- 10:00~17:00(入館16:30)
- 休
- 水曜(祝日は開館)、年末年始
- チケット
- 大人700円、高・大学生500円、小・中学生250円、70歳以上600円
やきもの散歩道
常滑市栄町付近の散歩道。陶磁器会館や登り窯、招き猫「とこにゃん」などの見どころを一周できる。
南知多ビーチランド/南知多おもちゃ王国
知多半島の先端近く、美浜町にある海とお もちゃをテーマにしたレジャー施設。ビー チランドではセイウチやアザラシなどの海 獣やペンギンなどとふれあえるプログラム やイルカショー、おもちゃ王国ではアトラ クションやおもちゃパビリオンなど、子供 から大人まで楽しめる施設になっている。
0569-87-2000
- 住所
- 愛知県知多郡美浜町奥田428-1
- 営業時間
- 平日9:30~16:00
土日祝9:30(5月3・4・5日は9:00)~17:00 - 休
- 無休、メンテナンス休園あり
- 入園料
- 大人(高校生以上)2,200円
子ども(2歳以上)1,100円
※南知多ビーチランド・南知多おもちゃ王国共通